BLANCA130EDT-BINO

5年前からテレビューPRONT-BINO、笠井SCHWARZ150S-BINO(以下SCHWARZ)の2台を使用しています。今回3台目のBINOとして笠井トレーディングのBLANCA130EDT-BINO(以下BLANCA)を導入しましたのでレポートします。

【BLANCAの構造】
松本さんのところから届く時は(写真1)のような梱包状態です。梱包はしっかりしていましたが、左側鏡筒の合焦機構にガタが出ていたので松本さんに確認しながら調整しました。松本さんの所で2晩テストした時点では異常が無かったとの事なので輸送時に衝撃が加わったものと思われます。

(写真2)は以前からドーム内で使用していたSCHWARZと並べたところです。拡幅HF経緯台(真鍮耳軸+バランスウエイト付き)+スライド式眼幅調整機構は同じですが、スライド機構の精度向上、アルマイト加工、アリガタ式鏡筒単独取付機構、鏡筒スケアリング調整機構が追加されています。(写真3)この部分の構造はBINO Progress Report 製作状況速報の2010年10月5日前後に詳しく紹介されています。

スライド眼幅調整機構は樹脂系軸受けを使用した新型だそうです。ガタ無く、精密に動きますが、予想より鏡筒が長かったのでアイピースを覗きながら眼幅調整するのはやや困難になりました。(3枚玉の対物レンズが重いので接眼側が長くなる)より大型の鏡筒の場合は鏡筒固定+IPDクレイフォード眼幅調整式の方が使いやすいかもしれません。

BLANCAは焦点距離が900mmあるため、SCHWARZより一回り大きく感じます。双眼状態で重量は約24kgです。SCHWARZが約20kgですから、かなり重いです。(ともにバンド・スライド機構・ファインダー・ウエイトシステムを含む)ただグリップハンドルの太さが適切なため、鏡筒を1本ずつ持ち上げるのは比較的楽でアリガタ式の鏡筒単独取付けの効果もあり、重さ・大きさの割りに組み立ては簡単です。またグリップハンドルは鏡筒の指向方向を確認するのにも便利です。対空型ファインダーをはじめて装備しましたが導入時の姿勢が楽になりました。

合焦機構には減速微動装置があり、この部分が左右対称に調整されて出荷されています。特に高倍率時の合焦に便利です。尚、合焦機構の取扱説明書は入っていましたが、光軸調整機構の説明書はありませんでした。

ウエイトシャフトは360度回転できます。対物側が重いので後ろ側にシャフトを出して鏡筒の重量バランスを調整しています。(写真4鏡筒右側)

(BINO Progress Report 製作状況速報の2010年10月17日にも記事があります)ウエイト位置を簡単に調整できますので、アイピース交換に伴う重量バランス変動をすぐにキャンセルできます。ウエイトは1個約500gです。

操作ハンドルは鏡筒直付けです。SCHWARZでは架台取付方式でした。(写真5)それぞれ一長一短がありますが、握り部分の太さと材質の面ではSCHWARZ(樹脂製)の方が良いと思います。また鏡筒直付け式は、高倍率時にやや振動を生みやすい印象です。これはピラーに移動用キャスターを付けている事も影響しているようです。

【手持ちアイピースでの印象】
SCHWARZとBLANCAを簡単に比較してみました。最上段は倍率、実視界(見掛視界を倍率で割った概算値)、射出瞳径です。


EWV32mm(笠井)
見掛視界85度 アイレリーフ20mm 480g/1個

SCHWARZ150S
【23倍 3.6度 6.4mm】
BLANCAに比べれば星像は大きめですが十分立派な像です。二重星団などは賑やで美しく見えます。 また色を楽しむ二重星もアポ鏡筒より向いているかも知れません。 低倍率では乱視の影響が大きく出るので眼鏡着用など対策が重要になります。80%くらいから同心円状に像が流れ、最周辺部は崩れますが十分実用範囲です。自宅の空ではIDAS-LPS-P2フィルターを併用することが多いです。

BLANCA130EDT
【28倍 3度 4.6mm】
小さく収束するシャープな星像と、非常にすっきりしたコントラストの高い像質が印象的です。周辺像の崩れ方はSCHWARZとほぼ同傾向のようです。射出瞳径が少し小さくなり背景が暗くなるので光害カットフィルター無しでも使えます。SCHWARZでは自宅か らだと難物だった螺旋状星雲やNGC253も容易に確認できました。 また月を見ると背後の恒星群の中に浮かんだような姿を見ることができます。月をこれほど美しく見せる望遠鏡は初めてです。


イーソス17mm(テレビュー)
見掛視界100度 アイレリーフ15mm 725g/1個

SCHWARZ150S
【44倍 2.3度 3.4mm】
見かけ視界100度は絶景です。それも双眼視ですから尚更です。ただ双眼視だと、何故か視野枠がやや目立ちます。目幅や覗く角度に注意がいるのかも知れません。 乱視がある場合はディオプトロクス(乱視補正レンズ)を装着しないと性能を発揮できません。視野の70%辺りから像が流れているように感じられます。昼間の地上風景では色収差と糸巻状の歪曲がかなり出ますが、星では気になりません。

BLANCA130EDT
【53倍 1.9度 2.5mm】
SCHWARZで気になる周辺部での像の乱れが少なくなり、さらに見事な超広視界の世界が楽しめます。射出瞳径がちょうど良いようで、背景が適度に暗くなり星雲状天体が見やすくなります。M42やM33はSCHWARZよりもディテールが見えているようです。昼間の地上風景は、色は感じないものの、歪曲が気になります。


イーソス10mm(テレビュー)
見掛視界100度 アイレリーフ15mm 499g/1個

SCHWARZ150S
【75倍 1.3度 2.0mm】
17mmよりかなり引き出した位置で合焦します。非常に相性が良いようで超広角にもかかわらず、全視野ほぼ良像です。最周辺は若干ピント位置が異なり星像が肥大しますが、余り気になりません。光害が残る空では、この位の 射出瞳径が淡い天体の検出に向くようです。お奨めの組み合わせです。

BLANCA130EDT
【90倍 1.1度 1.4mm】
こちらも視野全面で素晴らしい像です。星像がSCHWARZより小さくなるので見栄えがします。 またコントラストが非常に高くM42の暗黒星雲部が穴のように見えます。月は全景が収まりますが、同時に細部構造まで良く見えます。DEEP-SKYから惑星まで幅広く楽しめる組み合わせです。


ラジアン4mm(テレビュー)
見掛視界60度 アイレリーフ20mm 345g/1個

SCHWARZ150S
【188倍】
アイレリーフが長く覗きやすいですがさすがに過剰倍率ぎみです。月や木星を見ると青紫のハロが気になりますが、模様は意外と良く見えます。第四世代型なので合焦操作がやや大変です。クレイフォード式なら 問題ないでしょう。

BLANCA130EDT
【225倍】
ハロ・着色も無く非常にすっきりした像を結びます。対物レンズは更に高倍率に耐えそうですが、架台の制約でこの位の倍率が実用限界のようです。 木星はこの倍率でも眩しいので、笠井のムーン&スカイグローフィルター かNDフィルターを使うと模様が見やすくなります。


倍率、射出瞳径が異なるので単純な比較は難しいですが、銀ミラーのBLANCAはアルミミラーの15cmSCHWARZと同等か、それ以上の集光力があるように感じます。優秀な光学系により星像が小さく収束する上に、銀ミラーの反射率UPが効いているようです。特に淡い星雲状天体の検出ではBLANCAが勝るようです。但し銀ミラー同士で比較すれば集光力はSCHWARZが上回るかもしれません。

今回、あらためて痛感しましたが、低倍率では乱視の影響が強く出ます。(私の乱視は右目-1.5(90度) 左目-0.75(110度))アイレリーフに余裕のあるEWV32mmでは眼鏡を着用すれば概ねOKですが、イーソス17mmではテレビューのディオプトロクス(乱視補正レンズ)が必要になります。ディオプトロクスの回転位置を調整すると別物のように星が点像になり、光学系の性能が1ランク上がったように感じられます。乱視の方がアイレリーフの短いアイピースを使う場合には必需品でしょう。またFの明るいSCHWARZの方が顕著に影響が出ます。

【まとめ】
当初TOA130等他の鏡筒も検討しましたが、直焦点撮影をする予定が無いこと、架台の制約から使用上限が200倍強程度である事、新たにアイピースなどアクセサリー類を揃える必要もあった事から、コストパフォーマンスに優れるBLANCAを選択しました。実際の星を見ずに発注するのは不安もありましたが、光学系は十分満足の行くレベルで、トータルバランスに優れた組み合わせにできたと思います。
一方で、15cmF5級アクロマートの優秀さを再認識しました。DEEP-SKY中心に100倍程度までならアポ鏡筒と遜色ない性能を秘めています。アポ鏡筒とはかなり価格差がありますので、差額をアイピースやアクセサリー類、遠征費用にあてるという選択肢は十分に成り立つと思います。
今後はBLANCAをドームに設置し、SCHWARZを移動用に使う予定です。

【おまけ ドームへのルームドライヤー設置】
BLANCA導入に合わせて、連続運転できるダイキン製のルームドライヤーを取り付けました。(写真5右側に写っています) 工事費込で約4万円でした。これは横浜のY.K.さんのレポートにあった機種と同じものだと思います。構造上、室温を若干上げてしまいますが、対物レンズの温度順応に顕著な悪影響を与える程では無いようです。

ミサゴ
2010年11月9日


Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

3台目のBINOとしてBLANCA130EDT-BINOを導入してくださったミサゴさんより、さっそくリポートをいただきました。

まず、着荷時にメインのクレイフォード・フォーカサーが緩んでいたそうでしたが、うまく調整してくださいました。クレイフォード・フォーカサーは、物理実験用の円滑な4輪台車を、定盤(精密な平面)上で与圧を与えながら転がす原理ですので、構造は極めて単純明快です。  問題が生じるのは、与圧が足りなくなった時(ガタやスリップが生じる)や、定盤と車輪の間、またはドローチューブのフラット部とドライブシャフトの間に異物が混入した時(コロコロ感が出る)、あるいは、ノブからシャフトにかけて被覆した化粧パイプ等が移動してドローチューブにこすれている等の場合に限られますので、それらをチェックして原因を取り除くのは難しくありません。

今回は、この規模のBINOとしては、初めて鏡筒平行移動方式を採用してみました。 これは依頼者の方と相談の結果決定したものでしたが、私も新しい平行移動の機構を試してみたかった事情があり、速やかにその方式で合意に至りました。

初めての仕様だけに、操作性等、未知数なところがあり、得失が生じましたことには反省し、今後の改善に繋げたいと思っています。 ミサゴさんの長い経験に基く技量により、うまく使いこなしてくださっていることに感謝しています。

操作ハンドルは、今までも鏡筒固定方式のBINOで鏡筒直付けをしたことがありましたが、鏡筒平行移動方式に採用したのはこれが初めてでした。 今回はどうやら、今まで通り、CRADLEのベースプレートからロッドを延ばしてハンドルを付ける従来の方法がベターのようで、それに変更させていただく予定です。

お手持ちのアイピースとの相性等について、SCHWARZ150S-BINOとの詳細な比較をしてくださいました。アクロマートとアポクロマートの2種類のBINOについて、片方を完全に否定するのではなく、それぞれの存在意義を理解され、両方とも使いこなしておられることに感心しました。 より上の性能を目指すのが、人間のサガ(性)ではありますが、少なくともDEEP-SKY対象については、アクロマートでも十分に善戦することは、先日参加しました、双望会でも感じたことです。

また、銀ミラーの効果が口径の壁を越えることを検証くださいました。 銀ミラーの13cmがアルミミラーの15cmに匹敵もしくは凌駕するとのご報告は、他の方からも同様の感想をいただいておりますので、間違いないようです。 それは、単なる総合的な反射率の向上だけではなく、各色を平等に反射することによるコントラストの向上の効果が相乗するためだと思われます。 去る双望会の会場でも、多くの参加者の方々が異口同音にコメントしておられました。

望遠鏡の性能が良くなるにつれて、架台が課題になって行きます。 BINO製作の納期が延びるので、以前は架台の製作には手を染めないことにしていましたが、最近はそうも行かなくなって来ました。 バックオーダーの消化が滞りながら、自ら墓穴を掘っているような気もしますが、ここは加工手段を進化させながら乗り切らないといけないと思っています。

BINOは依頼者の方と一緒に作り上げて行くものだと思っています。 納品したらそれで終わりではなく、改善箇所があれば、依頼者の方と一緒に改善して行く姿勢でおりますので、今後ともよろしくお願いいたします。 ご多忙中にもかかわらず、懇切なリポートをありがとうございました

FS60-BINO

EMS Binoscope by Takahashi FS60 telescope

This little binoscope is light in weight and small in size which makes it very transportable and usefull for quick observations. The basis is a set of FS60-CB telescopes with 2″ attachment. They were converted with a CSV tube to obtain 22 mm more backfocus. A set of 2″ EMS-UL was used to allow maximum field with minimum backfocus. Together with the new special EWV-adaptor, instead of the eyepiece barrel, backfocus is reduced another 18 mm. The EWV-32 mm eyepiece can now be used to obtain a magnificent 7.7 degree field at 11x power.

To have IPD adjustment the FS60 telesopes are mounted on double Lineair Translation Stage and Track from Edmund Scientific which fits very convenient to the mounting plate of a standard Vixen Forkmount. With the EMS 1-1/4″ adaptor Pentax SMC eyepieces are Parfocal with the EWV-32mm eyepiece. When a 3.5 mm Pentax SMC eyepiece is used with the FS60-EMS binoscope it shows crisp binoviews of Jupiter and the Moon at a stunning 101x power.

___________________
Addition:

Since the CSV tube is not available anymore I guess it should be possible to obain enough backfocus for the EMV 32 mm eyepiece with a shorter version of the EWV-adaptor.

Alexander van Lemel
Rijssen, Netherlands
September 28, 2010

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント

Mr. Alexnander van Lemel has made his second binoscope, FS60-BINO, successfully after making his first one of TSA102-BINO

I would like to give him a biggest applause on his feat of building two binoscopes using my EMS, conquring the limitted information, and especially the language barrier. The only communicative language tool was English which was foreign language for each other.

I am also very appreciative of his generousity for allowing his full name and the link of his e-mail address appearing on his article. That will greatly help foreign guys especially in Netherlands who have the aspiration to build binoscopes someday.

 オランダの Lemel 氏のTSA102-BINO(未発表)に続く第二作の、FS60-BINOです。 都合により、短筒仕様の鏡筒の入手を諦め、通常鏡筒を工夫して合焦の問題をクリヤーしています。  少し前にBINO製作情報速報にて、EWV32㎜のマイナスプロファイル化をご紹介したのは、この方の 注文でした。この改造EWV32㎜はEMSの短いタイプの31.7AD(EMS-S,M) 用のアダプター;高さ44㎜)と同焦点になっていますので、EMSフルシステムでの光路長は、EMS-S等に対して、わずか14㎜の追加で済んでいます。

FMS-UL(Flexible Mirror System)

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2台のFMSを使用した感想

岡山の「やまと」と申します。市立の天文台をボランティアで管理・運営をやっ ています。このたび、FMSを2台導入させていただきました。また、この2台 とも、松本さんにこちらの要望を聞いていただき、改良を加えていただいた物です。

写真4が、2台のFMSを望遠鏡に装着した所です。最初の予定は、同架してあ る20cmのマックと10cmの屈折に装着する予定でしたが、今は、40cm と10cm屈折に装着しています。

最初にFMSの導入を考えたのは、主力の40cmにはワンダーアイが取り付け てあるので、見学者に合わせて接眼部を動かすことができるのですが、同架して いる20cmマックと10cm屈折は接眼部を動かす事ができなくて、アイピー スをのぞくのが難しいことが多かったことからです。 同架してある2台を使用する時には階段を使うのですが、ストレートでのぞいて も、天頂ミラーを使っても、なかなか上手く目の位置に接眼部を合わせることが できませんでした。また、大人は天頂ミラーがないとのぞきにくい、子どもは天 頂ミラーがあると背が足りなくてのぞけない、という状態もおこっていました。 天頂ミラーを付けたり外したりすることは、見学者が待っている状態では現実的 ではありません。この問題を解決するためには、接眼部を動かす事ができるよう にするしかない、ということからFMSの導入を決め松本さんに相談にのっていた だきました。

まずは1台ということで、FMSを作成していただき、望遠鏡に装着したところ、 大型のアイピースを使用したときや、接眼部にカメラを接続したときには、可動 部を止めるネジが1本では少し強度不足に感じました。しっかりと締め込めば何 とかなるのですが、少しでも緩いと接眼部が動いてしまいます。そこで、止めネ ジを2本にするように改良していただきました。これで、大きなアイピースも安 心して取り付けることができるようになりました。 実際に使ってみると、接眼部が動かせるのは想像以上に便利です。個人で使うと きには、あれば便利、という程度と思いますが、次々に背の高さの違う人が見る 公開天文台では必需品という気がします。一般観望者のために、FMSが普及す ることを願っています。

1台目でFMSの効果が十分分かりましたので、ボランティアの皆さんと相談し たところ、是非もう1台ということになりました(金額的にも2台が限度でした が)。

2台目は、1台目を使ってみて、可動部がもっと丈夫になれば、少し大きなデジ 眼も安心して取り付けられるし、すり割りで締め付けるようにできればテンショ ンも自由に調整できるのでは、ということからすり割り式にできないか松本さんに 相談したところ、「新規の開発になり開発費もかかるがやってみましょう」とい うありがたいお返事をいただき、作成していただきました。

主力の40cmにはワンダーアイとプリズムを組み合わせて正立像で利用してい ましたので、FMSを使うつもりは無かったのですが、松本さんと話をしていると、 FMSは角度によって像が変わる、正立になるところもあるというような話を聞 かせていただき、それはそうか、まず40cmでも試して見ようということで、 2台目のFMSを40cmに装着してみました。そして、実際に使ってみると、 その便利さから取り外すことができなくなってしまいました。

写真1がFMSを装着した所です。背の高い人が見るときには写真2のようにな ります。同じ接眼部の状態で、背の低い人が見るときには、写真3のようになり、 FMSの回転のみで対応が可能です。身長の差で3~40cmぐらいの差ならば このFMSで対応可能のようです。また、写真3のような使い方ができるように なったので、今までは踏み台を利用する必要があった子ども達が、踏み台なしで も見えるようにもなりました。

このようにFMSは大変便利に使えることがわかり、今では必需品になっていま す。 また、副産物として、デジ眼を接続したときに自重でズームレンズが勝手に伸び たりすることがあったのですが、FMSによって接眼部を自由に動かせることか ら、接眼部を水平にすることにより、これを防止することができるようになりま した。個人で写真を撮られる方は、ズームレンズを接続して写真を撮ることはな いと思いますが、子ども達に、月を自由に拡大して自分の思うような写真を簡単 に撮ってもらうためにはズームレンズはどうしても必要でした。何か工夫をしな いとこのままではダメだな、と思っていた懸案をFMSで解決することができま した。

先にも書きましたが、FMS、公開天文台では積極的に採用して欲しいものです ね。望遠鏡に人間が合わせるのではなく、人間に望遠鏡が合わせるようになれば、 天文ももっと普及するのでは無いでしょうか。天文に多くの人が親しんでもらえ るようFMSの普及を願っています。        やまと

9月14日追記:

FMS、快適に使わせていただいています。しかし、使ってみると、もう少し・ ・・という部分が出てきました。

使用しているアイピースが重すぎて、1点での留めネジでは強度不足とは言わな いまでも、もう少し強力に留めたい、という欲求が出てきました。早速松本さんに

相談したところ、「他のパーツも含めて送ってください」とのありがたいお返事 をいただき、早速改良していただきました。

写真7のAのネジは元の留めネジです。これにBと(写真では裏側で見えませんが) Cの留めネジを追加していただきました。これで、なんの不安もなく使用するこ とができるようになりました。また、光路長の関係で延長筒を使用していますが、 この留めネジも①の1本留めから、②を追加していただき2本留めになり、十分 な強度を持たせることができました。不安無く安心して使えることは、精神衛生 上大変良いですね。

このように、要望に合わせて細かな改良をしていただけることは、何にもまして 助かります。ありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。

Comment by Matsumoto / 管理者のコメント

やまとさんがFMSを2台ご使用になった感想を投稿してくださいました。 単体のEMSの使用 リポートは、なぜか今までにほとんど集まらなかったので、大変嬉しいご投稿でした。

市販の天頂ミラー(1回反射)を屈折望遠鏡の接眼部に対空型にセットして地上風景を上から覗いて 見ますと、左右だけが逆になった直立像が見えます。このままアイピースを天頂ミラーごと反時計回りに90度倒して 横から覗きますと、像は同じ量だけ同方向に回転し、今度は天地だけが逆の裏像となります。

FMSの仰角と像の向きの関係をご説明しましょう。 FMSも天頂ミラー同様側視も可能で、覗き方はほとんど 無限にあるので、ここでは、目標に体が正対して観察する場合に限定します。

まず、仰角0度(直視)では、お察しの通り、望遠鏡の像の向きをそのまま見せてくれます。 つまり、 使用する望遠鏡の像が元々正立像なら正立像、倒立像であれば倒立像がそのまま観察されます。

EMSの構成ユニットが(双眼望遠鏡用で考えた時の)右目勝手の接続の場合、仰角を0度→90度に 移行させて行きますと、倒立像は反時計回りに180度回転します。 ただし、これは単純に2倍角で 回転するのではなく、仰角設定と像の向きの関係は線形ではありません。

EMSの仰角は90度を越えて最大120度までセッティング出来ますが、この間の像の回転量をご説明すれば、先述のことが理解していただけるでしょう。 何と、(右目勝手で)仰角90度→仰角120度(写真1)までのわずか30度の 仰角変化の間に、像は先ほどと同じ方向(反時計回り)に180度回転するのです。
(念のためにご説明しますが、FMSは自由に左右勝手を往復できる機構なので、 最初から右目勝手仕様とか、左目勝手仕様という区別はありません。(9/1追記))

もう一度整理しますと、
* 仰角:  0度 →   90度   →120度 の間に;
 像:  倒立像 →  正立像 → 倒立像  と、同方向に連続して回転するわけです。 左目勝手の接続では、回転方向がこれと鏡 対称になります。(この特徴がEMS-BINOの像回転の調整に功を奏すのです。)

(*注: 上の『仰角』とは、EMSの最終的な折り曲げ角度のことです。観察姿勢のことではありません。 また、上記例は、望遠鏡自体が倒立像の場合です。)

このことが示唆することの重大性は、今まで折に触れてご指摘して来た通りです。 (使用する望遠鏡の正立、倒立に関係なく利用価値があるのもその効果の一つです。)

EMSは元々、単体の対空視手段として開発しました。 しかし、大方のマニアや専門家の長年の固定観念( 2回反射は像劣化をもたらすはず・・^^;)を払拭するのはそう簡単ではないようで、単体のEMSの存在意義や真価が 十分に理解、認知されないまま、先に双眼望遠鏡用の手段として有名になってしまった、というのが、製作者 当人の正直な歴史認識です。^^;
ただ、こうして、”やまと”さんのような方が極めてたまにでも現れてくださると、またEMSを作り続ける勇気を いただいた気がいたします。

9月14日追記:

やまとさんより、追加リポートをいただきました。

FMSの場合は、EMSユニットの回転部の接続の他に、FMSと望遠鏡、FMSとアイピーススリーブ、 さらにスリーブとアイピースと、接続箇所が多いので、それぞれに配慮が必要になります。

通常より重い物を接続する場合には、それなりの対策が必要になるようです。  全ての接続箇所をすり割りクランプ式にすれば理想ですし、接続径を単純に太くするのも、大きな 接続強度のアップが期待できます。

今回いただいたリポートは、マイナーな追加加工の結果報告でしたが、私としましては、 やまとさんが2台のFMSを継続的に、しかも極めて有効に活用してくださっていることの意義を読み取っていただけたら幸いです。 やまとさんは、FMSを臨時的な対空手段ではなく、望遠鏡に常設 してご使用になっていますが、それは製作者の意図とも合致しています。

残念なことに今日に 至るまで、「天体望遠鏡は直視で見るのが基本であり、天頂ミラー等は天頂付近を見る時に 仕方なく使用する臨時手段である。」という固定観念が望遠鏡業界にもマニア界にも非常に 根強く浸透しています。

私が”汎用ミラーシステム”という名称で仰角可変タイプの EMSを初めて世に送り出してから20年が経過しているにもかかわらず、EMS全体に占める 仰角可変タイプの要望が未だに極めて少ないことには、改めて驚きを禁じ得ません。

一度権威を帯びてしまった固定観念を払拭するのは並大抵なことではありませんが、 少数ながらも、やまとさんのような理解者がおられる限り、諦めるわけには行きません。

 

TOA130-BINO in the sliding roof shelter

 古くなった納屋の建て替えに合わせ、屋根裏に念願の観測室を設置しました。

 TOA130BINOは、高い光学性能、持ち出し可能、シンプルで堅固、操作性に富んで、しかも美しい、これ以上求めるところが見あたりません。朝、観測室に運び込みました。松本さんのロゴ第一号の意味が納得です。夕方、電気工事がが完了したので、写真を撮りました。一部送ります。とても満足しています・・・・・・・・。

 続報 1 2010年9月16日

 BINOを設置した後、月をTOAで見ましたが、イーソス8mm125倍100度の視野は、月全体をとらえることができ、その表面の詳細まで見せてくれました。暑い夏の夜の空気のゆらぎが気になる中でしたが、感動を味わいました。不思議なのは、視界いっぱいの月であっても日周運動によるその動きが気にならないで観察できることです 。自動ガイドの必要性は当面感じません。時々ハンドルを動かすだけで十分でした。どうしてでしょうか。

 また、8月26日にはハワイ島のマウナケア山頂4000m超でスバル天文台を横に見ながら雲海に沈む夕日と、東の空に赤く四角形につぶれた顔を出し始めた満月を同時に見る機会をもつことができました。高山病予防のため、星はオニヅカ・ビジター・センターのある2800m付近まで降りてから観察しましたが、月明かりで、手に届く ような星々を見るまでには至りませんでした。このときは持参したNikon7倍50mm双眼鏡が活躍しました。日本よりさらに南側が観測できるさそり座・南斗六星付近の銀河中心部の数々の星団を流しました。ガイドさんによるグリーンレーザーポインター(星まで光が届いているのではないかと思えるほど強力なもの)で指しながらの 星座の説明も楽しみました。

 9月9日台風の後の好条件で、TOA130BINO+イーソスと12cmF5BINO+EWV32を対比しながら短時間でしたが観望しました。それぞれが特長を生かした接眼レンズとの組み合わせで、観望を楽しむことができました。12cmF5で天の川を流し、木星、M13、M59を確認しました。18倍程度の倍率で、見え方は小さいがF5の明るさが特徴的 なことを再確認できました。M13、M59は、その存在がやっとわかる程度の見え方です。

 TOA 125倍では、木星は衛星まで含めて約1/3の視野に収まっています。木星の縞模様がはっきりと確認できました。M13では、無数の星つぶを立体的にとらえていました。環状星雲M57は、リング状のはっきりとした輪が確認できました。12cmF5に比べ、星以外の宇宙ががどこまでも暗く、暗黒の空間を感じました。

 翌日の明け方3時頃、目を覚ましたついでに、冬見られる星々を確認しました。TOAで見るオリオンは見事でした。12cmF5では分離できない台形4個のトラペジウムがはっきりと分かれ、視野いっぱいの立体的なガス星雲の広がりが見事でした。次にアンドロメダ銀河も確認しました。昨年12cmF5を携えて富士山5合目まで行った とき、月を余裕でとらえることができる75倍100度の視野からは、アンドロメダ銀河の全体像があふれてしまっていた事に驚かされたことを思い出しました。(自宅での観望では小さくしかその存在が確認できません) 我が家からはTOA130 BINOの125倍の視野からあふれるアンドロメダ銀河までは確認できませんでした。条件が良 ければ、力を発揮できるでしょう。両極端な2台のBINOですが、それぞれの特長を生かしながら、時に遠征まで含めてディープスカイを求めつつ観望を続けていきたいと思います。 とりあえず短時間の観察のご報告まで 。

水車

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 納期がずれ込んでしまった、水車さんのTOA130-BINOでしたが、観測所の完成と非常に 良いタイミングで、7月24日に当方でお引渡し出来ました。

 完成された観測室に初めてTOA130-BINOを設置された第一報をいただきましたので、まとまったリポートをいただく前に、水車さんにお願いして写真と第一報の一足先の掲載をお許しいただきました。
 観測室には、奥の12cmBINOと手前のTOA130-BINOが仲良く並び、製作者としても嬉しい限りです。

 追記 2010年9月16日

 水車さんより、早速続報をいただきました。  マウナケア天文台にも行かれた由、羨ましい限りです。 標高2,800もあると、満月近くの月があっても下界では見られないような素晴らしい星空を堪能されたことと察します。
 2台のBINOの特徴を活かしながら、どちらも愛用してくださって、嬉しい限りです。 トラペジウム は12cmF5でも分解するはずですので、倍率等を変えて再度チェックしてみてください。

 高倍率時でもTOA130-BINOの中軸架台がうまく機能してくれているようで、嬉しく思います。 中軸架台も、5台以上作り、1台ごとに改良を重ねて、成果が出たように思います。 スラストベアリングの採用が最も功を奏したわけですが、ラジアル方向の円滑さでは、グリスの粘度が重要だと分かりました。 剛性を気にする余りに、初期にはグリスの粘度を高くし過ぎていたことが、水車さんの BINOの頃までに判明し、最近ではグリスの粘度をずっと低くして、より快適な水平回転を達成しています。 初期の製品をご使用の方で、水平回転がやや渋いとお感じになる場合には、水平回転軸部分を分解して、そこに市販のグリススプレーを適量吹きかけて(混合して)調整してください。

 水車さんには、海外遠征のお疲れが取れる間もなく、タイムリーに続報をいただき、 誠にありがとうございました。 これから、秋から冬の天体をじっくりと観察されましたら、ぜひ”続報2”を お願いいたします。 楽しみにしております。

PRONTO-BINO(7cmF7),Mr.Kato (2010,5/29)

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photo 4 (before)
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テレビュー製のプロントEMS-BINO(7cm F7)が納入されたのが2005/2ですから ちょうど5年強が経過しました。 この間の利用状況、印象などをご報告します。

 テレビュー社では「最もよい望遠鏡とは、最もよく使う望遠鏡」のコンセプトで 何種類もの魅力的な望遠鏡をラインナップしていますが、その初期のものが プロントだと思います。 もちろん大型機にはそれぞれの魅力があるのですが「まずは使ってこそ」 と言う考え方には非常に共感します。

 プロントEMS-BINO導入してから5年の間に体調を崩し、入退院・手術を繰り返して 最終的には人工透析(週3~4回 7時間/1回 帰宅は24時頃)を受けることになりました。 このため星を見ることができる時間が大幅に制限されましたが、 プロントEMS-BINOはその扱いやすさから重宝しています。

【運用】(写真1) 通常は自宅2階の書斎に置いてあり、ベランダ観望に用いています。 EMS-BINOとしてはかなりの小型機ですが、その分、

・軽量・コンパクトなため簡単に準備ができる(文字通り数秒)
・対物レンズなど光学系の温度順応が早い
・鏡筒が短いため狭いベランダでも使いやすい
・光学系全体の優秀さゆえ星像が美しく、かなりの高倍率まで耐える(架台の限界はあります) ことから稼働率は高く、晴れ間があれば直ぐに使えます。
(透析日の就寝時間は午前1時頃ですが、就寝前に見ることもあります)

 ベランダ(南向き)のため視界は限られますが 月、惑星はおおむね見ることができます。(西に低くなると隣家の屋根にかかり見えない) またEMSにより視線が下寄りに向くため、街灯の影響を受けにくいのもメリットです。

【使用アイピースと星像】

 EMS-Lを選択したため2インチアイピースが使えます。 現在、主力アイピースはツァィスの12.5mm(見かけ視界90度)で 笠井トレーディングの2インチマルチショートバローのレンズ部のみを取り付けて 約60倍で使用しています。
このアイピースは合焦位置がかなり対物レンズ寄りなのでバロー(約1.5倍)を 合焦用のエクステンダーとして利用しています。

 このアイピースはナグラー・イーソスなどと比較すると 「シャープさを持ちながらも、やわらかめの像質」の印象です。
周辺まで比較的良像を結び、特にFの短い鏡筒との相性が良いように感じます。

 周辺部を注視すると星が流れているのは判るのですが、 中央付近に視線を置くと周辺部の流れが余り気になりません。 眼の構造のためか、何か特別な設計ノウハウがあるのかは判りません。

 地上を見た際の像の湾曲が少ないのも特徴です。(イーソスは盛大に曲がります) また軽量なのも長所でしょう。

・アイレリーフが短い
・合焦位置がかなり対物レンズ寄りで望遠鏡によっては合焦しない(エクステンダーで回避可能)
・月を見ると若干黄色系の着色がある(もともと地上用の光学系として設計されている為らしい)
なことが難点でしょうか。

 この組み合わせでも、星像は十分満足行くものになります。 イーソス10mmを使う場合もありますが、この組み合わせだと 最早文句を言うところが見当たりません。

他にシュバルツ150SEMS-BINO、Ninja320を現在所有しており 過去には

 高橋:MT200、ミューロン250、FC76、FC100N
笠井:アルター(15cmルマック型マクストフカセ)、スーパービノ15倍110mm双眼鏡
ミード:20cmシュミカセ、40cmドブ
宮内:10cm 45度対空双眼鏡
などを使用してきましたが 星像の気持ちよさではダントツで最高だと思います。

対物・EMS・接眼レンズの優秀さもありますが、 EMS-BINOの特徴である

(1)双眼視
(2)90度対空型による観望時の姿勢の安定
(3)眼・脳へのストレスの少なさ
が寄与しているものと思います。

他に32mmアイピース(笠井見掛視界70度)を使って15倍70mmという中型双眼鏡なみの スペックで使用することもあります。 天の川を流すと楽しいですし、 UHCフィルター等を併用すると、普段と違う宇宙を楽しむことができます。

【構造】 (写真2:フードを収納した状態、写真3:スライド機構・フード延長状態)
・写真をご覧いただければ判りますが「極めてコンパクト」です。  重量こそ単体プロント鏡筒の3倍強の11kg(2インチアイピース・5cmファインダー含む)で、横方向にも大きくなっていますが  「よく使う望遠鏡」の美質は失っていません。

・接眼部はプロント標準の2インチです。
・EMS-Lに長めにアイピースを使用しますので、接眼部が目立ちます。
・相対的にEMS-L部分が重いため、鏡筒前方にカウンターウエイトが付いています。
・左右鏡筒の焦点距離がセンチ単位で違っていたようですが、倍率の違いは認識できません。
・鏡筒は数センチ切断しています。
・架台は標準のHF経緯台です。
・スライド機構はリニアブッシュ式で5年使用しましたが全く不具合ありません。
・鏡筒がコンパクトで軽量なため、この構造で不具合を感じたことはありません。
 (鏡筒の重いシュバルツ150SEMS-BINOでは若干不具合を感じる部分がありますが、 現在の製品では改善されています)

【トラブル経験】

 導入初期の頃ですが 観望中に突然、左右の像に(少しずつ)ズレが生じ始めました。 XYチルト機構で修正したのですがズレが止まらないので明らかな異常と判断し 室内の照明を点けて確認すると 「右側の鏡筒バンドが緩み、鏡筒が少し回転しながらずり落ちていた」ことが 判りました。

 鏡筒をセットしなおして、XYチルト機構での修正分を(見当で)元に戻しました。 レーザーコリメーターでのチェックはしていませんので、どこまで原点復帰できたか は多少不安ではあります。
(BINO MAKING Progress Reportの2010年5月24日説明のような状態になっている可能性あり)

最近の製品はXYチルト機構の原点復帰マークがありますので心配ないと思います。 これ以外には特にトラブル経験はありません。

【調整】

 長期間使用していると鏡筒バンドの緩み等で左右のEMSのスケアリングがずれたり 像の倒れが発生することがあります。 星を見ているだけでは、かなりの誤差になっても、意外と気づかないものですが (眼が修正してしまう) ときどき昼間に調整します。

(1)左右の接眼スリーブが平行になっているか? 高さがあっているか?メジャー等をあてて目視でチェックします。

(2)像の倒れの修正  直定規を対物レンズの前に置いて修正しています。(写真 修正前・修正後)
両目で見ると調整中に眼が修正してしまうので、片目で見るか、デジカメで撮影しながら追い込むようにしています。 (BINO MAKING Progress Reportの2009年12月9日説明を参照下さい)

(3)EMSミラーの清掃

 「EMSには保護フィルターが装着されています。星像への影響をほとんど感じないので 観望中も装着したままにしています。(気になる方は観望時に外すことも可能)

 フィルターのおかげでミラーは5年経過後も新品同様です。 それでもどこからか僅かな埃は侵入するのでダスターで飛ばしています。(写真6 ミラー面 フィルターを外して撮影 小さな埃は付着してますが綺麗です)
私はミラー面を無水アルコールで洗浄した経験はありません。 (詳細手順はホームページのEMSミラーのメンテナンス を参照してください)

【遠征】

 病気の制約であまり遠征には行きませんが、Ninja320とともに遠征したことが数回 あります。(自宅から15分程度で着ける直ぐ近くの場所です)

32cmニュートンと7cmでは比較するのが無茶ですが

・星像が美しい(特に視野の均一性) [但し短Fニュートンでもパラコアを使えばコマ収差はほぼ減殺できます]
・淡い星雲などの識別性能が高い
・実視界が広い
・現地に到着して直ぐに使える(温度順応が早い)
ことでプロントBINOにも大きなメリットがあります。

 流石にNinja320の主鏡が温度順応し、パラコアを併用してコマ収差を減殺すると 天体の細部構造の見え味では勝負になりません。 ただ実視界には大きな差がありますし、大口径機が能力を発揮できる気流の夜は限られますので プロントEMS-BINOの存在価値は消えません。

【5年間使用しての感想】

 プロントEMS-BINOのような小口径のBINOは、コスト面でなかなか採用に踏み切るのは 難しいかもしれません(鏡筒自体がシュバルツ150Sよりかなり高価ですし)。 ただ上記のとおり、小型EMS-BINOであるがゆえのメリットは大きく 十分に存在意義はあると感じています。

ナグラーの言う「良く使う望遠鏡」としての良さを維持しつつ EMS-BONOにより「人間が両眼で、楽な姿勢で見るための光学系」としての長所を追加した 本機は天体望遠鏡の一つの到達点だと思います。

加藤 仁
Hitoshi Katoh

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

PRONTO-BINOとSCHWARZ150S-BINOのユーザーでいらっしゃる加藤さんより、 3回目のリポートをいただきました。

 ファーストライト直後の新鮮な感動をリポートいただくのも、もちろん嬉しいのですが、こうして5年間 に渡って愛用されたご感想をいただくのは、また格別の重みがあり、非常に価値あるものです。  体調の管理をされながら、渾身のリポートを作成してくださいました。

 当時の定番だった、リニアブッシュ(リニアベアリング)を使用したスライドマウントは、数年前に卒業した形式ですが、 当時の加工手段の範囲で最大限に知恵を搾った結果のデザインで、懐かしく再会させていただきました。 クランプを緩めると左鏡筒が台座ごと自由にスライドし、好みの位置でクランプするという形式でした。 現行モデルでは、クレイフォード(フリクションドライブ)式により微動送り機構を備えています。

 直定規を利用した像の倒れ調整について、よく理解され、見事に調整しておられます。 当方のサイトでは、手元にあった金属製の定規を置いていますが、加藤さんのように、透明の定規を 使われると、大変見やすいですね。 さすがです。 直定規を水平中心に置くのが難しい 場合は、紙箱の角等を利用した直角アングルを作って水平にしたBINOの筒先に置くと便利かも分かりません。 また、左右の見口より定規の直線性をチェックする際、片眼で交互に(素早く)見る ことも大事なポイントでした。

 ミラーのメンテについて、この場を借りて少しご注意申し上げます。 アルミ増反射コートにつきましては、すでに20年以上の実績があり、当方にある20年以上前のミラーも新品同様の輝きを保っております。 しかし、耐久性を加速実験にて確認したとは言え、増反射銀コートミラーにつきましては、まだ十年、二十年もの経年検証が済んでいません。 従いまして、銀ミラー仕様については、防塵フィルターは付け忘れを防ぐ意味でも、外さずに常時装着してご使用になることをお勧めします。 当方にあります銀ミラーサンプルは、すでに3年を経過して初期の反射率を維持していますが、空調が完備していない、吹きさらしに近い スライドルーフやドーム内での長期保管はお避けいただき、EMSだけは人間の快適生活空間で保管されることをお勧めします。(ただし、ご環境やご都合により、EMSの移動保管が現実的でない場合は、自己責任 にて保管してください。)

 忙しさに紛れて、当方のサイトでは唐突な掲載しか出来ていませんが、リポートの形で加藤さんより、改めて好適な保存版の教材をまとめていただいたようで、大変ありがたく思います。

  加藤さん、これからもお体を大事にされ、時々はこうしてリポートをいただけましたら、大変 ありがたく思います。 この度はまた渾身のリポートをいただき、本当にありがとうございました。

Pinkish Orion Nebular by silvered 20cm-EMS-BINO/ ピンク色のオリオン大星雲 by 20cm-EMS-BINO

Mr.OKAMOTO in Toyama Pref.

      2009年11月14日

【銀ミラーの効果】

 一昨日11時半ころから1時ころ 快晴の空の下、銀コートで武装 した20センチF7屈折EMSツインでM42付近を散策してみました。 EWV32 84度のアイピースからこぼれそうなくらいの星空 (自宅なのでバックは明るいですが)を見ながらふっていくと  おやっ?いつもの見なれたM42と違う、  おおっ!淡く ピンク 色に見える。 眼の錯覚ではないか? 先日月明かりの下で見た 時もやや色がついて見え、もしかしたら とはとは思っていたのですが。 もう一度裸眼で夜空を見上げ、校正をかける。 そして覗く、  やっぱりピンクだ!今までは 明るい緑色やや赤銅色の南の翼 しか確認 できなかったのですが。

 頭、ベールのようなやわらかい北の翼、しっかりとした南の翼、が濃淡 のあるピンク色に発光し トラペジウムの近くは黒く抜け、(ガスを消費した結果なのか輝星の 眩惑なのかさだかではありませんが)、そしてさらに周りはモクモクとした グリーンのガスが取り巻き、一部はやや青みがかってさえ見えます。

 写真は作られた色調であり、本当の姿ではありません。 今見ているそれこそが ”30光年まで近づいた宇宙船からの光景”か、 と思うと感慨深いものがあります。  かつて40センチ反射ツインを作った目的も ”オリオン星雲をカラーで見たい” が目的の一つでした。

 そしておそらく最も早く、両眼視でオリオンカラーを視認できた仲間 の一人になれたことを感謝します。 さらに暗い空に下で検証してみたい と思います。                    とりあえず報告まで

ps

残念ながら燃える木もやっとで、とても馬頭は無理でした クロマコールは片方だけ入れると彩度が上がりました 。両方 ではあまり変化ないような感じです。 もうALミラーには戻れません。(単眼に戻れないのと同じくらい) もう一つ、 言ってみたいですね。 ”もうアクロマートには戻れないなんて”

 最高の贅沢を有難うございました。 でも一人で覗いたのでやっぱり夢ではないか?信じられません 今度フィルターも試してみようと思います。

 もし公開されるのでしたら、もう少し待っていただけませんか。 間違っていてご迷惑をかけてはいけないので、誰かと 見てみないと。 あまりにセンセーショナルなので自分でも 信じられないのです 。夢だったのかも? 当日はカラーの観測像が眼に焼きついて いましたが今は写真のイメージと同化してしまいました。

 今後 干潟星雲や 三裂星雲 それらが実際の色 ピンクや 青が見えることが予想されます。 

      2010年4月18日

【やはり本物でした】

 さて去年メールしました、銀ミラーの色再現性についてですが やはり 間違いないようです。

2月に20センチ屈折ツイン銀ミラー仕様をもって愛知県の元気村に遠征 、 このときはある方はこのようにコメントされました。

( 20cm屈折双眼でのM42を見て) あんなに明瞭に星雲の色を感じたのは初めてとのこと 眼視にはこんな世界もあるのかとびっくりされた方もいましたが、 いや色が着いてるとは言えないという方も。どうも個人差はあるようです。

 そして。なかなか星仲間と観望会を開ける機会がないまま4月中旬 となり、やっとある程度の経験者と合同で観望する機会にめぐまれました http://astrobinobicycle.at.webry.info/201004/article_3.html のとおりですが オリオンはやや傾いていたものの透明度がよく近くに3日月があり、色の校正が 自然にできていた事にも助けられたものと思います。

 見た方の第一声は いやー これ色着いてるやん 。やはりM42は基本 的に 淡いピンクの星雲であることを 認識できるものでありました 3時ころやや透明度が落ちたオメガ星雲、干潟 三裂星雲とも残念ながら 色は感じられませんでした。25センチなら可能かも知れません。

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 去年の双望会は天候に恵まれず、せっかくの20㎝BINO by銀ミラーを 見せていただくことが出来なかったのですが、実はその少し後の11月に、 上記の感動的なメールをいただいておりました。掲載を今日まで延ばした理由 も、上記文章より自明ですが、岡本さんの責任ある慎重なご姿勢がよく表れています。

 この度、岡本さんが満を持して発表してくださいましたが、多重反射実験での銀ミラーの 反射特性がそのまま実証された感じがいたします。長波長域で反射率が落ち込まないことの効果 には私たちの予想を超えるものがあるようです。

 岡本さん、今度は25cmの銀ミラー化が待っていますね。 当方の都合により、今回の銀ミラー蒸着の第3回ロットには 入れられませんでしたが、双望会までには間に合わせたいと思っています。 きっとまた銀ミラー仕様の 25cmED-EMS-BINOが未知の世界を 切り開いてくれることでしょう。

BLANCA115EDT-BINO

 1月の末、115EDT-BINOを受け取ってからずっと天候不順だったため、まったく星を見ることができませんでした。鳥取訪問から4週間近くたった先日、ようやく晴れた夜空にきれいな半月を見つけ、待ちに待ったファーストライトとなりました。 仕事から帰宅すると急いで2階にかけ上がり、自室に置いているBINOをベランダへと移動。月へと照準を合わせたのでした。

人生伴侶のテレスコープを松本式BINOに

 星に興味を持ち始めたのは小6の頃でしょうか。中学時代の星仲間は小型の望遠鏡を使っていましたが、私は藤井旭著「星雲星団ガイド」の中の、双眼鏡でもこれだけ見えるよ、という解説を参考にビクセン7×50の双眼鏡を買ってもらい、以後高校までそれを愛用していました。ところが、大学時代に購入した初望遠鏡のFC-76セットの見え味には、期待が大きかったせいか正直に言って満足できず、次第に星から興味が遠のいていったのでした。

 その後30年たち、目の衰えが気になりだしてから、もう一度宇宙の美しさをこの目で楽しみたいと思うようになりました。まずは手頃なBORG77EDを購入。星に地上に望遠レンズにとマルチに活躍してくれましたが、やはりよく見える望遠鏡が欲しくなり、次の機種の選考に入りました。さまざまな鏡筒や架台、それに双眼装置との組み合わせなども考えましたが、最終的に松本式BINOに決定したのは、始めに星を見る道具として双眼鏡を選んだ経験が強く影響していることは間違いありません。

鏡筒選定

観望場所は基本的に自宅のベランダです。自宅だと部屋からすぐ持ち出せるのは良いのですが、市街地に近いため、よく晴れた日でも3等星がやっとの悪条件です。対象はどうしても月惑星が多くなりそうです。よって選定条件として、収差が少なくシャープで、組み立てた状態で容易に持ち運びでき、価格もリーズナブルなこと、を重視しました。松本さんに10cm前後のEDアポを相談したところ、その頃発売されたBLANCA-115EDTは?、とすすめられ、私も実は気になっていたため、即これに決定することができました。ただし移動距離が長かったならば、より軽量な10cmEDアポか12cmF5を選んでいたのではないでしょうか。

取り扱い

 鳥取まで受け取りに行った際に、松本さんから本当に詳しく説明してもらいました。また、長年の地道な改良のお陰でしょう、全体の構成がシンプルで扱いやすく、昼間に何回か練習を行っていたため、EMSも含めて夜間でも操作に迷うことはありませんでした。

 組み上がったBINOは、3枚玉アポのしっかりした対物セルのために本体重量が17.8kgと、(予想していたとは言え)少し重くなってしまいました。そこで部屋での保管時にはEMSを外した状態にして、ベランダ設置時にアイピースの付いたEMSを取り付けることにしました。また付属のパランスウエイトは、やや重量不足だったため思いきってはずし、その代わり足首用のトレーニングウエイトを巻き付けて調節することにしまた。(写真の赤く見えるのがそれです)。それらの工夫で、移動時の本体重量を15kgまで減らすことができました。

 アイピースは必要最小限の構成にしたかったため、まずEWV-32mmと2倍ショートバローを、そして中高倍率用にイーソス6mmを購入、2インチサイズで揃えました。これらを組み合わせて25倍、44倍、133倍、233倍が得られます。

ファーストライト

 早速ベランダにBINOを設置して、いきなりイーソス6mm133倍で月を入れてみました。視野が広いためにスポットファインダーで十分です。目幅、ピント、EMS調整をすると・・・「これが月なのか!」・・・というのが第一感想です。当日はシンチレーションが悪く、それでもユラユラゆれる気流の向こう側に、これまで見たことのない月が浮かんでいます。次第に双眼視に慣れてくると、細かいクレーターや山脈、谷などが、まさに立体的な風景として目に飛び込んでくるのです。片目とはまったく別物、Google Moonの写真とも違う双眼視だけの「体験」です。当初6mmでは倍率が高すぎたかなと思っていましたが、広い視野いっぱいに色付きのない月面全体を眺めながら、ある一カ所に注意を集中すると驚く程細部まで地表の形態を「感じる」ことができます。1本で中倍率と高倍率を行き来できる、と言えばよいのでしょうか。コントラストも片目で見るよりは、ずっと強く感じます。

 月が沈んだ後気がついたのですが、その夜は2等星までしか見えておらず、どうも薄雲がかかっていたようです。そこでM42は確認程度にして、今度は昔よく見ていたシリウス下のM41を入れてみました。星々は暗めですが、双眼鏡では雲状に見えていた微恒星が無数の光の点として確認できます。さらに驚いたのが星の色です。M41内の比較的明るい星ならば赤や緑の色がはっきりわかります。特に赤がしっかり出ている印象で、星の色の違いを明確に感じることができます。赤色を正確に反射する銀ミラーの効果なのでしょう。星の色の差を認識できる、ということが、こんなに楽しいものとは知りませんでした。

 この日は月を妻や子供達にも見せました。家族にいきなり双眼視は難しいため、その時はEMSを逆はの字に回転させ、2連望遠鏡として使用しました。こんな変則的な使い方ができるのも松本式BINOならではですね。

それから数日後、気流のおだやかな、絶好の夜がやってきました。再び月を…、ゆらぎがないため前回よりはるかにすばらしい眺めです。コペルニクスは、そこから四方八方に広がる「猛烈な」起伏、詳細に見えるクレーターの淵や内部様子が本当に見事で、30分以上同じ所を眺めても全然見飽きません。もっと地形を勉強しなければ!。倍率は、バーローをつけた233倍よりは、133倍の方が月には合っている(少しまぶしいですが)、と私は感じました。何しろ全景と詳細が同時に見られるのですから。

 月明かりの中、次はM42です。トラペジウムを見るのは初めてでしたが、133倍ですぐにそれとわかりました。4つの明るい星のそばに5番目の星が微かに確認できます。事前に写真などで星の位置関係を知っていれば、6番目も見つけられたかもしれません。星像ににじみがないため、当初の予想以上にすっきりと気持ちよく対象を見ることができます。これで夜空の暗い場所で観望したなら、一体どんなふうに見えるのか…、当初の予定になかった欲望がわき起こります。

Life with BINO

 朝目覚めると、真っ先にBINOの姿が目に入ります。使わない時はコンパクトに部屋の隅にたたずみ、いざ星に向けるとすばらしい光景を見せてくれる。完成した115EDT-BINOは、これからの人生に無くてはならない存在になる、そう予感します。それに昔愛用していた双眼鏡が、姿形を変えて戻って来たかのような懐かしさもあるのです。今度の「双眼鏡」がどんなすばらしい世界を見せてくれるのか、これから末永く楽しんでいきたいと思います。松本さん、そして理解ある家族に感謝します。

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

藤原さんより、BLANCA115EDT-BINOの第1号機のリポートをいただきました。
 星見を7X50の双眼鏡からスタートされ、また本来の双眼に戻られた形とのことで、大変光栄に思います。  当1号機は、新たな部分が多く、随分とお待たせしてしまいましたが、寛大にお待ちくださり、また遠路を 車で引き取りにお見えくださいました。

  このサイズ規模のBINOが、鏡筒平行移動か、鏡筒固定で目幅クレイフォード方式かの分岐点ですが、今回は よりシンプルな構造を希望されたため、後者の方法を採用することになりました。 後者の方法は、小規模のBINOの場合、EMSの第1と第2のユニットの間隔が、目幅クレイフォードを挿入するのに十分確保できない場合が多く、毎回苦心するのですが、今回は新たな構造により、さらなるlow-profile化を達成しました。

 HF経緯台も、幅広改造をしない方向で進めました。 ただし、最終的にはどうしてもほんの少し(10mmほど)幅が足りなくなったため、大手術を施すことなく、特殊な形状のスペーサーを作ってうまく対処しました。

 ファーストライトでこのBINOの色の再現性の良さに気付かれたのは、さすがです。製作者である私自身は、実際にBINOで星を見る機会は少ないのですが、屋内の壁に掛けている赤い散光星雲の天体写真を、アルミ、銀、それぞれのミラー(1回反射)で反射させてみると、1回反射の段階ですでに区別できて、非常に興味深いものです。 自分の顔を映してみても歴然ですが、銀とアルミは、健康人と病人くらいの顔色の違いがあります。普段 見慣れている姿見の鏡も、実際の色を再現していないことが分かります。相対的に銀の方が赤味がさして見えるのですが、その 血色が忠実な再現なのであり、普通の鏡の色の方が嘘なのです。

 足首用のウェイトをうまく利用されました。 フードの伸縮も前後のバランス調整に有効ですが、フードを 常に伸ばして使われたい場合は、他の場所で調整しないといけませんね。  

 この度、藤原さんにはファーストライトのご感想をタイムリーにご報告いただき、本当にありがとうございました。 これから気候も良くなりますので、またじっくりと観察された段階での追加リポートをお待ちしております。

TOA130-BINO(Newest Version)

Mr.Takemori in Kanagawa Pref.

 一昨日は 忙しい中 お相手していただきどうもありがとうございました。 (ようやくネットの使える環境に戻ってきました)

昨日(日曜日)は原村の山小屋に到着すると よく晴れていたので 早速 Bino を組み立てて操作のおさらいをしてみました。

 EWVで星を見ると最初から左右の像が一致しており、少しアイピースから 目を離してみても ほぼ一致しているようで、再現性の高さに驚きました。

 月の出る時刻になっていたので、9mmのアイピースで、主に月と二重星 を見ることにしました。γAnd を導入したところ 正に天上の宝石ともい うべき美しさで、これはいままで体験したことのないい感覚です。αGem、γLeo、 それに月面もクリアかつコントラスト、色彩ともすばらしいも ので、銀ミラー効果か、鏡2枚が介在している感じは全くありません でした。

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 7日に当方でTOA130-BINOをお引渡しした竹森様より、神速の第一報をいただきました、 まだ正式なリポートではないということでしたが、お願いして、いただいたメールの該当部分をその まま掲載させていただきました。 関東からこちらまで引き取りに見えるたのは、大変な労力だったかと思いますが、 お越しくださる方は、その努力に見合う収穫を持ってお帰りになると確信しています。  鏡筒単体着脱式のBINOを、最初から完璧に使いこなしてくださって、大変嬉しく思います。 この他、水平方向のバックラッシュが認められるとのご指摘をいただきましたので、急遽、ベアリングを 手配させていただいています。TOA鏡筒は、やはりトータルに組み立てた重量は半端でないため、水平回転軸にかかるアキシアル加重も 半端でなく、鏡筒径もピラー径も太く、天頂まで鏡筒を向けるために、重心のシフト量を大きくしたのが原因のようですが、改善の要素が 見付かる良いきっかけになりました。 (目下、新型中軸架台は一台ごとに改善を重ねております。) 架台の改善が終わり、本格的なファーストライトをされましたら、またぜひリポートをお願いします。  この度は、タイムリーなご報告をありがとうございました。

12cmF5-BINO

 さて、去る7月11日に、12cmF5BINOを受け取りにお店にお邪魔して以来、天候不順と月明かり のせいで、なかなかBINOをまともに振り回せず悶々としていました。 が、ようやく高気圧の張り出し域に スッポリと覆われて、先週8月15日に、自宅から比較的アクセスしやすい南房総の山中へ遠征してきま した。

 本当に待ちに待った日です。目的地への道中、お盆中でもあり帰省や行楽の渋滞も覚悟していまし たが、以外やスムースに流れました。夜行性の趣味にもメリットはあるようです。海ほたる方面の東京圏 の大光害域を背に南下してゆくと、右手にさそりのS字が傾きかけています。急がねば。しかし、後部シ ートには主役のBINOを寝かせているので、レーサー気分でつづら折れの山道を駆け上がるわけにはいきま せん。ここは、はやる気持ちを抑えて、粛々と歩を進めます。

 開放した車窓からは昼間の暑さは影を潜め、どこはかとなく秋の気配が忍び寄ります。到着するやいなや車から飛び出し空を見上げると、満天の星空 を天の川がサラサラと流れています。思わずこの地の山ノ神に手を合わせてお礼をつぶやきました。この 星見場は稜線づたいを通る林道の待避所的な平場で、昨年より時折足を運びます。
 首都圏の光害の影響はかなりありますが、 朝、晴れると浦賀水道、三浦半島越しに秀峰富士が拝め、地理的な開発の困難さが、 周囲の自然を色濃く残しています。また、江戸時代の南総里美八犬伝のゆかりの地でもあります。さらに 安房という名は、神武天皇の御世に四国阿波から派生したもので、古代史を紐解いてゆくと、宇宙の成り立 ちまで到るそうです。かの地、鳥取で産声をあげたBINOに、星空を案内してもらうのにふさわしい、氣の 良い土地です。

 わくわくしながらも、あっけなくBINOを組上げ、光軸と眼幅を微調整。鼻歌交じりで誰で もいたって簡単。眼幅調整のクレイフォードのつまみをゆっくりと廻し、左右の視野円が合致したその時、 単眼時代の観望スタイルは粉々に砕け散りました。
 もちろん、双眼鏡での星空散歩は好きでした。何とい いましょうか、倍率による迫力、視野全体の透明感、迫力は50ccの原付スクーターとナナハンぐらいの 違いがあります。透明感は、車を運転中、雨がフロントガラスを濡らし始めたときと、ワイパーでさっと 拭い去った直後ぐらいの違いがあります。一般的な7倍50mmなどのスペックを持つ双眼鏡でさえこの 差ですから、単眼の望遠鏡ではいわずもがなです。誇大広告と公正取引委員会から怒られそうですが、数字 には現われない体感のインパクトに偽りはありません。こうなると、空の何処に眼を向けても、大満足 です。

 かつて、マクルーハンという学者が 「Media is message] なる言葉をメディア界に投げかけまし た。これは、個々人が情報をどのように解釈するかは、その内容よりも伝えるメディアそのものに大きく 影響を受ける。というものだったと記憶します。BINOにはメディア進化の可能性が大いにありますよ。 今、林の輪郭にアンタレスとM4が沈みかけています。急ぎ向けてみます。ターゲットを導入する際の操作 性、安定感、全体のバランス、どれも申し分なしです。長く付き合う道具とは、かくありたいものです。

 WS30mm 20倍 4゜強、M4が中心近くまで星々に分離されています。妖光を放つアンタレスと同一視野で の光景は絶品です。ここから、銀河に沿ってゆっくりと散策してゆきましょう。ファインダーは要りま せん。ただ、行きたいほうへ向ければよいのです。大抵、一つや二つ小さい散開星団や散光星雲が視野に ちりばめられています。背景には微光星の海原が拡がります。時折、有名どころの星雲星団に立ち寄る 際、視野の端で捉えてから中心へといざなうこのひと時がたまらずスリリングです。静止像は勿論の事、 視線を流している最中の動きのある光景も魅力です。このような感覚、楽しみは単眼では気づきません でした。旅人が旅のプロセスにこそ重きを置くような感覚です。

 夢中で操作ハンドルを握り締め ていると、あっという間に時間は過ぎ、天頂付近を飛翔する白鳥付近が視野に入ってきました。 この位置でもBINOの見易さにかげりは一切ありません。夥しい数の星の海をかきわけて、網状レムナント のある辺りへと進行します。もう、何も言えましぇん。一度、他人の30cmドブソニアンにOⅢ フィルターを通してハの字の東側のアップを見せていただき、いたく感動したこともありました。
 今、眼前に広がる漆黒の背景には、ハの字の両方がその独特な形状と濃淡をあらわに鎮座しています。 ノーフィルターです。何故か深呼吸をせずにはいられません。 ...。夜も更け東の空には雲越しに 下弦の月が山肌を照らし始めています。足早に、ケフェウス、カシオペア、ペルセウスと天の川を辿ること にします。低空の層雲が空を覆ってきました。足元ではコオロギが遠慮気味に独唱しています。残念ながら お開きのようです。

 そうそう、ボーグの60EDで夏の散光星雲を撮る予定でしたが、それどころではあり ませんでした。
 松本さん、この上ない素敵な道具をこの世に生み出していただき、ありがとうございました。 良い道具には、優れたデザインや高い機能性、利便性などの土台に、製作者の高次の志が脈々と息づい ています。利益最優先の大量生産により日常生活に流布する、さまざまな工業製品や農産物等々にもこう した高い志の復権が欲しいものです。
 今後もご健勝でわれわれ星見人を刺激し続けてください。私も 微力ながら、一人でも多くの人にこのBINOで宇宙の美しさを紹介できたらと思い、ペンを 置きます。

              サルスベリの紅白の花が満開の頃      玉川

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 製作者冥利に尽きるリポートをいただきました。今までにいただいている数々の リポートもそれぞれに個性があって素晴らしいものばかりですが、久しぶりに感性にストレート に浸透するリポートに出会った気がいたします。

 単体の屈折式天体望遠鏡のランク表記に、(単レンズはもうあり得ませんね)アクロマート、 セミアポクロマート、2枚玉アポクロマート、3枚玉アポクロマートと、かなりのバリエーション があるわけですが、EMS-BINOの真価は、そういうランクの比較の次元の外にあるということを、 玉川さんが非常に分かりやすく説明してくださいました。

 もちろん、素材鏡筒を選べば、さらに素晴らしいことは事実ですが、決定的な部分はEMSが持つ 基本原理のシンプルさによる勝利に他ならないという事実が、昨今の鏡筒の高級指向の陰でかすんでしま うことに少々の危機感を持っておりましたので、この度は非常に良いタイミングで、私たちが原点を 見失わないように一喝いただいた気がするわけです。

 玉川さんの初対面の印象は、”天文マニア”のステレオタイプからはほど遠い、スポーツマン 的な立派な体躯の持ち主だったことですが、もっと忘れられないのが、『合理的な命や道具の裏には シンプルな数学の定理が隠されている。』という信念を深く共有する方だったことです。
 私の拙文である、『人類の至宝』もよくお読みくださっていて、玉川さんはその日、大変興味深い、 フィボナッチ数列(曲線)の話をしてくださり、一緒に大いに盛り上がりました。 5億年を生き抜いたオウム貝の巻き線等がこの曲線と合致するのだそうで、長年繁栄して来た合理的 な命や使い道具には、合理的でシンプルな数学の定理が隠されているということを再確認した思いでした。 EMSの種明かし

 ただ、数年前、箱型のEMS-Sユーザーの方が同新型を追加購入された際( その方はネットをしない方で新型の画像を見ていなかった)、「今度はサザエみないな奇妙な形だ・・・」 と不評だったことも印象に残っています。^^;この、サザエの形^^;を具現するために数百万円の投資をし た意義は、この方には理解できなかったわけです。
 ですから尚更、信念を心底共有できる方との出会いは貴重であり、何物にも替え難いわけです。

 蛇足を重ねて、せっかくの素晴らしいリポートを spoil してはなりませんので、ここらで締めくくります。

 また、追加リポートを楽しみにしております。

TMB130-BINO

 マツモトさんに製作を依頼したTMB130-Bino(シグニチャーシリーズ口径130mm/F7アポクロマート 鏡筒)が 7月に完成し、やっと星空を見る機会に恵まれました。 そこで、導入の経緯と観望しての印象について、報告させていただきます。

1 導入の経緯

 仲間が持っていたSky90-BINOで見せてもらったのが、Binoとの最初の出会いです。そのときに 見せてもらったM31が、はるか遠くにあるはずなのに、手前に浮き上がっているように見え、その不 思議な光景がずっと頭から離れませんでした。そこで、どうしてもBinoが欲しくなり4年前にマツ モトさんから12cmBinoを購入しました。

 Binoで星空を見ていると、時を忘れてしまいます。 仲間に見せると、だれもがじっと見入ってしまいます。そして、Binoを見て感動した仲間が、次々 とBinoを購入しました。FS102・CAPRI-102ED・ZS110と気がつくと購入した人はみなアポ鏡筒でし た。低倍率で見る限り12cmBinoで見る星空は決して10cmクラスのアポBinoに負けていません。 それどころか、淡い星雲は12cmの方がよく見えました。しかし、アポBinoで見る星像はシャープで すし、月や惑星の周りには全く色がつきません。もう少し大きい口径のアポで見たら、どんなにすばら しいかと思うとアポBinoが欲しくなり、その気持ちを抑えることができなくなってしまいました。

 アポ鏡筒をBinoにするために、まず考えたことは口径と重さでした。口径は12cmよりも大きく、 重さは21kgを超えないことが条件でした。TOA130Sを所有しておりましたので、これでBinoを作って もらおうかとも思いましたが、片方だけで10.5kgもあり、完成すれば21kgを超えることが予想されます。 また、150LD-Binoを使っておられる方々のレポートを読ませてもらうと、とても大きくて私には無理だ と思いました。TOAをBinoにすることはあきらめました。

 そんなある日、TMBシグニチャーシリーズ口径130mm/F7アポクロマート鏡筒が中古で出ているのを見て、 大きさといい、重さといい、Binoにするにはもってこいだと思い、すぐに購入しました。しかし、 もう一本同じものがなければBinoはできません。そこで、私が所有している機材をすべて手放して 新品をもう一本買うことにしました。当然、TOA130も手放すつもりでしたが、仲間から思い留まるよう に言われ、この鏡筒だけは手元に置いておくことにしました。30cmドブも28cmシュミカセも惜しいとは 思いましたが、両目で見る宇宙の魅力には勝てませんでした。

 さて、国際光器さんにもう一本注文してから3か月が経ち、やっと2本揃いました。そして、最初の TMBを購入してから待つこと4ヶ月。やっと待望のTMB13cmBinoが手に入りました。

2 観望の印象  Binoの取り扱いは慣れているつもりでも、今回のBinoは12cmのときとはその構造が違うた め、マツモトさんに直接お会いして、調整の仕方を教えていただくことにしました。

  マツモトさんには丁寧で分かりやすく説明していただき、そのおかげでファーストライトの折は何 も心配することなく、扱うことができました。ただ、どのBinoでもそうですが、アイピースを交換 するたびに、EMS調整ノブで光軸を補正しなくてはいけないのがちょっと面倒ではあります。

 今年の夏は、天候に恵まれず、せっかく出来上がったのに覗く機会が無くてイライラしていまし た。先月の終わりに一か八かでいつも行くG村へ行ってみました。
 すると、上弦の月が雲間から見えてい ました。逸る心を抑えつつ、筒を月に向けました。月の周りには全く色がついていません。クレーター のエッジも立っています。ときどき、月の前を雲が流れていくのですが、これがまたすばらしい眺めで した。明らかに12cmBinoとは違います。TOAに双眼装置を付けて見たのとも違います。明るさと いい、シャープさといい“アポクロマート双眼望遠鏡”で見る月はすばらしかったです。
 次に、上って たばかりの木星を見てみました。笠井のバローレンズ(2インチマルチショートバロー2X;マツモト短 縮改造1.75×)を取り付けイーソス8mmで約200倍で見ました。12cmとは1cmしか口径が違わな のに、とても眩しいのには驚きました。そして、模様が濃いのにも感動しました。色はニュートン反 射(15cmF9・鏡は足立製で38年前に自作)で見たのと同じで、とても綺麗でした。ピントを合 わせるときは振動がありますが、それもすぐに収まり、見かけ視界100度の中でじっくりと見ること ができました。これなら、赤道儀でなくても十分観望することができます。その他に雲間からM13を 見ました。これも12cmよりもはっきりと見ることができ、端まで星が分離して見えました。

 その後もG村へ持っては行くのですが、いつも曇りでなかなか見られませんでした。しかし、16日の 夜は運よく一時間程度見ることができました。 我慢強く晴れるのを待っておりますと、願いが叶ったの か、東の空から晴れ始めてきました。さっそく、M31、M33、hχ、M15といった秋のメジャーどころを観 しました。M31は何度見てもすばらしい眺めです。腕がどこまで伸びているのか、残念ながらコンディシ ョンが悪く確認はできませんでしたが、視野いっぱいに広がるその姿は圧巻です。また、hχも息を呑む 美しさでしばし見とれてしまいました。
 そのうちに、雲がとれはじめ夏の星も見えてきましたので、 M13、M57、M27とたてつづけに見ることができました。ただ、すぐにまた雲が出てきて、しばし休戦。 再び、雲がきれてきたところでもう一度、秋の空を流していると、今度は濃い霧が立ち込めてきて、 全く辺りが見えなくなってしまいました。さすがに、今度はいつ晴れるか分からないので、帰宅する ことになりました。まだ消化不良ですが、とりあえずご報告させていただきました。

 最後に、今、国際光器さんの松本さんにビクセンのジュラポール三脚(ニューアトラクス赤道儀 2000PC用)にHF経緯台を取り付けるアダプターを作っていただいております。これが完成す ると、もっと安定して見ることができるのではないかと期待しております。

                    星好き先生

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

”星好き先生”は、今回も奥さまとご一緒に、出来上がったBINOとの対面に わざわざ遠路をお越しくださいました。

 前回、12cmF5-BINOにご対面いただいてから早4年とは、月日の早さに驚かされます。 前回は奥さまが、闘病中だった犬のクーに優しく声をかけてくださったのが印象に残っています。 星好き先生には、12cmF5-BINOをしっかりと稼動させてくださり、多くの方にEMS-BINO入門の きっかけを与えていただき、さらにまたこの度、ハイエンドのBINOを作らせていただいたことに、深く 感謝しております。

 このTMB(Signature)130と、すでに販売中止になっている150LD鏡筒辺りが、1体構造のBINO の重量的な限界ラインに位置するようです。 星好き先生より今回のBINO製作の依頼をお受けした 時点では、大型の中軸式の架台のアイデアがまだ煮詰まっておらず、無難なHFフォーク式でお作りしました。

 リポート本文中で、「木星の色が過去に見たニュートン反射の色・・・」と 肯定的にご評価くださり、大変光栄です。
 それは一つには、色収差が非常に少ないTMB鏡筒と プリズムを通さないEMSとのコラボレーションの結果でもあるのですが、望遠鏡やEMSを通して 見える”色”について、最近衝撃的な体験をし、EMSのさらなる向上に着手しているところでございます。