Temporary mount for the C5-BINO / C5-BINOの臨時架台

As the client had not sent his Goto Mount here, I have to prepare some temporary mount to do the final assembly of the C5-BINO. I chose the HF2 mount for the 115ED-BIONO that is extended by 30mm from the original one. That is the perfect width for the C5-BINO.

BINOのご依頼の仕方はそれぞれで、未知の鏡筒を全く見ることなく必要な心臓部のパーツを製作することもあるくらいですが、今回は、依頼者の方が計画しておられる、タワー型の自動導入架台をお送りいただけないため、何らかの仮の架台が必要になりました。 思い悩んだ挙句、少し後で製作する115EDTBINO用に幅広改造したHF2経緯台を利用することにしました。 もちろん、臨時の耳軸セット等、余分な手間はかかりますが、仕方ありません。 納期がさらに延びますこと、ご了承ください。(最初は架台なしでも組み上げられると思ったのですが、現実に直面すると、それは難しいですね。)

臨時の耳軸プレートは、あり合わせのプレートを加工したものです。 重心予想位置に耳軸をセットしましたが、実際にはウェイトシステムもセットしますので、さらに重心が手前に来る可能性もあります。 もちろん、この写真の段階ではトップヘビーです。 ただし、鏡筒が極端に短いので、モーメントが小さく、耳軸クランプで十分止まっています。 総重量も見かけよりもはるかに軽く、持ってみると新鮮な驚きがあります。 今までは見向きもしなかったシュミカセBINOですが、依頼者の方の気持ちが大分分かって来ました。^^;

最終的には、左側面だけにアリガタを設置して、片持ち架台に載ることになりますが、この軽さだと、うまく行くかも知れないと思い始めました。(依頼者の方は、すでに架台の加重テストを検証済みですが。)

EMS-UL set for the C5-BINO in the making / C5-BINOのEMSセット、製作中

EMS-UL set with helicoid for the C5-BINO is in the making.Note that no joint rings are required to install the helicoid on the EMS housings.That’s the reason for the lowest profile with the helicoid.

ヘリコイドのインストールに別個のジョイント金具は不要です。 当方オリジナルのヘリコイドの両端がテーパフランジになっており、接続するEMSハウジングの内径に嵌合するからです。”low-profile”(最短22mm《標準EMS-ULでも16mm》)の理由です。

Fourth and the last plate (C5-BINO) / 製作中のC5-BINO(4枚目のプレート)

This is the fourth and the last plate of the structure of the C5-BINO..

4枚目で最後のメガネプレートです。 これが末端の2インチスリーブも兼ねます。両端のスリ割りにご注目ください。 この面より手前にはどんなチューブ状のパーツも接続しません。(つまりこの面より手前には光路長の消費はないということ)C5は完璧にインナーフォーカスなので、左右のEMS(正確には第1ユニット)が個別に動く必要は全くありません。

C5-BINO in the making / 製作中のC5-BINO(3枚目のプレート)

F6.3 reducers hold the third plate in place. This plate will be the base of the IPD adjustment device that will never cause any focus change.

3枚目のプレートです。 F6.3レデューサー(兼コマコレクター)で固定します。合焦は、依頼者の方が検証済みとのことです。 これから作製する4枚目のメガネプレートにEMSが取り付き、全体が目幅調整時のピント補償で目幅と連動します。3枚目のプレートの中央上部の穴は、リニアベアリングが入る穴です。 リニアベアリングは、上下の中心に配置したかったのですが、鏡筒底部と干渉しますので、上にシフトせざるを得ず、プレートの縦幅も広くなりました。

ここから先は、現場主義で一つずつ積み上げていかないといけません。

C5-BINO in the frame / C5-BINO、鏡筒を合体させてみました

C5 OTAs are preliminarily combined into the shape.

メガネフレームを仮組み立てしてみました。(成功です。)従来であれば、これにEMSセットと運搬用取っ手、操作ハンドル、左側面にアリガタを付ければ完成ですが、今回はこれで安心は出来ません。 これから別個に接眼部に ピント補償機構を設置しないといけないからです。 当初は手前のメガネバンドを足場にする予定でしたが、意外にEMSから遠いこと等、制約が多く、かえって接眼部にもう1枚、小さいメガネプレートを配置した方が結果的にはよりシンプルになると判断した次第です。 続報をお楽しみに・・・^^;。

アリガタプレートは当初、2枚のメガネバンドを繋ぐ程度のプレートを想定し、材料を確保していましたが、それは早計で、BINO完成後の重心がはるか手前に来ることに後で気付いたので、材料を再注文しないといけません。

Frame-work of the C5-BINO in the making / C5-BINOのフレーム(1)

Frame-work of the C5-BINO is in the making.
The EMS-ULS set for Mr.B in Spain is almost completed.

更新のための時間も惜しいのですが、放っていると思われたくないので^^;、C5-BINOのメガネ型フレームの材料をお見せします。 材料発注の土壇場まで、厚肉パイプを連結してメガネ型を構成するか、板を刳り貫くかで迷ったのですが、最終的には、17S(ジュラルミン)の板を刳り貫く方法に決定しました。 厚さは15mmです。 最初は肉が厚い鏡筒の両端部品の部分で束ねるつもりでしたが、いろいろと検討した結果、直接鏡筒パイプ部分を保持するのがベストだと分かりました。(材料発注直前にそのことに気付き、無駄な注文を免れ、冷や汗を拭きました。 今まで、何度焦って無駄な材料を注文して来たことか・・・^^;)

2本の鏡筒をメガネ型のフレームで束ねることは、すでに経験済みで何も難しいことはありませんが、ピント補償機構やウェイトシステム、操作ハンドル等といかに美しく連携するかで慎重になるわけです。 最初の判断を誤ると、作業の後々まで苦労するからです。 中途半端に工程をお示ししますと、また新たな疑問が生じるとは思いますが、この段階でのご質問はなるべくご遠慮いただくと幸いです。(激励いただくのはいつでも歓迎ですが、枝葉末節のご杞憂から、質問→回答→新たな疑問発生→質問→回答・・・と、連鎖的に収拾が付かなくなりますから。^^;)

このBINOは、単なる毛並みの変わったシュミカセBINOの単発的な受注ではなく、鏡筒固定でかつ、目幅調整のピント移動が生じない、次世代型のEMS-BINOの検証を兼ねていますので、時間がかかっているのです。 なにとぞご理解ください。

C5-BINO project launched! / C5-BINO計画始動!

After elaborating the plan for a long time, I have just ordered the materials for the C5-BINO.It will be a herald model of the next generation EMS-BINO, rather than one of the new binoscopes.It will be a sample model of the ultimate mechanism of fixed OTAs with a focus compensator.

このモデルは、単なる新型のシュミカセBINOではなく、次世代型のEMS-BINOの先駆となるものです。時間がかかった理由はそこにありますので、何とぞご理解くださいますよう、よろしくお願いします。

メガネ型のフレーム構造自体は、すでに最近のモデル(たとえばTV85-BINO)で検証済みですが、今回は、左右同時タイプのピント補償機構への挑戦となります。 単に、このモデルだけでなく、今後のEMS-BINOの可能性への挑戦ですので、それなりの周到な準備が必要なわけで、推敲を重ね、材料の発注間際で何度も設計を変更して来たわけです。 ようやく、最終的な設計が決まり、数日前に材料を発注しました。

BORG50-BINO

【BORG50-BINOレポート】

【導入の経緯】

 EMS-BINOに魅せられて、3台のBINOを使用してきました。このうち1台(Pront-BINO)のEMSを銀ミラーに換装しましたが、 その際余剰となったアルミミラーはEMS-Lとして再度組み立てて頂きました。

 このEMS-Lの用途として「手持ちのファインダー対物レンズを流用した2インチアイピース対応ファインダー」を考え 松本さんに相談しましたが、対物レンズのF値が3強程度と短く、脚部・光軸調整機構が複雑になりそうで断念しました。 (BINO Progress Report 製作状況速報の2011,7月13日-2) そこで以前から興味のあった横浜のKさんのBROG50-BINOを参考に正立対空双眼鏡として組上げることにしました。

 【写真1】右側がテレビューPront-BINO(口径70mm)、中央がBORG50-BINO、左側は7倍50mm IF式双眼鏡(タカハシ アストロノーマー7×50)です。 並べると、BORG50-BINOはまるでEMSユニットだけで鏡筒が付いていないように見えます。 サイズはEWV32mm使用時で幅約250mm、全長約210mm、高さ約220mm。重量は4kg弱でかなりズッシリ感はあります。

【構造上の特徴】

(1)対物レンズはBORGの50mm(f=250mm)で、EMSはLタイプ(光路長150mm・アルミミラー)です。携帯性を重視するならEMS-M(光路長120mm)も良いと思います。

(2)合焦機構はコストを考慮して褶動式にしました。頻繁にアイピース交換する場合はBORG M57ヘリコイドLⅡ等を利用した方が良いかもしれません。

(3)【写真2】で判るとおり、H型のアルミプレートの構造体が骨格になっています。    接眼側プレートにはEMS第1ユニットが固定されており、眼幅調整ヘリコイドを介してEMS第2ユニットと2インチアイピーススリーブに接続しています。

(4)眼幅調整は完成度が高くなってきたヘリコイド式を採用しました。鏡対称の回転動作で眼幅調整できるので、操作感は快適です。【写真3】 ただストロークのリミットを越えて力を加えると内部の機構に負荷がかかり回転ガタが発生する可能性があるようで一応留意が必要です。 (BINO Progress Report 製作状況速報の2011,9月24日 ヘリコイドご使用上の注意参照)

(5)対物レンズ側プレート(スタビライザー)は対物レンズユニットとは直結されていません。 【写真4】の通り、摺動筒は左右独立して動きます。スタビラーザー両脇のクランプを締めれば対物レンズを堅固に固定できます。

(6)三脚への取付ネジは六角形の部品の下部にあります。【写真5】 重量級アイピースの使用を前提にしている為、かなり接眼部寄りの配置になっています。

(7)アイピースは笠井EWV32mm、イーソス17mm、ツァィス(Doctor)12.5mm、イーソス10mmを想定していましたが イーソス17mm(写真右上)がギリギリで合焦しませんでした。【写真6】は各アイピースを取り付けた状態です。

(8)EMSのアイピーススリーブ(黒い部分)の固定ネジは標準ではアイピース固定用と同じ規格のネジですが、 スリーブがアイピースごと脱落する事故を防ぐ為に3点イモネジでの固定に変更しました。【写真7】

(9)イーソス10mmは31.7mmフィルターが装着可能ですが、標準のままフィルターを装着するとEMS保護フィルターと干渉します。    これを防ぐためにイーソス10mmの2インチバレル部に約8mmのアジャストリングを嵌めてあります。【写真8】

(10)当初ファインダーは搭載しない前提で考えていましたが、鏡筒が極端に短かく指向している方向(特に高度)が判り難くいため 手持ちのレーザーファインダーを取り付けました。これはかなり便利です。【写真9】

【使用感】

 EWV32mmを使うと実視界は11度近くに達します。もちろんEMSですから好みの広角アイピースを楽な姿勢で使えます。 タカハシ7倍50mmと比較すると見掛視界が圧倒的に広い上に、三脚固定時の姿勢がずっと楽なことから 「双眼鏡同士の比較」という感じはあまり受けません。EMS-BINOならではの世界と言えるでしょう。 UHCフィルターを使うと「北アメリカ星雲」などが周辺の星空と一緒に楽しめます。 またイーソス10mm(25倍)との相性が予想以上に良いのに驚きました。中心像だけでなく周辺部まで驚く程しっかりした像を結びます。

 2011/10/18に西天のギャラッド彗星(C/2009P1)を見てみました。 EWV32mmでは「たぶんこれだな」といった感じで確信までは持てないイメージです。実視界が広すぎてかえって導入に手間取ります。 イーソス10mmに切り替えると「いかにも彗星らしいイメージ」がすぐに確認できました。(薄雲があったためか尾は確認できず) EWV32mmではやや星像の流れが気になりますが、イーソス10mmでは背景が適度に暗くなる上に全視野がほぼ良像なので気持ちが良いです。 当初はEWV32mmメインで他のアイピースはたまに使う程度のつもりでしたが、意外とイーソス10mm(25倍)がメインになるかもしれません。

 BORG50-BINOは従来の望遠鏡ベースのBINOとは大分異なる点がありますが、松本さんと相談しながら形にして行く工程を楽しむことができました。 それにしてもコンパクトな機材は気軽に使えるのが良いですね。 松本さん、いつもながら素晴らしい作品をありがとうございます。

Misago
2011年10月20日

【補足】(10月25日 追記)
 松本さんのコメントにあるように2インチスリーブは瞬時に着脱できるのは便利で一般的にはこの仕様の方が良いと思います。
 ただ私は重量級のアイピースを使用することが多く、操作ミスによるアイピース落下を防ぐことを優先しイモネジ固定をお願いしました。
 イーソス17mmだと1本で約750gありますので、落とすと物理的にもお財布的にもダメージが大きいです。
 尚、EMSのミラーメンテですが私はあまり神経質には行いません。 保護フィルターを常時装着していれば埃も殆ど付着しませんし、気になる時はエアダスターで吹けば十分だと思います。 またエアダスターを使う時も、事故を防ぐため明るい場所で行うようにしています。

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 今回も、Misago さんが、BORG50-BINOについて、非常に濃いリポートをまとめてくださいました。  本文で書いておられるように、最初はEMSのリフォーム(銀ミラー化)で余ったアルミミラーで2インチアイピース対応のファインダーを製作する、という計画だったのですが、問題が多く、結果的に、超広角の対空双眼鏡の計画に変更することになりました。

  どうせ作るなら、今までの焼き直しでない、全く違う物を作りたい、という製作者の気持ちと、Misago さんがそれを全面的に信頼してくださったことで、このBORG50-BINOが実現しました。

  初めてのモデルは、作りながら現場で考えることが多く、最初から完成図があるわけではありません。 いつも申していますが、私の場合、良いアイデアは土壇場にならないと出ないのです。^^;
 ですから、作業中にこと細かく指示を出される依頼者の方とは相性が合わず、そんな時は良い結果に至りません。(マツモトの正体は、実は、そんな時、「それなら、あたなが自分で作りなさいよ。」と言ってしまう偏屈職人なのです。^^;) 大方の部分でお任せいただき、依頼者の方のご意見を聞く必要性が生じた時にのみ、こちらからお尋ねする、というのが私の物作りのスタイルには合致しています。

 当BINOは、当サイトの製作情報速報の2011年8月6日~30日の間に、飛び飛びですが製作の プロセスをご紹介していますので、当リポートと合わせてご参照いただくと、よりご理解が深まると思います。 

 EMSの2インチスリーブは、製作者としては、フィルターワークやミラーメンテへの対応として、瞬時に着脱できることを重視していますが、Misago さんの使用スタイルには、完全固定が望ましいとのことで、そのように 対応させていただきました。 ただ、当時はまだバンド式クランプを導入していなかったので、今ならまた お考えも変わるかも知れません。

 標準ヘリコイドについては、ご指摘の点は新規に仕上がって来る物についてはすでに改善済みです。 パーツの精度の問題ではなく、単なる組み付けの問題でした。 初期モデルのユーザーさんで、今後もしガタが生じた 場合は、再調整させていただきますので、よろしくお願いいたします。

 このBORG50-BINOの製作では、いろいろと勉強させていただきました。  また、この度も、EMSの未経験者にもよく分かるように、たいへん丁寧に説明してくださり、感心すると共に、 非常に感謝しています。
 Misago さん、次回はずっと良い物をお作りできると確信していますので、今後ともよろしくお願いします。