Optical Common sense /Spherical Aberration/ 光学常識 第3段-球面収差の体感

上の図は、界面カーブも屈折率も、見た通りの実際のシミュレーションです。
代数計算は全くやっておらず、光線追跡ソフトも使っていません。
 若かった頃、実際に紙の上で、コンパスと三角定規を使ってシミュレートしていたのと全く同じ手法で、ただ、作図ソフトを使っただけです。(屈折光線の作図方法のヒントを2/17の記事に投稿しています。)
 図の F が近軸、つまりPnが極限まで光軸に接近した時の焦点の極限値ですね。前回までの近軸追跡は、突き詰めると、このFを求めるのが目的でした。 実際の光学系の設計や性能評価には、高さのある光線の実際の経路を屈折の法則を適用しながら、克明に辿る必要があります。
 今回は、1面のみのシミュレーションですが、単レンズでも2面、2枚玉なら4面あるわけです。
凸球面では、P点が高くなるほど、焦点位置が手前に来るわけです。
 凹球面はそれを打ち消しますが、無作為に組み合わせても、パワーも打ち消してしまいかねません。同じパワーでも、エレメントのレンズの前後面のカーブの選び方(BENDING)でこの球面収差の量が変化することが分かっていて、凸レンズエレメントの球面収差を小さくして、凹レンズエレメントの球面収差を大きくすれば、合算した合成度数に+凸の要素を残しながら球面収差をキャンセルできるわけです。
 Pnの座標は、二次曲線と直線の交点を求める課題なので、高校生の時に散々経験されているはずですし、また屈折光線のベクトルも、スネルの法則を忠実に適用すれば、高校生程度の数学で算出できます。無料の良いソフトが入手できる昨今ではありますが、近軸と簡単な光路追跡くらいまでは、マニュアルで辿ってみるのも、光学を理解する上で有効だと思うわけです。

オマケで、収差曲線を追加しました。
 図から、収差曲線の意味を直感的にご理解いただけると思います。



 

EMS-UMA SET for the US completed !


*「防塵フィルターは付属していますか?」というご質問が意外に多いので、敢えて写真でお見せします。
 この写真に写っている物は、全て標準装備です。
(EMS-USを中止して以来、全てのEMSシリーズに保護フィルターはセットしています。)

Optical Common sense /Take a break/ 光学常識 第3段-ちょっと休憩 / 計算のコツ

 今は電卓どころか、良い計算アプリもあり、エクセルを利用するも良し、なんですが、知っておいて損はない計算のコツっていうのもありますね。
501 × 499 = ? 暗算に長けている人、珠算に長けている人は瞬時に解かれると思うけど、一般の人は、瞬時に暗算できる方は少ないと思う。
 でも、昔習ったはずの2項の積の公式を思い出せば、簡単だと分かります。
501 × 499 = (500+1)(500-1) = 500^2 -1 = 249999  となります。
(a + b)(a – b) = a^2 – b^2
とか、(a + b)^2 = a^2 + 2ab + b^2、とか、
学生時代に散々やられたのではないですか?

 上に、先日の課題のシステムマトリックスを表示していますが、その行列式を計算するに当たって、
まず、0.9899 x 0.9899 がありますね。
 これも、0.9899 = 0.99 – 0.0001 と置くと計算が楽になります。
0.9899^2 = (0.99 – 0.0001)^2
={ (10^-2) (99-0.01) }^2
=(10^-4) (99-0.01)^2
=(10^-4) (99^2 -2×99×0.01 +0.0001)
≒ (10^-4)(9801 – 1.98) (末尾の0.0001は切り捨て)
=(10^-4)(9799.02)
= 0.979902
*(99^2 = 9801 は、暗記しておきましょう。)


Optical Common sense /Pythagorean theorem/ 光学常識 第3段-ピタゴラスの定理

この定理も、幾何光学ではよく利用するので、空気のように身に付いていないと、躓いてしまう。

1. 大きい正方形の面積=(a + b)^2 = a^2 + 2ab + b^2
2.  小さい正方形(黄色)の面積= c^2
3. 水色の三角形×4の面積の総和 =(ab/2 )×4 = 2ab

(1) の面積(大きい正方形)から (3) の面積(水色)を引いたのが、小さい正方形(黄色)の面積だから、
  (1) – (3) = (2)
つまり、(a^2 + 2ab + b^2) – 2ab = a2 + b2 = c2

このことから、幾何光学で極めて重要な定理である、
               sin2 θ + cos2 θ = 1 も導かれる。

( 蛇足ながら、c=1 のとき、a = sin θ , b = cos θ



     
   

Optical Common sense Quiz-3/ 光学常識クイズ 第3段-算術の超基礎

 なぜ、皆さん無反応なのだろう?と、知人(私より高学歴)に目の前で行列の計算(システムマトリックス)を手ほどきして、実際に紙の上でやってもらった。すると、案の定、数学以前の算術の段階で曖昧なことが分かった。
 実は、この仕事を30年以上やって来て、おや?と思うことが多かった。
  √(ルート)とか、sin(サイン)、cos(コサイン)が出ただけで、アレルギー反応を示して思考停止してしまう方があまりにも多すぎる。 皆さん、私よりも受験の関門を多くくぐって来た方ばかりなのに。
 ハイテク機器を使いこなしている現代人の病巣は深いな、と痛感する。

 こりゃあ、本当に 1 + 1 から始める必要がある。

1 + 1 = 2 ----①

両辺から1を引くと、

1 + 1 -1 = 2-1

整理して、1 = 1

①の左辺について、+1を”右辺に移項すると符合が変わる”と約束すると、
より効率的に計算ができる。

1 = 2-1 = 1

2 – 3 = -1 —-②

これも、2 + (-3) = -1 と考え、
  -3を右辺に移項する。
    2 = -1 + 3 = 2
例題:
2 + x = -1
x = -1-2 = -3

* (-1) × (-1) = 1 になるのはなぜ??
1 + (-1) = 0
の両辺に(-1) を掛けてみる。
(-1)×1+(-1)×(-1) = 0
 -1 + (-1)×(-1) = 0

∴ (-1)×(-1) = 1

掛け算

2 × 3 = 6
2を3回足す、(2+2+2=6) から6になる。
0.25 × 0.25 = 0.0625
  掛けたのに、小さくなったぞ!!
   左辺を (25/100)×(25/100) と書き直したら、納得いただけるかな?
あるいは、1/4 × 1/4 =1/16 (1÷16 =0.0625)

(私は数学者じゃないので、厳密な証明になっているかどうかは分からないけど、
  一応、納得いただけたのではないでしょうか?)

Optical Common sense Quiz-2-4-1-answer / 光学常識クイズ 第二段-4-1 解答と解説-2

 意図的にスルーされている気もしますが、ここで終わるわけには行かないのです。
では、求めたシステムマトリックス(図中に記載 ↑)で何が分かるかについてご説明します。
 まず、右上の成分 0.9999 から。合成パワー Φ(度数D)=0.9999D なので、
焦点距離=1.0001m (1000.1mm) ( f = 1/Φ )
 エレメントの度数に対して、この程度のレンズ間隔だと、合成度数に関しては、ほぼ密着と考えて単純に3枚のレンズの度数を合計したのと、ほとんど変わらないことが分かりますね。
L1 から、+1-1+1=+1
 次に、主点位置を見てみましょう。
 以前にもご説明したように、システムマトリックス
B A
C D
  の物側主点 E=(B-1)/A 、像側主点 F=(D-1)/A により、

E = (0.9899 – 1)/0.9999 = – 0.01010101 = F となります。
 ( – ) が付いているのは、レンズ面よりも主点が中側にあることを意味します。
 ミリで言うと、約10mmレンズ系内に入った所なので、ほぼレンズ系の中央に、物側、像側の主点が位置していることになります。L2の凹レンズの中心ですね。

 では、次に、中央の凹レンズ L2 を除去したレンズ系のシステムマトリックス(図中 ↓ に示しました。)を見てみましょう。(各自で行列式を立てて計算してみてくださいね。)

こちらの物側主点 E 、像側主点 F は、
E = (0.98 – 1)/1.98 = – 0.01010101 = F
 となり、何と、前問と全く同じ数値が出るではないですか!
 このように、完全シンメトリックな3枚玉の中央のレンズを除去しても、主点の位置は変わりません。
 合成度数=1.98Dで、+1.0Dのレンズを2枚、20mm開けて配置したために、密着時の+2.0Dよりも度数がわずかに弱まりましたね。焦点距離では約 505mm。5mmほど長くなりました。
 このように、システムマトリックスを見ると、その光学系の顔が見えてくる。
 面白くないですか??

次に、元の3枚玉のシステムに、左から光軸に平行で、高さ h=1 の光線を投入してみましょう。

計算の約束上、左から投入する光線の行列は、システムマトリックスの右側に配置することになります。
α=0 で、h=1 の入射光線です。
 それを計算すると、α’ = 0.9999 , h’ = 0.9899 となります。
 これが何を意味するかと言うと、
L1面に高さ h=1 で投入された光線が、L3面上の高さh’ =0.9899の点から、傾斜角α’ = 0.9999の角度で射出するということです。
最終面L3とその結像点(焦点)までの距離 s’ =h’/α’ だから、
     s’ = 0.9899/0.9999 = 0.989999 (m)  となるわけです。
  さきほど求めた焦点距離より10mmほど短いですが、これは、焦点距離ではなく、像側の頂点距離で、焦点からL3面までの距離です。
これに、像側主点までの距離を加えたのが焦点距離ですから、今までの計算結果と合致しますね。

(*投入する光線の h の初期値には制限はありません。途中で尺度を変えない限り、x 軸の尺度と統一する必要はありません。(理由は前の講座を辿っていただくと見つかります。))

The skew ray in the EMS/ EMS内の空間傾斜の光路

EMSの横シフト量と光路長の関係がよく分かるように可視化しました。
 空間のことについて、2次元で考えていても埒が明きません。
 X-Y-Z 座標で考えましょう。
 OはEMSの第1反射点で、座標軸の原点とします。
PはEMSの第2反射点です。
Pの座標は、( 1/√2, 1 ,1/√2 )となるので、
 OP= √ ( 1/2 + 1 + 1/2) = √2 になります。
 
 つまり、横シフト量を1単位増やすと、光路長は√2増えるということになります。
  逆に言うと、OPの実長の目幅方向への射影=OP/√2 ということです。

 ついでに、
OP→とX軸の実角度 θ を求めてみましょう。
OP→ (1/√2, 1 ,1/√2) と X軸方向の単位ベクトル ( 1, 0, 0 ) との
内積=(1/√2)・1 + 1・0 +(1/√2)・0 =1/√2
2つのベクトルの絶対値の積=√2
cos θ =(1/√2)/√2 = 1/2
  より、 θ =60° と分かります。

EMS-UMA SET in the making

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Optical Common sense Quiz-2-4-1-answer / 光学常識クイズ 第二段-4-1 解答と解説

解答をお示ししました。
今回は、行列式がちゃんと並べられたら合格とします。(40点)
 屈折マトリックス、移行マトリックスについては、繰り返し講座でご説明して来ましたし、ヒントにも指針を書いていましたので、問題ないと思います。
 行列の掛け算については、忘れた方は、ネットで検索していただけたはずです。価値さえ分かれば、「調べてみよう!」というモチベーションも上がったはずですが、そこにすら至る方が少ないことを見ると、やはり当方の説明の仕方にも問題があったのかも知れませんね。

 行列は、一般の数のようには、交換法則が成り立たない、” A・B ≠ B・A “と申し上げましたが、移行マトリックス × 屈折マトリックスについては、面白い特徴が見られ、計算の省力を行うことが出来ます。
 中央の凹レンズ(L2)を挟んで、左右それぞれ2組ずつ(①と②)の、移行マトリックスと屈折マトリックスの順番が入れ替わっていますが、計算結果は、左上と右下の成分が入れ替わっているだけで、他の成分は全く同じです。これを事前に知っていれば、計算を一つ省くことが出来ます。(交換法則は成り立たないが、結合法則は成り立つ)
 計算結果(システムマトリックス)の行列について、右上の成分が常にシステムのパワー(度数/ 1/f)になることは、繰り返しご説明して来ました。
 また、昨日のヒントでもご指摘しましたが、左上と右下の成分の数値が全く同じことにご注目ください。 これは、完全シンメトリックな光学系の特徴で、主点の位置も左右対称になっていることを示しています。

 それから、行列式の値=1になっているので、ぜひ各自でお確かめください。
0.9899 × 0.9899 ー 0.9999 x ( – 0.0201) = ?

  この性質は特に重要で、興味をお持ちいただく突破口になることを願っています。


Optical Common sense Quiz-4 / 光学常識クイズ 第二段-4/ Exercise-1/練習問題-1

Question: Find the System-Matrix of L1 to L3.
t1=t2= 0.01m(10mm); Thickness of the lenses can be regarded as zero.

A = ?
B = ?
C = ?
D = ?

Find up to 4 digits after the decimal point.

問: L1 → L3 のシステムマトリックスを求めよ。
A = ?
B = ?
C = ?
D = ?

(小数点以下、4桁まで求めよ。)

 本来なら、単にシステムマトリックスを求めるのではなく、それを読み解いて、主点位置等を求めていただきたかったのですが、今回は、そこまでは求めません。(明日解説します。)

ヒント:L1 の屈折マトリックス → t1の移行マトリックス → L2 の屈折マトリックス → t2の移行マトリックス → L3 の屈折マトリックス と、右→左に行列を重ねて置き、一番右の行列に順に左隣の行列を掛けて行きます。(レンズの並びと行列の並びは逆になります。)
(結合法則は成り立ちますが、交換法則は成り立たないのでご注意ください)
 中央の凹レンズは – 1.0D(焦点距離=-1m)、両端の凸レンズは +1.0D(焦点距離=+1m)、レンズ間隔は 0.01m(10mm) とします。 今回はレンズの厚み=0 とします。

(各面を等価な6枚の薄レンズとみなし、6枚の薄レンズと5つの換算面間隔を指定すれば、より実体に則した追跡が出来ますが、今回は練習-1なので、簡単にしました。)
(前回までのご説明が理解できなかった方も、理由は分からなくても良いので、今までご説明した手法を実際に試してみてください。何だか、役に立ちそうだ、というところまでご理解いただければ幸いです。)