

Askar120-BINOで成功を納めた操作ハンドルですが、Askar-140では、ハンドルをセットしたまま専用ケースに収納できないことが分かりました。
収納時に縮退できるハンドルを考えないといけません。
(Askar120の場合は、鏡筒延長筒(10cm)が着脱できる構造になっており、延長筒を撤去したことで、開きスペースにハンドルもEMSも収納できました。Askar140は、延長管ではなく、収納管でしたので、収納ケースに余分なスペースは確保できませんでした。)
Innovation of Astronomical Telescope
正立ミラーシステム(EMS)を開発した松本龍郎のサイト。 たった2回の反射で天体望遠鏡の像を正立像にします。
Tatsuro Matsumoto; Inventor of the EMS, Erecting Mirror System. EMS offers non reversed upright image with no additional undesirable abberations.
日英併記としましたのは、海外向けの他、国内の方にも、より多い情報量を効率良くお届けしたい(共有したい)からです。
両者は必ずしも同一内容ではございません。英語の方がよりストレートに表現できる場合もありますし、両言語で内容を補完し合っていることもございます。
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今回は、ロスマンディ・アリガタ規格のため、VIXEN規格のようにアリミゾ爪だけを中軸架台にセットして間隔を節約する芸当は使えません。一方で、ロスマンディ規格は爪が浅く(全厚も薄い)、市販のアリミゾユニットがそのまま使用できるメリットは絶大です。トータル厚=111mm(鏡筒が150Φなので、中心間隔D=261mm)は、最大限努力した結果です。
VIXENアリガタ仕様の通用の中軸架台は、把握センター自体を垂直回転軸から10mm下げていますが、今回の鏡筒(及びアリガタ)事情から、把握センターは全くシフトさせず、代わりに、バンドのアリガタへの固定位置を6mm下にずらしました。90度対空型の双眼望遠鏡では、こうした重心位置の配慮が極めて重要です。今回は重心のシフト量を6mmに抑えた理由は、天頂時のパーツの干渉回避もありますが、鏡筒質量が大きいため、より小さいシフト量で、90度対空システムにセットするアイピースやアクセサリーのモーメント・キャンセルが可能と判断したためです。
中軸架台の成功の理由の一つに、垂直回転軸の水平回転軸に対する重心シフトを最小限(70mm程度)にしていることがあります。単体鏡筒の発想ですと、天頂に向かないシフト量ですが、BINOなるが故の好都合があり、左右鏡筒の谷間に水平回転部がすっぽりと納まるわけです。(天頂時)
鏡筒をセットしてみました。
475B三脚の純正の状態は、開き止めステーのクリック穴が2個で、上の穴は閉じ過ぎで、下の穴は開き過ぎ、今まで(MK105-BINO等)は、敢えてクリック穴を避けて、穴の中間点くらいで固定していましたが、今回のBINOでは、スリップして開脚してしまう傾向が見えたため、急遽、中間点に新たなクリック穴を施しました。
薄いアルミパイプなので、手持ちの携帯ドリルで楽に開きます。ただ、最初は2mm位のドリルで開けてから、6.5Φドリルに代えて仕上げ、さらにバリ取りツールで仕上げます。軽い搭載物には不要ですが、出来たらこの追加穴は開けておいた方が無難のようですね。
タイトルを読んで、小躍りして喜んでいる方も少なくないのでは? と思う。
「45度対空のEMSを作ってください!」という要望が、ある程度光学をかじった方(古参マニアや業者さん)から入ることがあるからです。
理論的には、確かに可能なんですが、転向角度の小さいEMSは、ミラー面への入射角がさらに大きくなることを意味し、現実的ではないのです。
アミチプリズム等のご経験から、主光線の転向状態を把握する際は、ダハ面を通常の平面に置き換えて判断できることをご存じの方も多いかと思います。上図はその作図で、OZを通常の平面と考えて作図することが可能です。図の2枚直角鏡の原点に入射する光線は、平面鏡の場合と同じ経路を共有しますが、あくまで2回反射のシステムだということを忘れてはいけません。
図の2例とも、第1反射点に於ける法線の単位ベクトルは、y軸方向の単位ベクトル(0,1,0)もしくはx軸方向の単位ベクトル(1,0,0)、となるので、入射光線(の逆方向の)単位ベクトルとその法線ベクトルの内積から入射角を求めると、疑似入射角45°の通常のEMSの場合の真の入射角=60°、疑似入射角60°のEMSの場合の真の入射角=69.3°となります。
このように、対空角度を90°から小さくするほどに、急激に要求ミラーが長くなるということです。
もっとも、本例の対空角度=60度くらいまでなら、実現不可能とまでは言えず、イメージサークルさえ少し妥協すれば作れないこともありません。 ただ、45度対空ともなれば、あまりに犠牲が大きくなると言わざるを得ません。
以上、理論的な話をしましたが、そもそも、そうした犠牲を払ってまで、45度や60度のEMSを作る必要があるのか?ということです。
大方のそうした要求は、誤解とバイアスの結果だからです。
90度対空に適した架台高というものがあるのです。よく、「低空は45度対空や直視が圧倒的に楽に見える!」と言われる方があるが、それは、90度対空のシステムに、45度対空、もしくは直視に適合した架台や三脚をそのまま使用しているからだと断言できます。
皆さん、高学歴の方ばかりで、机の上でしっかり勉強して来られた方ばかりと思いますが、デスクトップ上でノートをまとめたり、読書するのに、苦痛を感じていたのでしょうか?
その姿勢こそ、まさに90度対空型の光学系で地平方向を見る姿勢です。
そうです。90度対空のEMSで低空が見にくい、というのは、完全に架台の設定高を間違えたことによる判断ミスであり、バイアスに他なりません。
分かる方にとっては、「何を今さら?」の内容だと思いますが、分からなかった方にとっては、EMS-BINOを理解する突破口になる図かも分かりません。
31.7サイズアイピースしか使わないならEMS-UMA、2インチアイピースを使用するならEMS-UL、という、短絡的な理解は、BINOのプランニングには通用しません。
上の図は、同じ対物レンズ(F値、口径、焦点距離、全て同じ、目幅も60mmと想定)で、D(鏡筒間隔)が変化した時の、第一ミラーの理想サイズの変化を図示したものです。
Dが少しでも大きくなると、第一ミラーの要求サイズが急に大きくなることがお分かりになると思います。これが、BINO設計の初期段階で、Dをミニマムにすべく、最大限努力することの理由です。
「私は31.7アイピースしか使わないから、EMS-UMAで良い!」と、頑迷に主張される方もあって、その場合は、ご当人が気付くまで、仕方ありません。^^;
大方の望遠鏡メーカーさんの理解レベルも大体そんなもので、単体のEMS-ULクラスで合焦すれば、BINO化も可能だと思っている節があります。
バックフォーカスの測定について、勘違いしている方が多いように見受けます。
初心者の方に多いのは、繰り出し装置のストロークを測って、それだけで判断される間違いです。
それがなぜ誤解を生じるかは、長くなるので説明を割愛します。
で、どうするのが良いのか?ですが、遠景を紙に投影すれば直接的に分かりますが、確実に光路長が分かっている装置(双眼装置やEMS)をセットしてみるのが簡単です。
繰り出した総長+セットした装置の光路長が答えです。
本例だと、165+153= 318mm でした。これは、D=261mmでEMS-UXLを使用してもあり余るバックフォーカスでした。EMS-UXL(D=261mm)の光路長の予定=268mm(フィルタースロット付き2”スリーブ)なので、フォーカサーの繰り出し長=318-268=50mmとなります。
鏡筒側の伸縮筒を完全縮退させて、フォーカサーの繰り出し長=50mmということです。
十分に長いバックフォーカスから、伸縮鏡筒(140)、着脱可能な延長鏡筒(120)と、Asukarシリーズ鏡筒の、BINO化に好都合で斬新、英断の仕様を絶賛した後ですが、BINO化の視点から見ますと、まだ不十分な点もありました。
Askar-120での経験から、今回もバンドボトムは10mm以上のスリム化を予定していたのですが、上の写真のように4mmのトリミングが限界でした。なぜか? それは、バンドボトムが裏側から大きく肉抜きしてあり、中空になっていて、希望の量だけカットすると、アリガタを取り付けるネジベースを消失することになるからです。まあ、たった4mmですが、光路長換算だと√2倍になるので、5.7mmの光路長節約です。
アリガタの無駄な部分をカットしました。
かなりの減量になりましたが、主目的は減量ではなく、天頂時にアリガタが中軸架台の水平回転部と干渉しないための処置です。