TOA130-BINO

Mr. Jiro Inoue

 火星大接近に向けて…という訳だけではないのですが、2年半近く使用 してきたシュワルツ150F8Binoの鏡筒を変更してしまいました。今もっとも 旬の鏡筒、高橋TOA130Sです。なんとかファーストライトまでこぎつけまし たので報告させていただきます。

 鏡筒は2月末に注文しましたが、思いのほか早く4月中旬には納品されま した。しかし逆に早過ぎて架台の構想を練る時間がなかったため、とりあ えずシュワルツ150F8Binoの架台に最小限の改造を加えて乗り切ることに しました。基本的な構造は以前作成したTV85双眼と同じで、鏡筒は1本づつ 取り外しを可能にしています。TV85双眼との差異としては、左右を連結する プレートを省略し、リニアシャフトで連結してその上に鏡筒保持部を構築 している点です。もちろん、鏡筒重量を考えて、各部分をサイズアップし ています。このせいで全体ではかなりの重量増になっていますが、もとも と鏡筒が重量級なため、この点は現時点ではやむなし、として眼をつむっ ています。

 ようやく天文雑誌にもリポートが載りはじめたTOA130ですが、その光学 性能は素晴らしいの一言に尽きます。低倍率での抜けの良さ、中倍率での 細部の分解力、高倍率でのシャープネスとコントラスト、全域を通しての 着色のないニュートラルな視界と豊かな色彩…。木星ではEZ内の濃淡や 高緯度の縞も容易に判別可能で、NB、SBのうねりなどは細部まで良く見え ます。333倍まで倍率を上げても像は崩れる兆候すら感じさせません。実に 色彩豊かでシャープな像です。恒星も色鮮やかです。200倍で見たアンタ レスは、燃えるような赤色の主星と僅かにグリーンがかったブルーの伴星 との色彩のコントラストが鮮やかで、しばしみとれるほどでした。71倍で 月齢9の月の全景を見ても、背景への光の拡散は一切なく、迷光対策が万全 であることが分かります。また、エッジ部での色収差も全く見えません。 倍率を200倍に上げても印象は変わらず、たんにシャープなだけでなく、 中間トーンが豊かで美しい像を見せてくれます。双眼による立体感・コン トラスト検出能力の向上とあわせて、38万km彼方の地形を見ているとは 思えないリアル感が味わえます。今のところ透明度に恵まれておらず、 最大の楽しみであった「天の川下り」はおあずけになっていますが、これ も大いに期待できそうです。

 鏡筒最大幅は約180mmですが、初期型シュワルツ150F8Binoは最大幅190 mmに対応した大型EMSが採用されていましたので、鏡筒バンド(あの高橋の 立派なヤツです)さえ左右の鏡筒で互い違いに組めばEMSも無改造で流用 可能でした。問題になるかと思われたフォーカスですが、延長筒類を全て 撤去すれば実に270mm以上もの筒外焦点が取れるというありがたい設計に 救われ、今回は切断もなしで済みました。

 架台は上記の通り松本さん製作の大型フォークをそのまま使用していま す。2年以上大したメンテナンスもせず使っていますが、初期のスムース ネスを維持しており、大変快適です。TOA130双眼では今までよりもずいぶん と重量を背負うことになってしまいましたが、それでもなおスムースに動い てくれています。333倍/見掛け視界50°という、フリーストップ経緯台では 通常使おうと思わない倍率・視野まで試しましたが、視野の狭さからくる 煩わしさは拭えないものの、動きそのものにストレスを感じることはあり ませんでした。今まで屈折用のフリーストップ架台でこれ以上のスムース さを有するものはお目にかかっておりません。

 また、今回の架台部の改造では、操作ハンドル兼ウェイトシャフトと してSUSのシャフトを組み、ここに真鍮の可動式ウェイトを通しました。 一応、アイピース交換に伴うバランス変動に対応させるための装備だった のですが、シャフトの取り付け位置が悪かったため、操作性に難を残して います。これは今後の課題です。

 自作となった平行移動台座部もなんとかものになっております。ただ、 目幅調整用のラック&ピニオンのノブの位置が手元からかなり遠くになっ てしまい、覗きながらの目幅調整が難しくなってしまっています。ノブ部 に延長シャフトを加えるなどの改造が必要そうです。

 …と、まあとりあえず動いた、という段階であり、完成度はまだまだ ですが、まずは実用に耐え得るシステムになりそうです。Wenglerさんの StarFire7inch-Binoや服部さんのBigBinoには遠く及びませんが、私自身 が作成・所有できる屈折双眼望遠鏡としては、ドライブシステムの搭載 といったベクトルでの進化の道は残っているものの、光学系的にはこれで 打ち止めかな、という安堵感(?)を感じております (またまたローンでの購入、双眼望遠鏡貧乏一直線で安堵している場合 ではないのですが)。

 もともとの鏡筒重量が重たいこともあり、気軽に使えるシステムでは なくなってしまっていますが、それでもなお移動可能な範疇には納まって おり、さまざまな空の下で素晴らしい宇宙を見せてくれそうです。

謝辞:

 本双眼の作成にあたっては、遊馬製作所・遊馬弘さんに部品加工の大半 を行っていただきました。私の拙い構想と落書きのような寸法図にも関ら ず、鏡筒納品から1月弱でここまでこれたのはひとえに遊馬さんのお力に よるものです。この場を借りてお礼を申し上げます。
                     Jiro Inoue

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

  実は、TOA130-BINOは外国の方が検討していたのですが、井上さんがあっさりと先に実現してしまいました。 同鏡筒は、極めて斬新、高級な設計に基づく3枚玉のアポクロマートで、その収差曲線(というより直線)に仰天したものですが、 実際の見え味も理論値を裏切らない素晴らしいもののようですね。

  TeleVue85-BINOに続き、見事な快挙です。少なくとも光学的な性能では究極に至ったようですね。  複数の優秀な望遠鏡と複数の観察者による同時的な比較結果もお知らせいただき、この双眼望遠鏡の並はずれた能力を証明していますが、  他の望遠鏡に支障が出るほどの結果なので、そのままお伝えできないのが残念です。 今年の双眼鏡・望遠鏡サミットに参加 される予定なので、そこで現物をご覧になればその凄さを実感できるでしょう。

 このTOA130-BINOもTeleVue85-BINOと同じく、鏡筒平行 移動方式にされました。 ただ、元の架台の特徴を活かされたのか、ベースプレートを省いてシンプルな構造を実現しておられます。
  まさに「藍より出て藍より青し」の諺通り、井上さんの工業デザイン的なセンスにはいつも脱帽させられます。去年の望遠鏡サミットで 一緒させていただきましたが、同じ架台に載っていたSCHWARZ-F8-BINO(初期仕様)のロッド式focuserをクレイフォード式に改造 しておられたのにも非常に感心しました。またその時TeleVue85-BINOも見せていただきましたが、作りや見え味が素晴らしいだけでなく、 光軸が完璧に調整されていたのも印象に残っています。

 さて、今回は時間的なご都合もあって旧架台を利用してくださったものと思います。落ち着かれましたら、トータル的に さらなる進化に挑戦されるのではないでしょうか。 平行移動方式は眼幅を変えてもピントが変化しないメリットがありますが、丁度今回の サイズ的(重量的)な規模が、平行移動式か、鏡筒固定のヘリコイド調整式かを判断する分岐点になるようです。 より軽量、シンプルにするには、 後者の方法が有利かも分かりませんね。

 遊馬さん、機械加工ご苦労様でした。お見事です。遊馬さんは最近独立されるまで、ずっと望遠鏡販売店に勤務しておられたので、 関東方面の方はご存知の方も多いと思います。
 遊馬さんはEMSが出て間もない頃(初期のEMS-1の頃)からその意義を見抜き、並でない思い入れで EMSを応援し続けてくれた方です。
 当時は、業界はもとより、大半のマニアが「EMS=海の物とも山の物とも分からない?」という感じで遠巻きにしていた頃です。 販売店勤務の立場上、私のEMSを応援するために相当な逆風も浴びられたことを察しています。遊馬氏私用の MTTを勤め先の販売店に置いておられたら、上司より持ち帰るように言われた事等を思い出します。

  さて、このコーナーにも次々に画期的なBINOが登場するようになりましたが、一番最初、EMS-1を装着した小型の屈折鏡筒2本を 別々のカメラ三脚に載せ、平行を出して臨時の双眼を構成し、地上を試験的に覗いて見たのを思い出すと感慨無量です。
  老婆心ながら、この時期での皆さんへのお願いは、究極に近いBINOが登場しても、引かないでいただきたいということです。 どなたも究極の機材には一朝一夕に到達していません。先を越されたとか思うのではなく、自分自身の今のニーズと環境に合った 物を手に入れてください。後から来た方には、またそれなりの拾い物や、新しい発見があるものですから。

C8-BINO

メガネのマツモト製EMSで軽量・コンパクトな20cmシュミカセ双眼を製作

「軽量・コンパクトな双眼望遠鏡が欲しい。しかもできるだけ大口径で・・・・」 大変ムシのよいコンセプトです。

 軽量・コンパクトで大口径と言えばやはりシュミカセ。しかも筒外焦点距離も長く取 れるからEMSをつければ正立対空90°も実現できる。もうこれしかないでしょう、 ということで20cmシュミカセを2本使って製作を開始しました。しかし・・・

 眼幅調整を鏡筒平行移動式としたため箱形の左右連結部分その他の重量がかさみ、一 式重量が20kgを軽く越えてしまい、重い! またEMS部分も自作のため光路長が 長く、焦点引き出し量が多くなってバッフル先端で口径が18cmくらいにケラれる、損 だ!  これでも一応星は見えたのですが、何か違う・・・軽量・コンパクトな20cm 双眼望遠鏡を作るはずだったのに。何とかしなければ。

  そこで、まず鏡筒の平行移動をやめ、余分な重量物は全部取っ払って左右の鏡筒を ガッチリとビス止めしました。これで大分軽量化し、左右鏡筒のインターバルも最小 となりました。しかし、こうするとEMSの第一・第二ミラー間の距離を変えること で眼幅調整を行わなければならなくなります。

 よし、ヘリコイドを入れたEMSを作るぜ! と思いましたがミラーにニュートン式の 斜鏡を流用している限りどうやってもハウジング部分が大きくなって左右鏡筒のイン ターバル内に納めることができません。おまけに使うつもりだったボーグのヘリコイ ドTが製造中止になってるじゃないですか。 この時点で私の「軽量・コンパクトな20cmシュミカセ双眼」という目的を達成できる 選択枝が一つしかないのがハッキリしました。そう、「メガネのマツモト製EMS」で す。即、発注。

  「メガネのマツモト製EMS」は多種ありますが、私が松本さんに製作依頼したものは

1 2インチ仕様
2 ヘリコイドで眼幅調整
3 左右像合わせチルト機構
4 防塵フィルター
5 左右鏡筒のインターバル指定

  というカスタマイズのものです。

  ほぼ即納された「メガネのマツモト製EMS」は自作のモグリEMSばかり作ってきた私に は本当にすばらしい物に見えました(一瞬、使わずに床の間に飾っておきたい衝動に も駆られましたが、もちろんそんなことをしても何にもなりません)。

  まず、ミラーが細長い! 私たちがEMSを自作するときは、長径:短径=√2:1のニュートン式の斜鏡を流用 するのが一般的なんですが、これだと短径が大すぎて干渉するからハウジングが大き くなってしまうんです。しかし「メガネのマツモト製EMS」では斜鏡を流用してある のは同じなんですが、長径:短径=2:1ぐらいに細長く削りこんであるんですね。 これによって最小のサイズで最大のイメージサークルが得られる、と。当然ハウジン グもコンンパクト化できます。

  チルト機構の操作性が素晴らしい! 双眼仕様のEMSは右側の第一ミラーハウジングに「左右像合わせチルト機構」が設 けられています。これは左右の像が微妙に狂った時、二本のツマミをXYに操作して 瞬時に合致させるという優れものです。双眼鏡と双眼望遠鏡の違いのひとつは左右像 の合致をユーザーに調節させるか否かだと思いますが、その考え方の根幹をなす機構 と言えましょう。また私のようにシュミカセで双眼望遠鏡を作った場合、ピント合わ せのミラーシフトで左右像がズレますのでその修正に必須です。

  眼幅調整のヘリコイド(ペンタックスのやつ)が同じ向きに回せる! 眼幅調整のヘリコイドをそのまま取り付けると、眼幅を狭める、広げる、どちらの動 きでも左右逆向きに回さないといけないので操作性が悪くなります。「メガネのマツ モト製EMS」では左右ヘリコイドが上下逆転して取り付けられているので同じに向き に回せばいい。これはやりやすいです。

   このEMSを取り付けて完成した20cmシュミカセ双眼の鏡筒部(耳軸、2インチアイ ピース含む)ですがなんと総重量12.4kg!  20cmの双眼望遠鏡としてはひょっとして日本一軽いのではないでしょうか? なんて 思ってしまいます。。「メガネのマツモト製EMS」のおかげでしょう。しかしEMSは決 して安価なものではありません。今回の私の20cm双眼でも総制作費の半額以上がEMS のコストになってます。

  松本さんのHP上で言うのも何なんですが、EMSの原理を応用した正立ミラーユ ニットの自作は可能です。私も実際に何回か作ってみました。今はウェブ上でいろい ろな情報が得られますのでそんなに難しい物ではないと思います。ひょっとしたら自 作はEMSの構造や調整方法を知るのに一番いい方法なのかも知れません。それになん と言っても安くできるし、製作機材によっては十分実用性のある物が作れると思いま す。

  しかし、今回の私のようにギリギリの条件でやろうとした場合、まず自作は無理で しょう。技術と製作機材環境に恵まれた人が時間やコストを度外視して取り組めば別 だとは思いますが、それだと「メガネのマツモト製EMS」を買った方が安いはずで す。さて、皆さんはどうお考えになりますか?

   話は20cmシュミカセ双眼に戻ります。 常用アイピースはWS30mm、67倍です。 鏡筒の平行調整に手間取っていたのでまだあまり稼働していませんが、さすが、20cm だけあってそれまで使っていた10cmの屈折双眼とは全然集光力が違います。銀河の構 造なんかがわかりやすいです。瞳径も小さめなのでバックも黒く引き締まって好みで す。しかし、地上の風景なんかで見るとコントラストは明らかに屈折に負けますね。 風景は視野も広い10cm屈折のほうが楽しめます。

  でもまあ、何と言っても20cm双眼にしちゃ軽いので、持ち出すのが苦にならなくてい いですね。これが一番です。以上です。

 天気は悪いですが、晴れ間をねらってちょくちょくC8双眼も稼働しています。 今までは等倍のクイックファインダーのみで導入していましたが、やはり暗い星が見 えないのでやりづらいものでした。そこで、5cm14倍・実視界5°(アイピースは ボーグSWK22mm70°)の正立ファインダーを自作して取り付けました。「実視界5 °」は僕が常用している「フィールド版スカイアトラス」の拡大星図部分(直径5° の円や長円で表示されている場合が多い)を意識したものです。ファインダーで見え る星野が拡大星図のイメージに近いので大分導入しやすくなりました。明るい対象だ とファインダーで直接確認できるのも○です。ただ総重量13.2kgと少し重量増にはな りました。

 ハンドルは、前のセパレートタイプが少し剛性がなかったので、左右一体のものに 付け替えました。ただこれだと頭の左右に両手を持ってくる形になって少し面倒です ね。ハンドルはシュワルツ双眼のようにアイピースの下にT字型にあるのがベストだ と思います。

 今後の最大の課題は、EMSと鏡筒接眼部との接続の強化です。 20cmともなるとEMSの第一ミラーと第二ミラーの距離(オフセット量)も結構なもの となります。EMSは2インチバレル&スリーブで三方向からネジで締め付けることに よってシュミカセ接眼部に固定されているのですが、モーメントの先端に2インチア イピースという重量物がついていることもあって、ちょっとした衝撃でほんの少し回 転してしまうんですね。すると、てきめん像の回転方向ズレとなって現れてきます。 何とか固定したいのですが、EMS部分に傷を付けずにできる方法がまだ思いつきませ ん。今後の懸案事項でしょうか。

 あと、焦点をかなり引き出しているのですが、厳密な合成焦点距離はよくわかりま せん。とりあえず、ノーマルの20cmF10と考えると、常用アイピースWS30mmで67 倍、瞳径3mmということになります。この瞳径は結構、眼の位置に敏感になり双眼望 遠鏡では眼幅の調節がシビアになる、と言った形であらわれます。具体的には「片目 ブラックアウト(?)現象」が発生しやすいですね。眼幅が合ってないことによる 「片目ブラックアウト」は、慣れてない人に双眼望遠鏡を見てもらうときにすごく心 配な部分です。

 もちろん慣れている人でも瞳径が大きい方がルーズに見られて楽なのでもっと長焦 点のアイピースも導入したいところです。しかし、2インチスリーブの制約上、見か け視界80°を越え、なおかつ30mm以上の長焦点アイピースは実現が難しいでしょう。 市販品の例では40mmだと60°、50mmだと50°ぐらいの見かけ視界になってしまうで しょうか。僕の場合、見かけ視界が広いことが最優先なので、これらのスペックでは あまり食指が動かないところです(いや、しかし、一応そろえておいた方がいいかな ・・・・)。

 さて、20cmの集光力は思っていたより結構なものでした。僕は散開星団のM35が好 きなんですが、10cmで見るM35と20cmで見るM71(M35よりだいぶ小さいやつ)が同 じくらいの感じに見える気がします。ぎょしゃ座の3つの散開星団を見るのが今から 楽しみです。球状星団では、M13などあんまり大きく明るく見えたので「何かの間違 いでは?」と思ったくらいですし、10cmでは無理だったちょっと小さめの球状星団も 楽々分離します。少々透明度の悪い日でもM8、M17などメジャーな対象はそれなりに 楽しめます。ずいぶん観望の幅が拡がりました。今、「フィールド版スカイアトラ ス」に載ってる対象を順番に見て行ってるのですが、それぞれの対象についているコ メント内容がよく実感できます。なかなか楽しいものですね。自分としては個人的に これ以上の大口径双眼は稼働不可能だと思いますので20cmの双眼望遠鏡でこれだけ見 えたのはうれしい誤算でした。

 光学性能ですが、星像はそれほどシャープではないかも知れません。でも、これは 光軸を必死で追い込んでないからのような気がします。焦点内外像がパッと見た目で 同心円状に見える程度にはしてあるんですが、67倍で見てる限りではほとんど気に ならないので「これでよし」とし、一回合わせた後はいじってないです(面倒くさい ので)。あとF10、fl=2000mmだけあって、短焦点屈折と比べると視野はかなりフ ラットだと思います。最周辺はさすがに崩れますが。

横山 均
Hitoshi Yokoyama

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 横山さん、初めてのシュミカセ双眼のリポート、ありがとうございました。   シュミカセ等のカタディオプトリックタイプのBINOは、今まで10台以上手掛けて来たはずですが、 ずっと以前に北海道の方が天ガに投稿してくださったのを最後に、ほとんど公開されなかったように記憶します。

 この度の横山さんのリポートは、シュミカセであるということだけではなく、シュミカセBINOの自作経験者ならではのコメントを いただいていることに、高い価値があると思います。

  内蔵ミラーの形状とか、X-Y調整機構の意義についてのコメントは、自作に苦労された裏付けがあればこそでしょう。  極めてシンプルで合理的な作りになりました。グリップも90度対空として絶妙な位置に配置してあり、全体とのバランスも絶妙です。  去年の望遠鏡サミットでは、私のEMSを使用される前の段階でしたが、自力で仕上げられたユニークなシュミカセ双眼が参加者の 注目を集めていました。 この度さらに洗練されたシュミカセ双眼、今年の望遠鏡サミットで見せていただくのが楽しみです。

  シュミカセは、主鏡を移動させる合焦機構により、いくらでも焦点を外に出せるのが好都合です。また、それによる収差量の変化も、理論家が心配するほどではなく、 EMSが要求する程度の引き出しであれば、実害もありません。 ただ、主鏡を移動させて焦点を引き出しますから、合成焦点距離は伸びます。恐らく、元のF10がF12近くにはなっているでしょう。   もっとも、20cmF12の双眼があのようなコンパクトさ、軽量さで実現すると考えれば、有利な特徴とも言えますが。  

  また、本来の合焦操作時のミラーシフトの心配もありますが、その代わりに接眼部が固定なので重量物の接続には有利で、並の繰り出し装置のガタと比較すれば、致命的な減点にはならないかも分かりません。   さらに、他の合焦機構を外付けする解決策もあります。  総合的に見て、双眼望遠鏡の素材としてのシュミカセのデメリットは低倍が得難いこと、メリットは大口径が非常に軽量コンパクト、 しかも安価に実現することでしょうか。  私は自分で製作しながら、シュミカセ双眼で実際に夜空を見たのは一度しかありませんが、球状星団のM15の凄さが印象に残っています。
  また、地上風景には向かないようにおっしゃっていますが、口径が大きく、倍率も高いので、地表付近のシーイングの影響も考慮する 必要があると思います。 至近距離を見ると、意外なポテンシャルに驚かれるも分かりません。私の所から、数十メートル先の市役所の外壁のひび割れが非常にシャープ に見えたこと、また数百メートル先のネオンサインが綺麗だったことが印象に残っています。大地が冷えている早朝等、森の木々を見ても楽しいことでしょう。

  横山さん、懇切なリポート、本当にありがとうございました。 今度はぜひ観測リポートを追加してくださいますよう、お願いいたします。

SKY90-BINO

 昨年夏、佐治アストロパークの星祭に参加して、初めてEMS-BINOを覗いて以来、その虜になってしまいました。 松本様・山内様をはじめ多くの方から貴重なご意見を頂き、自分に最適のEMS-BINOを持ちたいと思うようになりました。

 私のEMS-BINOのコンセプトは、「優れた光学系を備え、コンパクト且つ軽量であること」です。海外へも手軽に持ち出せることを念頭におきました。 フローライトあるいはEDレンズを備え、軽さと短さを実現できる鏡筒は限られていますが、スペックだけでは絞りきれませんでした。

最終的には、昨年秋に開催された双眼鏡・望遠鏡サミットに参加して種々の鏡筒を覗かせてもらい、また、 オーナーの方々から助言を頂いて、高橋SKY90に決めました。

 三脚を含めた全重量は15.8Kgです。コンパクトなのに全体を持ち上げるとかなりの重量を感じます。 しかし、組み立てた状態でも短い距離であれば無理なく移動することができます。 重量の内訳は、鏡筒(SKY90 2本:EMS含む)6.0kg、目幅調整機構付台座4.0kg、架台(ビクセン経緯台)3.2kg、三脚(ビクセン90cm)2.6kgです。アイピースはテレビュー4-22mmと4.8mmを使っています。  このEMS-BINOはまだ海を渡っていませんが、鏡筒を機内持ち込み荷物とするために、2本の鏡筒を収納するのに最適な袋物がないかこれから探すところです。 このEMS-BINOを持ってイータカリーナ星雲などの南天の星々を見に行くのが夢です。

EMS-BINOから見た昼間の景色

とにかく明るくかつ美しい。

 まるで船底の丸窓から水中の景色を眺めるがごとく、向かいの山の木々の小枝が風にそよぐ様子をありありと 立体的に眺めることができる。 その奥行き感は言葉で表現できないすばらしさ。 媒体としての空気の存在を感じさせる。 正にリアルな立体絵とでも云おうか。

 星空

 自宅は名古屋から30キロ圏にあり、夜空の状態はよくありませんが、自宅の庭から土星、木星、 オリオン大星雲などを見てみました。 木星及び土星はシャープな像で、単眼の望遠鏡だと星が別れて2重に見えると言っていた家内もEMS-BINO だと1つに見えてとてもきれいだと喜んでいます。 22mmのアイピースを使うと、約3.5°の視界となり、先日プレセペ星団と木星が接近したときには、星団と その星団を背景においた木星を1つの視界の中で見ることができ、実にすばらしい景色でした。 また、オリオン大星雲は、20cm反射望遠鏡だとぼんやりとしか見えない部分のガスの濃淡がはっきりと 見えたのがとても印象的でした。M81,M82も確認できましたが、自宅は淡い光の系外銀河などを見るのに 適していません。

 昨年は双眼鏡・望遠鏡サミットに20cm反射鏡を持参して超感動の二晩を過ごしましたが、今年はこの EMS-BINOも持っていって、漆黒の背景の下で星雲・星団を飽きるまで見てみたいと思います。

尾形 誠
Makoto OGATA

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 尾形さんとは、去年の佐治アストロパーク(鳥取県)星祭りと双眼鏡・望遠鏡サミット(愛知県)でご一緒しました。  また、佐治星祭りの時には、当方にもお立ち寄りいただき、いろいろとお話をさせていただきましたので、 SKY90-BINOを作らせていただく上で、事前のコミュニケーションは十分でした。

 尾形さんの澄んだ感性で双眼視の醍醐味をリアルに表現してくださいました。   特に昼間の地上風景のくどいほどの立体感は、実際に覗いた方にしか理解できないものでしょう。この本来の立体感は、 鏡筒が2本の双眼であることと、像が完全正立であることがセットになって初めて達成されるものです。
  天体の場合には無意味と思われている効果ですが、山の稜線から木々をシルエットにして昇る月、月の前をよぎる黒雲、はたまた 明らかに惑星像より間近に見えるシーイングのカーテン等を見ると、肉眼の延長として当然必須の効果が対象を選ばないことを知り、 感動するものです。

  今年の双眼鏡・望遠鏡サミットは尾形さんのSKY90-BINOを含めて、去年以上の双眼望遠鏡ラッシュが予想されます。 今年のサミットには私も全日程で参加する予定ですので、尾形さん、またよろしくお願いいたします。

Shwarz150S-BINO

 Schwarz-Binoを納品頂いて一ヶ月になります。ひょんなことから30年ぶりに天文への興 味が再燃し、思い切っての購入でした。現在は首都圏のマンション暮らしですが、先日帰 省した際に持ち帰り、漸く満足のゆく観望ができましたのでご報告致します。

 帰省先は名古屋から50km圏の内陸部ながら、年々夜空は明るくなってきています。そ れでも3月末の一晩、透明度の高い晴天に恵まれました。使用アイピースは笠井のケーニ ヒ32mm65度(X23・実視界2.8度)、SiebertOpticsのPrem ium18mm75度(X42・実視界1.8度)です。これでもファインダーの必要性 を全く感じさせません。実は勿体ないことに、購入後一度も附属ファインダーもクイック ファインダーも使用していない次第です。

 さて、星図も持たず、うろ覚えながらも「何となく」の方向に鏡筒を向けて導入できたも のを挙げますと、M1、3、35、36、37、38、41、42、43、44、45、 46、47、51、65、66、81、82、101、104、NGC3628、290 3、h-χなど。特に小宇宙たちのおぼろげながらも確かな光芒は、これまでM31や3 3位しか見てこなかった目には感動もので、思わず独り感嘆の声を上げずにはいられませ んでした。まだ小学生だった頃、同じ田舎で、当時はもっと暗かったであろう空に6cm 屈折を向け、どうしても見つけられなかった天体たちが、今は次々に視野に入って来ま す。時間を忘れる、童心に返る、とは正にこのことです。おかげでこの一晩で風邪を引 き、妻にも子供に、更に姉や姪にも感染してしまった訳ですが・・・

 私にとっての双眼視のメリットは、逆説的ながら「望遠鏡の存在を感じさせない」という ことです。「臓器の存在を最も意識するのは、そこが病気になった時だ」という言葉に通 じるものがあるかもしれません。対空式であることが唯一の不自然さと言えば不自然さ で、それを除けば、経緯台のスムーズさとも相俟って「望遠鏡で観望している」という意 識を持つことが殆どありません。恰も肉眼そのものが広角望遠レンズになったかのような 一体感と快感を覚えます。

 見掛けよりもコンパクトであることも嬉しい驚きでした。宅急便が玄関に到着した時に は、そのダンボール箱たちの巨大さに思わず妻と笑ってしまったものでした。それが、親 子3人の荷物にチャイルドシート、ベビーカーも載せた小型2Box車に楽に収まりま す。自宅がマンション9Fのため台車の購入も検討していたのですが、杞憂に終わりまし た。

 30年のブランクは一気に吹き飛びました。自分が今後どれほどのめり込むか、少々恐れ ているところではあります。

渡辺 文彦

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 本日(2003年4月8日)、渡辺さんよりいただいたメールをそのまま掲載させていただきました。 快く承諾していただいた渡辺さんに、改めてお礼申し上げます。

 BINO製作の仕事を始めて、かなりの年月を経、様々なユーザーの方と触れ合うことができ、大変幸せに思っております。   中にはお忙しくて梱包を一ヶ月も解くことが出来なかった方もあり、また、十分に味わう前に、いきなりソース等の調味料をドバドバかけて 食される方ありと、変化に富んでいるのですが、どの方もありがたいユーザーさんであります。

  しかし、何と言いましても、製作者として一番嬉しい瞬間は、使用リポートをいただく時です。
   渡辺さんも長い中断を経て、天文の世界にUターンされた方のようです。 少年期に宇宙へ夢を馳せ、進学、就職、結婚、子育て等の大事のために一時期天文から 遠のき、ある程度落ち着いて来る中年期に入ってまた天文に戻られた、というパターンを勝手に想像させていだだきました。

  私の少青年期には、口径15cmの屈折式、しかもそれが双眼でなど、とても自分の手に届く物とは思っていませんでした。 中年になってから手にする望みの機材は、人生の前半を真面目に努力して来た方、しかも夢を忘れずにいた方に対する天からのご 褒美ではないか、と最近私は感じるようになりました。

 私自身については、BINO作りがたまたま仕事になったために望みの機材に 近い環境にいるだけであって、本来ならとても天からのご褒美をいただける身分ではないと、これまた最近感じるようになりました。

  それにしても、ご理解のある奥様のようで、ご家庭の暖かさが伝わって来ます。

    渡辺家に一層の幸来たれ。

AstroPhysics Starfire 7inch – BINO

Mr.Wengler set to me some new photos.

ドイツのWenglerさんが新しい写真を送ってくださいました。

WenglerさんがAstroPhysics Starfire 7inch – BINO(18cm3枚玉アポ)の 新しい写真を送ってくださいました。 見事の一言です。

Starfire 7-inch-BINO and other BINOs

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;
 ドイツのWenglerさんより、EMSを使用した3台の自作BINOと、これまた自作のニュートン反射BINOの画像を 送っていただいたので、取り急ぎ掲載させていただきます。
  メールアドレスの掲載の可否やや反射BINOの詳細についてのご返事がまだありませんが、また詳細が分かりましたら追加いたします。 3台の屈折BINOの素材鏡筒は以下の引用文(Wengler氏からのメールから抜粋)の通りです。

”some time ago I promised to send pictures of my binoculars, realized with Your EMS-systems. FinalIy, I will send You fotos of my three refractor binos, 1. AstroPhysics Starfire 7inch, 2. AstroPhysics Traveler and 3. AstroPhysics Stowaway.”

 ドイツ初のEMS-XLはAstroPhysicsの18cmアポに使用されました。

鏡筒の詳細につきましては、 Astrophysicsまたは代理店のHPをご参照ください。

  Wenglerさんのcraftmanshipには感心させれらます。

10月28日追加

  Wengler さんより反射BINOの追加説明がはいりましたのでご紹介します。

The newton is a 10 inch f6, mirrors are from Barry Arnold/Canada and measured on a Zeiss interferometer to have am rms error of 16 and 18 nanometer. The coatings are from Spectrum Coatings. Focuser is from Darastro/Canada. It is special in that You can change interpupillary adjustment without changing focus.

The azimut bearing is a modified Giro 2 mount. Both carbon tubes with cradle have a total weight of only 65 lbs, the base of 25 lbs.

  鏡筒を回転させないのに目幅調整でピントが狂わないようにしています。さすがですね。
 (lbsはポンドの略)  (10月28日)

15cmF5-BINO

 さて、ここしばらく・・・っというより、 ずぅ~~~と晴れ間がなくて、 なかなか、外に双眼鏡を構えられません。 それでも、何とか、晴れ間が多少のぞいたとき、 星空を覗き見しております。

 やはり、15㎝の集光力と、双眼で覗ける迫力は、 何物にも代え難い逸材であります。 もちろん目の錯覚なのでしょうが、 奥行きがあるのですよね。

 それに、星見人の会に来られた強者たちが 声をそろえていった言葉が、 画がひじょうにシャープだとのことです。 EMSの光軸調整にそれぞれが合わせなければならないために、 多少の不便があったようですし、 見慣れるのに多少の時間が必要でしたが、 『これはいいね』の言葉が多かったです。

 はやく、網状や北アメリカ、 それと、射手座付近の星雲を覗き見したいです。(2002,9/1)

                  続報(2002年10月5日)

 台風21号が大気の塵を吹き飛ばしてくれた日に、 笠井トレーディングに発注しておいたスーパーネビュラフィルターが到着。 早速EMSにスーパーネビュラフィルターを装着しまして まったく雲のない快晴の夜空にSCHWARZ150S-BINOを持ち出し、 スーパーネビュラフィルターの威力を体感することになりました。

 アイピースはこれまた笠井のMC広角アイピースEW-25mm/70°【2インチ】  倍率は30倍。 以前から、みずがめ座のNGC7293らせん状星雲を眼視にて目撃しようと、 努力してみたのですが、いかんせん北緯44度17分の地では、 地上高の低い淡い天体は、大気に遮られ観ることは出来なく、 SCHWARZ150S-BINOの集光力を持ってしても、探し出せませんでしたが、 この日は、ほんの数秒で目的の天体NGC7293を導入できました。

 見事の一言に尽きます。 写真で見慣れた『らせん状星雲』が視野いっぱいに広がり、 互いの星雲が重なり合い螺旋の詳細まで確認できました。 それからは『いて座』方向の、干潟、三列、オメガ、各星雲を 確認していき、詳細な構造を確認するに至りました。 圧巻は網状星雲の詳細なフィラメント構造が手に取るように確認できたのは、 背中が震えました。

 フィルターなしでも網状星雲は確認できていたのですが、 詳細なフィラメント構造までは、無理でしたので、感動はひとしお。 また、プレイアデスがある程度まで高くなってきたところで、 フィルターをはずして、観望したところ・・・・・ プレイアデスの周りに、もやもやが・・・・・・・・ 『うっ・・・くも???』 そう思い裸眼で確認しても雲ひとつ無く、 またのぞくと、もやもや・・・・・・・あれ? 今度は、7×50の双眼鏡でプレイアデスをのぞいても、雲は見えません。 そうです、プレイアデスを覆う【プレイアデスの手前とも言われておりますが】 青く淡い星雲が見えたのです。

 大口径短焦点屈折鏡の威力を体感いたしました。 レンズのコーティングにばらつきがあっても(^^;)、 鏡筒の塗装に傷があっても(^^;)、 15㎝の集光力に、なんの支障はありません。 短焦点屈折鏡の色収差は避けられない壁ではありますが、 低倍率での星雲星団観望には、なんの支障はありません。

 これから、冬に向かい、ばら星雲、馬頭星雲、わし星雲を 観るのが楽しみになりました。

 SCHWARZ150S-BINOという触媒をかりて、 夜空を散歩するのが、本当に、本当に、楽しいです。 これに、スーパーネビュラフィルターが加わり、視野が広がりました。

 ただ、難点を申し上げれば、 EMSを鏡筒に繋ぐ支点が2カ所だけというのは、心許ないです。 実際、鏡筒を外に持ち出したときや、 アイピースに目を近づけ過ぎたときなど、EMSが動いてしまいます。 せめて、3点支持で補強をしたいところです。

赤井 宗光
Munemitsu Akai

Comment by Matsumoto/管理者のコメント;

 本日(2002年9月1日)、赤井さんよりいただいたメールから抜粋させていただきました。 快く承諾していただいた赤井さんに、改めてお礼申し上げます。

 写真は、8月24,25日に北海道風連町で開催された”星見人の会 2002 in 風連”で撮影されたものです。 SCHWARZ150S-BINOのフードに、同会で講演された国立天文台長の
海部宣男先生のサインが見えます。

 2002年10月5日に臨場感溢れる続報をいただき、私も興奮してしまいました。    

FL80S-BINO

  EMS-M ユーザーの坂本です。

  私は鳥の観察に松本式正立双眼鏡を使用しております。

  数キロ先の遠方にいる鳥の観察のため、かねてから双眼望遠鏡の必要性を感 じ、以下の3条件を兼ね備えた機種を探していました。・当然、正立像であること。
・アポクロマート屈折で微細な部分まで観察可能なこと。
・アイピース交換式で、超広角アイピースが使用できること。

  しかし、都合良く思うような製品がなかったので、天体望遠鏡を利用して大型 双眼鏡を自分で組むことにしました。

 松本氏のホームページは当時から光軸調整について大変参考にさせていただ き、EMSも使ってみたいとは思っていたのですが、動き回る動物を観察する のに、直角対空型がどの程度使えるのか不安があったので、ポロプリズムを用 いて組んでみることにしました。

  ポロ型地上双眼鏡でまずまずの成果は得られたのですが、光軸を追い込んでい くと、悩ましい問題が発生してしまいました。光軸調整装置の微動にともなう ガタをなくそうとすると微動装置が大型になり、逆にコンパクトにまとめよう とすると脆弱になってしまいます。シフターなどの粗動装置では、アイピース 交換時の微妙な光軸のずれには対処できません。やはりEMSしかないなと思 いました。

 直角対空型に少々の不安を残しながら、松本氏にご相談のメールをお送りしま した。氏は天体門外漢の私にも懇切丁寧にアドバイスをしていただき、「人間 の体は下を向くように出来ている」という言葉でEMSの購入に踏み切り、氏 の適切なアドバイスのもと、松本式FL80S-BINOが組上がりました。架台は業務用 のビデオ撮影用三脚を使用しております。

 使用してみると、やはり視界のクリアーさと鋭さが印象的です。プリズムの影 響がないということはこれほど違うのかと、改めて実感します。直視の単眼倒 立像である程度わかっていたつもりですが、双眼・立体視になるとその差は歴 然としており、知人の言葉を借りれば「いつまでも見ていたい」見え具合で す。直角対空も対象を導入してしまえば気にならず、顕微鏡を見ている感覚で 楽に観察が出来ます。

 超広角アイピースが使用できるのも、市販品にはない大きな魅力です。私は超 広角アイピースとして笠井さん扱いのツァイス12.5mm 90°を使用(合焦の問 題でアダプターを工夫しましたが)しておりますが、約50倍、見かけ視界90° の双眼視は快感です。

 EMSの光軸調整機構は非常にコンパクトかつ合理的で、機材全体の軽量化と 剛性の向上を図ることが出来ました。アイピース交換時の微妙な光軸調整も可 能なので、高倍率をかけることも容易です。プリズム型の地上望遠鏡では80mm クラスのフローライト機種でも60倍程度が限界のように思いますが、EMSマ シンでは100倍程度でも暗くはなるものの、像自体は十分実用に耐えると思いま す。遠方の対象や、羽毛の1枚1枚といった細かい部分の観察を望まれるバー ドウォッチャーにも是非お勧めしたいものです。

 天体観測に使用した際の性能は、先輩のユーザーの方々が詳しくレポートされ ている通りです。

 動物については、群をなしている対象の観察が魅力的です。カモやシギ・チド リ類の群を80°オーバーの超広角でみると、とても楽しいものです。立体感が あり、クリアーな像が目前に広がり、臨場感も抜群です。

 双眼視は見ていて疲れないので、遠方に飛翔する鳥類を見つけやすく、シャー プな像なので、シーイングがよければトビくらいの大きさであれば5キロくら い離れていても、しっかり形が分かります。通常の機材ではとっつきにくい海 鳥も楽に観察できそうです。今から秋のワシタカ渡りのシーズンが楽しみで す。超広角で見るタカ柱はさぞかしおもしろいことでしょう。

 なお、私は双眼鏡をファインダー代わりに取り付け観察しています。直角対空 型による導入の難しさも解決されます。

 今は目幅調整機構がありませんが、いずれは平行移動台座の作製にも挑戦し、 目幅の異なる方にもEMSマシンで見る世界のすばらしさを体験していただけ るようになればと思います。天体関係のアイピースが使用できるのでデジタル カメラでの撮影も手軽です。最近流行のデジスコ(デジタルカメラ+フィール ドスコープ)による写真撮影を考えられている野鳥や動物好きの皆様にも、E MSは強力なパートナーとなると思います。

 最後に、素晴らしい機材と世界を提供してくださった松本龍郎氏に感謝いたし ます。

坂本 泰隆
Yasutaka Sakamoto

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

  坂本さんは、20枚以上の美しい写真を送ってくださり、本頁に掲載させていただく分を 選別するのに、随分と迷いました。 広大な大自然を背景に光に満ち溢れた写真集に、自分が引き込まれて行くのを感じました。
  天文マニアは、天体望遠鏡は夜、星を見る道具だと思い勝ちですが、一番身近な天体である美しい地球を眺めないのは、 実にもったいないことであることを坂本さんに改めて教えられた思いです。

  この度の坂本さんの投稿は、バードウォッチャーの方の初めての投稿であることと、 EMS-M(双眼用カスタム仕様)を使用した自作例である点で、非常に新鮮で、新たにご参考にして いただく部分が多いと思います。

  EMS-MはEMS-LとEMS-Sの間にあって、見過ごされやすいようですが、 今回の坂本さんのリポートを機会に、光路長が短く、30mm60度クラスの 2インチアイピースまで使用できるEMS-Mの存在意義を見直してみていただけますと幸いです。

 坂本さんのFL80S-BINOは、外観が美しいばかりでなく、取手、架台、双眼鏡ファインダー等が 合理的にコーディネイトされていることが写真から見て取れます。 また、同時にいただいたメールから、「左右の視野環が完璧に合致した。」 とのことで、組立も完全であることが分かります。事前にポロプリズムで双眼の自作を経験されていたことも プラスに貢献したのだと推察します。

 90度対空が地上風景観察に支障が無いことも、坂本さんが実証してくださいました。  これには、90度対空型に相応しい架台高というものがあるのですが、坂本さんがこれを良く理解されて いることが分かります。  「屈折望遠鏡は長い脚に載せるもの。」という固定観念を持つ方が多いように見受けますが、 直視や45度対空同様に長い(高い)脚に載せてしまっては、90度対空のメリットが活かせません。

 坂本さんのFL80S-BINOは、非常に軽量、コンパクトで機動性に富んでいるようですので、 ぜひ、天体を含めた観測の続報をお願いしたいものです。

10cmF5-BINO

 記念すべきEMS-ELの1号機を送ってもらい感謝しています。 と同時に恐縮もしていました。(プレッシャー?)

 当初予定していたミザール127ミリ鏡筒の幅が広く、用意した架台では作れない ことが判明し、困ってしまいました。

 目幅に関しては、私の目幅が67ミリくらいなので+70ミリで大丈夫だと思ってい ました。製作に時間がかかると思い、EL受注開始の案内前から部分的に作り始め ていて、肝心の鏡筒が後になってしまいました。

 月、惑星の観望が好きです。高倍率での観望はかなり疲れます。低倍率はミヤウチ の双眼鏡です。疲れたあとに双眼鏡を覗くとほっとします。肩から力が抜けリラック スして空を眺められます。それが双眼望遠鏡を作ろうと思ったきっかけです。

 これから長焦点の双眼を作るのにかなり時間がかかりそうです。それまでELを使わ ない手はないと思い、昨年の12月からマゼラン102Sをテストで使っていまし た。

 今回はマゼランをもう1本取り寄せて双眼望遠鏡を作ってしまいました。 長い方は作戦を練り直し、時間が取れるようになってから再開したいと思います。

 当然のことながらマゼランにELを装着すると合焦の問題が発生します。 それは2インチのアダプターを加工してぎりぎりまで薄くして31.7アイピース PL32ミリで合焦し、ヘリコイドにも余裕がでました。 もちろんそのままでは2インチアイピースは使えませんが、 まだ2インチアイピースを所有しておりません。完成のめどがついたら 取り寄せるつもりでした。

 したがって、ELは当分の間はマゼラン双眼で31.7アイピースで使います。 かなり先になると思いますが、長焦点用ができましたらELを移し マゼランにM型を購入して2インチ仕様を考えています。

 鏡筒切断を考えましたが、自分できれいにできないのでパスです。 旋盤がないと難しいでしょう。

 光軸調整はレーザーコリメーターを使用しましたが、やはり目のほうの問題が 大きいように感じました。いつも松本さん、服部さんのホームページを参考に させていただいています。しかし、作業も観望も一人で行っているので、どれくらい 正確にやれているか不安があり、それに自分のアイピースを覗くレベルが高いと は思えないので注意が必要でしょう。

というわけで、今回は予定と違うマゼラン102S双眼望遠鏡ができました。 作り直した部分もありました。調整は済んでいて現在稼動中です。 まあ、2インチのアイピースは次回のお楽しみという事にします。

 最後になりましたが、EMSを使った感想です。 まず単体で覗いた瞬間に気持ちがいいと感じました。 クリアーな正立像が見られるようになったのは実に嬉しいことです。 それに双眼の立体感は素晴らしいですね。 これから星を見る気持ちとスタイルが変わることでしょう。 好きだけれども疲れると思っていたことが リラックスして楽しめる生活の一部になると思います。

 双眼望遠鏡が天文のスタンダードになることを願っています。 これからもよろしくお願いします。それではまた

吉谷 稔
Minoru Yoshitani

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

(松本の返信=★);

吉谷 稔 様

 ★ さっそくにリポートをいただき、ありがとうございます。> 双眼望遠鏡の完成(できた)報告。
> 記念すべきEMS-ELの1号機を送ってもらい感謝しています。
> と同時に恐縮もしていました。(プレッシャー?)
> > 当初予定していたミザール127ミリ鏡筒の幅が広く、用意した架台では作れない ことが判明し、困ってしまいました。
> 目幅に関しては、私の目幅が67ミリくらいなので+70ミリで大丈夫だと思って
いました。製作に時間がかかると思い、EL受注開始の案内前から部分的に作り始め ていて、肝心の鏡筒が後になってしまいました。

★ それは大変残念でしたですね。 フード径が137mmを越えるということでしょう か。 少しくらいなら、工夫すれば何とかなるかも知れませんよ。

> 月、惑星の観望が好きです。高倍率での観望はかなり疲れます。低倍率はミヤウチ の双眼鏡です。疲れたあとに双眼鏡を覗くとほっとします。肩から力が抜けリラック ス して空を眺められます。それが双眼望遠鏡を作ろうと思ったきっかけです。> これから長焦点の双眼を作るのにかなり時間がかかりそうです。それまでELを使 わない手はないと思い、昨年の12月からマゼラン102Sをテストで使っていまし た。

> 今回はマゼランをもう1本取り寄せて双眼望遠鏡を作ってしまいました。
> 長い方は作戦を練り直し、時間が取れるようになってから再開したいと思います。

★ そうでしたか。

> 当然のことながらマゼランにELを装着すると合焦の問題が発生します。
> それは2インチのアダプターを加工してぎりぎりまで薄くして31.7アイピース PL32ミリで合焦し、ヘリコイドにも余裕がでました。
> もちろんそのままでは2インチアイピースは使えませんが、
> まだ2インチアイピースを所有しておりません。完成のめどがついたら
> 取り寄せるつもりでした。

★ 繰り出し装置を改造すると、約20mm光路長が稼げます。
     より太く、短いGS繰り出し装置にするとさらに稼げます。

> したがって、ELは当分の間はマゼラン双眼で31.7アイピースで使います。 > かなり先になると思いますが、長焦点用ができましたらELを移し
> マゼランにM型を購入して2インチ仕様を考えています。

> 鏡筒切断を考えましたが、自分できれいにできないのでパスです。 > 旋盤がないと難しいでしょう。

★ 鏡筒の切断は、気長に慎重にやれば、手持ちでの金切りノコでも結構ちゃんと切 れるものですが、SYNTAの鏡筒の繰り出し装置は内径が細いので、鏡筒を切断して単 純にバックフォーカスを延ばそうとすると、ドローチューブ末端の内径で口径がかな りケラレる心配があります。(恐らく、8cm口径くらいになってしまうでしょう。)  繰り出し装置の短縮が良いようです。

> 光軸調整はレーザーコリメーターを使用しましたが、やはり目のほうの問題が > 大きいように感じました。いつも松本さん、服部さんのホームページを参考に > させていただいています。しかし、作業も観望も一人で行っているので、どれくら い正確にやれているか不安があり、それに自分のアイピースを覗くレベルが高いとは 思えないので注意が必要でしょう。

★ ただ、EMS-ELはミラー自体の光軸がほぼ完璧に調整した状態で固定してあるの で、扱いは非常に楽だと思います。

> というわけで、今回は予定と違うマゼラン102S双眼望遠鏡ができました。 > 作り直した部分もありました。調整は済んでいて現在稼動中です。
> まあ、2インチのアイピースは次回のお楽しみという事にします。

★ それは残念ですね。 今はちょっとバックオーダーに追われていて、時間的な余 裕がありませんが、お時間をいただけば、繰り出し装置の短縮加工等、よろしければ お手伝いさせていただきますよ。

> 最後になりましたが、EMSを使った感想です。 > まず単体で覗いた瞬間に気持ちがいいと感じました。 > クリアーな正立像が見られるようになったのは実に嬉しいことです。 > それに双眼の立体感は素晴らしいですね。 > これから星を見る気持ちとスタイルが変わることでしょう。 > 好きだけれども疲れると思っていたことが > リラックスして楽しめる生活の一部になると思います。

> 双眼望遠鏡が天文のスタンダードになることを願っています。 > これからもよろしくお願いします。 > それではまた

★ もったいないお言葉、本当にありがとうございます。
 よろしければ、マゼラン102S双眼望遠鏡の画像を見せて頂けませんか。  HPにユーザーリポート、もしくは画像だけでも掲載させていただければ 幸いなのですが。(ご多忙でしょうから、無理にとは申しません。)   ありがとうございました。


  以上、私の返信文もそのまま掲載させていただきました。
 いただいた2枚の写真共、大変美しい画像です。モノトーンの鏡筒や架台に、 ハンドルのオレンジ色がほっとするアクセントを与えています。
  それぞれの撮影アングルも、この双眼望遠鏡の特徴を親切に見せてくれています。 HPをご参考になったのでしょうか、平行移動台座も見事に出来ていて、機能性が万全であることを 伺わせます。
 フォークの固定ネジも、ノブ付きに変更しておられ、収納運搬にも配慮してあります。
  非常にタイムリーにEMS-EL-BINOのリポートをくださった吉谷さんに、改めてお礼 申し上げます。

125ED-BINO and others / 125ED-BINO他(群馬県、須田さん)

bino-view + EMS-1 on FC50 photo 1

BORG125ED-MTT photo 2

 

BORG125ED-BINO on alti-azi. photo 3

 

100ED-MTT photo 4

 

ronchi photo on FC50 direct photo 5

 

with a diagonal prism photo 6

 

with the EMS-1 photo 7

BORG125MTT(F8)赤道儀仕様レポート

私と松本式正立ミラーシステム(EMS)との出会いは1989年の天文雑誌にそ の 紹介記事が掲載されたのがきっかけでした。初代の「EMS-1」は今でも愛用して います。
当時はシュミカセに「EMS-1」と双眼装置を取り付けて観望を楽しんでいまし たが、 いつかはEMSを使用した松本式双眼望遠鏡(MTT)を持ちたいと思っていまし た。
幸運にも1995年の福島県石川町スターライトフェスティバルに参加したとき に、 東京の遊馬氏が持参されたMTTを実際に覗かせていただく事ができました。
昼間の景色、惑星、星雲星団など、いろいろと観望させて頂きましたが、初めてM TTを 体感した時の感動は今でも忘れることができません。その数日後には松本さん宛てに 「双眼望遠鏡を製作して頂きたい。」というような内容の手紙を出しました。

翌年のスターライトフェスティバルには自分自身がMTTを持参し参加していまし た。
何よりも、当日は松本さんご本人と会場でお会いできまして、直にMTTの調整のコ ツを ご伝授いただき感動しました。完成まで松本さんとの連絡はFAXでやり取りするこ とが ほとんどでしたが、何かと的をそれた私の質問に対して、松本さんはいつも詳しく、 分かり やすく説明して下さいました。何度もやり取りしましたので、それらのFAX紙は分 厚い ファイルとなりました。当時はほんとにお手数をおかけしました。スミマセン。

MTTは私の天文ライフの中での価値観と言いますか、こだわりを完璧に現実化し て くれました。これは私にとって基本的なスタイルで、一生変わらないと思います。

写真①

タカハシFC50にEMS-1と双眼装置の組み合わせ。1993年に撮影したも のですが、 今でも時々これで見ています。
2001年土星食はこれで移動して高速道路のPAで 観望。 何とユーザーレポートを書かれている林氏と遭遇。私がEMSを持っていたことで、 お互い MTTユーザーと判明!こんな場所でお会いするなんて、土星食よりめずらしいこと でしょう。
林氏は土星食を撮像されていました。「今度はお互いMTTを持ち寄って観望しま しょう。」 空が明るくなるまで話がはずんでしまいました。MTTユーザーと話すのはすごく楽 しいです。
ちなみに、2001年の石川町スターライトフェスティバルではやはりユーザーレ ポートを 書かれている井上氏ともお会いできました。井上氏は太陽望遠鏡にEMSと双眼装置 で参加 されていました。素晴らしい太陽像を見せていただきました。

写真②

私の主力機。鏡筒はBORG125ED(F8)です。鏡筒の選定にはかなり迷い ました。 最終的には松本さんのアドバイスもあり、口径、性能、重量などを総合してこれにし ました。 レンズはロンキーテストにかけてみましたが良くできています。
何よりコントラスト が良い ので、淡い星雲が良く見えます。惑星はシーイングの良い日ですと何時間も見てしま います。 MTTの素晴らしさはユーザーの皆さんが既に詳しくレポートされている通りです。  低倍率から高倍率まで、ぞくぞくするほどの宇宙を体感できます。
赤道儀は以前から使用していた三鷹のGN-22を利用しています。常に快適な視 点が 得られるように、鏡筒は回転装置に付けられています。
この回転装置も松本さんが凝 りに凝って 設計されたもので操作感は抜群です。各部には「ここまでやるか!」と言うほどの微 調整機構 が与えられていて、左右鏡筒の平行や回転の中心及びテンションを完璧に追い込むこ とが可能です。
回転リングとEMSボディーの塗装は三鷹の赤道儀の色に合わせて特別に塗装して いただきました。 こんなわがままにも快く応じていただき恐縮致しました。

写真③

GN赤道儀ですと、いささか重量がありまして移動が面倒な場合が多々あることは 否めません。
松本さんにお願いして鏡筒のみを経緯台に搭載する為のアタッチメントを製作して頂 きました。 これにより、稼働率が大幅にアップしました。最近ではこの経緯台仕様で移動するこ とが ほとんどです。惑星の観望だけなら鏡筒回転装置を使わずに、このまま赤道儀に載せ てしまう こともあります。
その場合、右側鏡筒で観望しつつ、左側は直視用に変えてデジカメ 撮影 という贅沢な使い方も可能です。もちろん経緯台でも高倍率でスイスイ追尾すること ができます。

写真④

これは遊馬氏のMTT。1995年の石川町スターライトフェスティバルで撮影さ せて いただきました。レンズはBORGの10cmですがボディーは松本さんの手により 完全に 作り変えられていました。
いたるところに工夫が凝らされ、細部の細部まで美しい仕 上がり。 驚きました。実際に覗いてみると想像以上の圧倒されるほどの臨場感があり、感動し ました。  これでMTTの製作依頼を決心しました。

写真⑤~⑦

参考までに、タカハシのFC-50をロンキーテストにかけてみました。 左は直視、真ん中は純正の大型プリズムを装着、右はEMS-1を装着したものです。FC-50は所謂「お宝」 と言われています。写真では分かり難いかも知れませんが、プリズムを使用しますと 明らかに色収差が発生し、コントラストも低下しました。  松本さんによりますと、プリズムは球面収差をも惹起させるそうです。

須田 信明
Nobuaki Suda

Comment by Matsumoto / 管理者のコメント

須田さんは、この度のSCHWARZ150(F8)の双眼望遠鏡(初期経緯台仕様) のユーザーでもあるのですが、この度は、1996年にお作りしたBORG125ED(F8) 鏡筒を使用した赤道儀仕様の双眼望遠鏡のリポートを先に頂きました。
須田さんは、EMSをその黎明期より支持し、見守ってくださって来た中の一人です。
当時はネットが今ほど普及しておらず、HPも開設していなかったものですから、 ミタカの赤道儀に載った須田さんや遊馬さんのMTTや、初期のEMSであるEMS-1(光学的capacity,光路長は現行の EMS-Mに相当(ただし、EMS-Mは2インチアイピースの一部使用可))をご覧になった方は少ないと思います。
“MTT”というのは、Multi Purpose Twin Telescopes の略で、(「汎用二連鏡筒」 とでも申しましょうか)、双眼視から、二連カメラ、カメラとガイドスコープ、EMSの左右 を交換して、ティーチング用二連鏡筒、等、広い応用を意図して命名したものでした。
そのまま絵ハガキになりそうな美しい写真の数々と、客観的なデータであるロンキーテスト の写真は、まだEMSやMTTを知らない方々にとって貴重な資料となることでしょう。

(2007年12月25日追記) 悲しいご報告ですが、須田さんは 2007年の3月にお亡くなりになりました。心よりご冥福をお祈りします。このリポートは 今でも異彩を放っている価値ある資料です。今後も大切に管理させていただきたいと 思います。