2-inch sleeve set of EMS

 2011年の秋頃より、お客様のご要望から、当方のEMSのアイピース用アダプター(スリーブ)も、真鍮割りバンド方式のクランプを採用しています。

 あれから9年が経とうとしているのですが、ごく最近になって、この方式のクランプの弊害についてのご報告が目立つようになりました。具体的には、クランプすると、アイピースが浮き上がる(傾斜する)、とか、抜けにくいことがある、といったご指摘ですが、いつかは来るだろうと思っていた問題です。
 EMSの接眼アダプター類の真鍮バンドは、その位置、溝の深さ、真鍮リングの幅、厚み等々、他社さんの平均を取ったつもりで、EMSだけが特殊な寸法を採用しているわけではないので、これはEMSの問題ではなく、業界に一般的な問題だとご認識いただけると幸いです。

この問題を根本的に解決するには、背景の経緯を歴史的?にたどってみる必要があると思います。

 真鍮バンド式クランプが普及するより前に、アイピースのバレル(挿入部)に脱落防止?用の溝を彫った物が登場しました。どのメーカーさんが最初だったか、記憶しませんが、次々に各社が追随し、現在では、挿入バレルに溝がない
アイピースは皆無に近い状態になっています。
 その頃からか、あるいは少し遅れて、今度は望遠鏡のスリーブ(接眼アダプター)側の内径にも内溝を彫って、そこに真鍮製の割りバンドを挿入したタイプが特に高級望遠鏡を中心に普及し始め、これまた現在ではほとんどの望遠鏡に採用されています。
 ここで、何が問題になって来るかと言うと、アイピースメーカーさん各社が好き勝手な位置に、好き勝手な幅と深さの溝を彫っているということです。全く統一基準がありません。 さらに、望遠鏡側のバンドクランプもしかりです。

 私の意見を結論から申しますと、アイピースメーカーさんは、直ちにバレルの溝の施工を止めるべきだということです。望遠鏡の接眼アダプターが真鍮バンド式になった時点で、アイピースの溝は邪魔物どころか、危険な要因になっているのです。下手をすると、アイピースが抜けなくなることもあり得ます。
 真鍮バンド式クランプを止める選択肢も考えられますが、仮に従来のネジ止めに戻しても、溝の箇所が不幸な位置に来ると、止めねじで押すことでアイピースが浮き上がることはあり得ます。

 さて、アイピースの脱落防止について、どれだけの根拠があるのかを冷静に考えてみる必要があります。
まず、ニュートン式の望遠鏡であれば、わざわざ仰角が大きく付くような状態に接眼部を向けて使用する方はいません。
 また屈折式(カセグレンも)はどうでしょう? ほとんど天頂ミラーかEMSをセットしているのではないですか?
 つまり、アイピースが重力で落ちるような状態で望遠鏡にセットすることは稀なのです。
 
 さて、不幸にして、お手持ちのアイピースとご使用のバンドクランプの相性が不幸な関係だった場合にどうするか? ですが、まずは、本当にそうなのかをチェックしましょう。
 真鍮バンドが歪んで、ローレットネジを緩めても十分に後退せず、スリーブ内径に一部でも少し飛び出していると、アイピースを抜く時にひっかかります。これは、真鍮バンドを一旦外して真円度を修正して戻せば治ります。
 クランプをするとアイピースが浮き上がるのは、バンド位置とアイピースの溝が不幸な関係にあるので、アイピースのバレルの根本にスペーサーリングを嵌めて溝位置をずらせば解決します。 あるいは、真鍮バンドを撤去して、従来のネジ止め方式に戻しても良いでしょう。
 というように、回避策や対症療法はありますが、やはり、アイピースの溝をなくすのが急務だと私は思っています。

 メーカーの皆さん、あるいはメーカーに影響力のある皆さん、真剣に考えてみませんか?

AAS-2に関するご報告(重要)

標準添付のUSB電源ケーブルが少し抵抗値が高く,モバイルバッテリーの電流供給能力が低いと,電圧が落ちて動作不良の原因になることがありますので,
  WiFi電波が出ない/電波は出てるが動作がおかしい(SkySafariとうまく接続できない/異常に長い時間フリーズする)等の現象がありましたらご連絡ください。
  新たに対策したUSB電源ケーブルをお送りします。

(私も数年以上AAS-2を使用していますが、そうした兆候は全くありませんし、今回初めてそのご指摘により調査したところ、バッテリーの電流供給能力が低い物をご使用の際に稀に発生する症状だと分かりました。問題なくご使用いただいている場合は、初期添付のケーブルで引き続きご使用ください。)

Trimming of the LV-30mm(VIXEN)

目幅の広い方は、何とも感じないかも分かりませんが、メガネ屋を50年間やっている私は、66mmは標準よりも確実に広い目幅であると断言します。つまり、このままでは、大半の方には使えないわけです。

まずは1本をトリミング。細いピンクの化粧リングは、迷いましたが、加工中に工具に巻き込まれる危険を予想したので、外しました。
ラバーベルトは戻したいので、ベルトの厚み相当の段差を付けました。
中身(レンズ^^;)が出ないか、ヒヤヒヤしなから削りました。段差の深い部分は2.4mmの深さまで削りました。

完成です。トリミング箇所を明瞭にするため、敢えて塗装しません。

これでIPD=63mmまで使えるようになりした。 まだ広いですが、これがちょうど成人男性の平均くらいです。半数以上の方で問題なく使えるでしょう。

Nostalgic housing of two decades ago (Comparison with the Current Housing) / 大型ハウジングの新旧比較

It is a good chance to show you the comparison of the old and new larger-housing of the EMS when the old one returned for the reform.
The left one is for the FS102-BINO , now it is at my place, and the right one, in white, is the current larger-housing.

The old one, left TAKAHASHI-colored one made more than two decades ago,was molded in the sand by the traditional method, and the right white one was diecasted by the modern plant which is far more precise and thinner.

You will know by this movie how difficult it was to set the maximum sized mirror into the older housing.

リフォームで二十数年ぶりに里帰りしたEMSの第1ハウジングを現行の物と比べてみましょう。
現行の物は、ダイカスト(金型による高圧精密鋳造)により、理想的な形状とサイズで最小限の重量で最大限のミラーを、極力ミラー切削なしで収納できるようになっています。一方、初期型の大型ハウジングは、伝統的な木型→砂型工法によるアルミ鋳物なので、分厚く、非常に重くなっています。型抜き状態での形状も不正確なので、1個ずつ旋盤加工で端面(及び開口部内径)を修正していました。
古いハウジングでは、最大限のサイズのミラーを収納するのに、いかに苦労していたかを動画から読み取っていただけると思います。

ご参考までに、一般にダイカストの金型がなぜ高価(ン百万^^;)なのかをご説明します。私も当初は知らなかったのですが、ダイカストの型というのは、一般人が想像するような単なる鋳型ではないのです。これは、太陽観測用のHαフィルターと似ていますね。一般人は、フィルターと言えば、1枚の単純な平行ガラスを想像します。だから、その価格の意味は到底理解できないわけです。天文マニアなら、太陽用のHαフィルターが単なる1枚のガラス板ではないことを知っています。
さて、話をダイカストに戻しますが、ダイカストの型は型自体が溶けた金属を注入、排出するための複雑なピストン機構を含んでいるのです。立体的かつ中空の構造物を成形して、さらにその都度型を破壊せずに巧妙な抜き子機構で製品を排出しないといけません。だから、型全体はかなりの大きさの物であり、重量も100KGを超えるのが普通です。因みに、当方のEMSの標準ハウジングの型には、ピストンが入射口方向と射出口方向とそれらと立体的に直交する方向とで3つ装備されています。 その巨大な型は、さらに巨大なダイカスト屋さんの大きなプラントにモジュールとしてセットされるわけです。
 お分かりになりましたか? ^^

Adjusting plates for the Center Mount / 間隔調整用スペーサー(新型中軸架台)

To optimize the IPD range of reformed Center Mount system from the equatorial type Binoscope, I decided to make a pair of 3mm-thick plates to enlarge the maximum IPD by 6mm for the sake of the special situation of the client.

赤道儀仕様のFS102-BINOからのリフォームによる特殊事情から、D(鏡筒間隔)を6mmほど広げたい事情が生じました。複数の解決策を検討した結果、垂直回転軸とアリミゾの爪プレートの間に厚さ3mmのスペーサーを挿入(左右1枚ずつ)することにしました。

ジュラルミン(17S)なので、保管用?の表面処理も相俟って、アルミ合金にしては、少しどす黒く見えます。いずれアルマイト加工をするので、より安価がアルミ合金でも全く問題ありませんが、17Sが切削性が良いので、敢えてよく使います。また、材料の発注方法も通常の方法(これだと、指定寸法より少し大きめで来る)ではなく、”スーパーカット”という、最終寸法と角度精度を±0.1mmオーダーで仕上げて供給してくれる方法を採っています。それぞれコストはアップしますが、外注したり、ましてや工員さんを雇うコストを考えれば、何でもありません。

How to adjust a Binoscope / BINOの調整方法

Today, I am going to show you the perfect adjusting model of the binocular viewing and the cross-eyed adjustment which many of the novice would often be trapped in.

If you can adjust EMS correctly, the target will appear in the same positon in both of the left and right field.
Try the two images merging into one by the parallel watching. You will find one merged target and also one merged field.

If you are trapped into the cross-eye viewing, you will adjust the images as the photo above.
Try the two imaged merging into one by the parallel watching. You will also find one merged target and also one merged field.
In the actual binocular viewing the left and right field will not perfectly merge as the photo below.
However in the experiment of this way, the field appear a bit behind from the target.
Anyway remember that you should always aim at the position of the top example.

This is the typical image of the binocope cross-eye adjusted.
I could not show you by the parallel watching of the above images.

BINOの完璧な調整と寄り目調整を体感してもらおうと、最適な体験モデルを用意したのですが、ちょっと予想外のことが起こりました。
平行法で見ていただき、寄り目調整で視野がだるま状になるところを見ていただくつもりでしたが、この方法では、視野はだるま状にならず、
ターゲット(土星)に対して後方に見えました。 現実のBINOでは画像のように、だるま状になるんですけどね。

完璧な状態でBINOを使用していただきたいばかりに、やや警鐘を鳴らし過ぎた感も否めません。
確かに私たちの視軸は(初心者には)制御し辛い面もありますが、それは輻輳(寄り目)だけを注意すれば良いのであって、例えば、上下のズレには
眼(視軸)の補正はほとんど効かないので、調整は実に簡単です。また、私たちの視線は平行を超えて拡散方向にはほとんど広がらないので、これまた調整は
簡単です。要するに、左右の視野でターゲットが同じ相対位置にあれば良いだけのこと。

Another EMS-UM SET near completion

似たような投稿を繰り返すのもどうか?とも思いますが、ここはご依頼いただいたお客様への進捗状況のご報告を兼ねており、さらに詳細を公開することで、使用説明書をも兼ねているわけです。

Making of the micro-focuser knob / マイクロフォーカサーノブの製作

通常はお断りする仕事です。EMSを受注したお客様がマイクロフォーカサーノブを離散されてお困りでしたので、何とか作ってみました。

実際に製品になるのは、旋盤でチャッキングした30mmΦの部分だけで、切削中の部分は加工用のボスになる部分で、加工完了後に切除します。
このように、小さい単品加工では、無駄になる部分が多いのです。

ボスにチャッキングを切り替えて、やっと本体の加工。この段階でトップの湾曲面を仕上げます。

いよいよCNCフライスによる、ローレット加工。本来なら、当方の手持ちの刃物では歯車状のローレットしか切れないのですが、元のノブは尖り山状のローレット。通常のエンドミルを使用して本来の尖り山状のローレットにしようと、トリッキーなプログラミングをしたところ、CNCがエラーを出して動かない。^^;
仕方ないので、マニュアルで動かして加工。10度ずつA軸(第4軸)を回転させながら、手動で根気よく彫っていく。

やっとローレット加工が完了。 もう一息。

不要になったボスの切断。これを突っ切り加工というのですが、一見簡単そうで、意外に高度な部類の加工技術になる。

軸穴、止めねじ穴の加工を完了して完成。

Handle unit is set (FS102-BINO-Reform)

アクセサリー(ファインダー)ベースとハンドルユニットの接続方法に迷いましたが、これには敢えてスリムな鏡筒バンドを使用することにしました。この方法なら、移動も撤去も自由だからです。