Optical Common sense Quiz-2-4-1-answer / 光学常識クイズ 第二段-4-1 解答と解説-2

 意図的にスルーされている気もしますが、ここで終わるわけには行かないのです。
では、求めたシステムマトリックス(図中に記載 ↑)で何が分かるかについてご説明します。
 まず、右上の成分 0.9999 から。合成パワー Φ(度数D)=0.9999D なので、
焦点距離=1.0001m (1000.1mm) ( f = 1/Φ )
 エレメントの度数に対して、この程度のレンズ間隔だと、合成度数に関しては、ほぼ密着と考えて単純に3枚のレンズの度数を合計したのと、ほとんど変わらないことが分かりますね。
L1 から、+1-1+1=+1
 次に、主点位置を見てみましょう。
 以前にもご説明したように、システムマトリックス
B A
C D
  の物側主点 E=(B-1)/A 、像側主点 F=(D-1)/A により、

E = (0.9899 – 1)/0.9999 = – 0.01010101 = F となります。
 ( – ) が付いているのは、レンズ面よりも主点が中側にあることを意味します。
 ミリで言うと、約10mmレンズ系内に入った所なので、ほぼレンズ系の中央に、物側、像側の主点が位置していることになります。L2の凹レンズの中心ですね。

 では、次に、中央の凹レンズ L2 を除去したレンズ系のシステムマトリックス(図中 ↓ に示しました。)を見てみましょう。(各自で行列式を立てて計算してみてくださいね。)

こちらの物側主点 E 、像側主点 F は、
E = (0.98 – 1)/1.98 = – 0.01010101 = F
 となり、何と、前問と全く同じ数値が出るではないですか!
 このように、完全シンメトリックな3枚玉の中央のレンズを除去しても、主点の位置は変わりません。
 合成度数=1.98Dで、+1.0Dのレンズを2枚、20mm開けて配置したために、密着時の+2.0Dよりも度数がわずかに弱まりましたね。焦点距離では約 505mm。5mmほど長くなりました。
 このように、システムマトリックスを見ると、その光学系の顔が見えてくる。
 面白くないですか??

次に、元の3枚玉のシステムに、左から光軸に平行で、高さ h=1 の光線を投入してみましょう。

計算の約束上、左から投入する光線の行列は、システムマトリックスの右側に配置することになります。
α=0 で、h=1 の入射光線です。
 それを計算すると、α’ = 0.9999 , h’ = 0.9899 となります。
 これが何を意味するかと言うと、
L1面に高さ h=1 で投入された光線が、L3面上の高さh’ =0.9899の点から、傾斜角α’ = 0.9999の角度で射出するということです。
最終面L3とその結像点(焦点)までの距離 s’ =h’/α’ だから、
     s’ = 0.9899/0.9999 = 0.989999 (m)  となるわけです。
  さきほど求めた焦点距離より10mmほど短いですが、これは、焦点距離ではなく、像側の頂点距離で、焦点からL3面までの距離です。
これに、像側主点までの距離を加えたのが焦点距離ですから、今までの計算結果と合致しますね。

(*投入する光線の h の初期値には制限はありません。途中で尺度を変えない限り、x 軸の尺度と統一する必要はありません。(理由は前の講座を辿っていただくと見つかります。))

Optical Common sense Quiz-2-4-1-answer / 光学常識クイズ 第二段-4-1 解答と解説

解答をお示ししました。
今回は、行列式がちゃんと並べられたら合格とします。(40点)
 屈折マトリックス、移行マトリックスについては、繰り返し講座でご説明して来ましたし、ヒントにも指針を書いていましたので、問題ないと思います。
 行列の掛け算については、忘れた方は、ネットで検索していただけたはずです。価値さえ分かれば、「調べてみよう!」というモチベーションも上がったはずですが、そこにすら至る方が少ないことを見ると、やはり当方の説明の仕方にも問題があったのかも知れませんね。

 行列は、一般の数のようには、交換法則が成り立たない、” A・B ≠ B・A “と申し上げましたが、移行マトリックス × 屈折マトリックスについては、面白い特徴が見られ、計算の省力を行うことが出来ます。
 中央の凹レンズ(L2)を挟んで、左右それぞれ2組ずつ(①と②)の、移行マトリックスと屈折マトリックスの順番が入れ替わっていますが、計算結果は、左上と右下の成分が入れ替わっているだけで、他の成分は全く同じです。これを事前に知っていれば、計算を一つ省くことが出来ます。(交換法則は成り立たないが、結合法則は成り立つ)
 計算結果(システムマトリックス)の行列について、右上の成分が常にシステムのパワー(度数/ 1/f)になることは、繰り返しご説明して来ました。
 また、昨日のヒントでもご指摘しましたが、左上と右下の成分の数値が全く同じことにご注目ください。 これは、完全シンメトリックな光学系の特徴で、主点の位置も左右対称になっていることを示しています。

 それから、行列式の値=1になっているので、ぜひ各自でお確かめください。
0.9899 × 0.9899 ー 0.9999 x ( – 0.0201) = ?

  この性質は特に重要で、興味をお持ちいただく突破口になることを願っています。


Optical Common sense Quiz-4 / 光学常識クイズ 第二段-4/ Exercise-1/練習問題-1

Question: Find the System-Matrix of L1 to L3.
t1=t2= 0.01m(10mm); Thickness of the lenses can be regarded as zero.

A = ?
B = ?
C = ?
D = ?

Find up to 4 digits after the decimal point.

問: L1 → L3 のシステムマトリックスを求めよ。
A = ?
B = ?
C = ?
D = ?

(小数点以下、4桁まで求めよ。)

 本来なら、単にシステムマトリックスを求めるのではなく、それを読み解いて、主点位置等を求めていただきたかったのですが、今回は、そこまでは求めません。(明日解説します。)

ヒント:L1 の屈折マトリックス → t1の移行マトリックス → L2 の屈折マトリックス → t2の移行マトリックス → L3 の屈折マトリックス と、右→左に行列を重ねて置き、一番右の行列に順に左隣の行列を掛けて行きます。(レンズの並びと行列の並びは逆になります。)
(結合法則は成り立ちますが、交換法則は成り立たないのでご注意ください)
 中央の凹レンズは – 1.0D(焦点距離=-1m)、両端の凸レンズは +1.0D(焦点距離=+1m)、レンズ間隔は 0.01m(10mm) とします。 今回はレンズの厚み=0 とします。

(各面を等価な6枚の薄レンズとみなし、6枚の薄レンズと5つの換算面間隔を指定すれば、より実体に則した追跡が出来ますが、今回は練習-1なので、簡単にしました。)
(前回までのご説明が理解できなかった方も、理由は分からなくても良いので、今までご説明した手法を実際に試してみてください。何だか、役に立ちそうだ、というところまでご理解いただければ幸いです。)

Optical Common sense Quiz-2-3-answer / 光学常識クイズ 第二段-3-解説

一般的な近軸結像公式 1/s’ – 1/s = 1/f に前回の問いの既知の値を代入すると、
1/s’ + 1/2 = 1/0.5 = 2
1/s’ = 2 – 1/2 =3/2
s’ = 2/3
 となりますね。敢えて計算しやすい数値にしたのと、1枚レンズの結像なので、一般的な結像公式でも、特に計算に苦労することはありません。しかし、これが、間隔を置いて、2枚、3枚となるとどうでしょうか? まず s’ もそのままでは次のレンズの計算に使えず、都度、レンズ間隔を差し引かないといけませんし、像点距離は都度、逆数を求めないといけません。

 行列を用いた近軸追跡では、物体距離と像点距離からは離れ、特定のx座標での高さhの点での光線の傾角α(定義はtanα)で光線を特定します。x-y平面上の幾何学的なベクトルに似た表記になりますが、x座標の席には、傾角 α が入ります。
 図のA→がHに入射する光線ベクトル(敢えてベクトルと言います。)で、B→が H で屈折した光線ベクトルです。A→に屈折マトリックスを掛けたら B→ になるわけです。
 繰り返しになりますが、ここらで、おさらいをしておきます。
1/s’ – 1/s = 1/f  の両辺に h を掛けると、(平等に両辺にどんな数を掛けても問題ない)
h/s’ -h/s = h/f となりますね。
 ここで、h/s’は、定義した α’、h/s は α 、また 1/f = Φ(レンズの度数)だから、
上式は、α’ = α + hΦ と書けるわけです。
また、屈折の前後で h に変化はないので、h = h’ です。
 それらをまとめて行列表記したのが、図中に書いている、屈折マトリックス です。
(屈折マトリックスの右上の成分は常にレンズのパワー(1/f)です。対角成分は常に0,他の2つの成分は常に1,従って、行列式の値=常に 1 です。)

 α’ = 3h/2 となりましたが、α’の定義は
 α’ = h/s’ から、s’ =h/α’、
これに、α’ = 3h/2 を代入すれば、
 s’= 2/3  が求まります。
  今回は、敢えて h を通しましたが、この計算でお分かりの通り、h の初期値は何でもよく、計算に好都合な 1 にすれば、よりシンプルになるわけです。(x軸とy軸の尺度を合わせる必要はない。)
 本例は、1つの屈折マトリックスで完結する例でしたが、複数の屈折マトリックス、移行マトリックスを繋げていけば、どんな複雑な光学系でも解析できるわけです。

 本例では、行列方式の優位性を十分にお伝えできなかったかも分かりませんが、手法自体はご理解いただけたのではないでしょうか。光学系が複雑になるほど、行列方式の優位性が際立ちます。


 

Optical Common sense Quiz-2-2-answer / 光学常識クイズ 第二段-2-解説

 まず、凸レンズによる実物体の実像は、常に倒立ですから、前問の正立像(ブルーの矢印)は全て不正解ということになります。
また、もし光軸に目盛りが打ってなくて、物点位置も規定されてなければ、A も I も正解になります。Gも紛らわしいですが、Gの像位置がQよりもレンズに近いので、Qよりも像が小さくないとおかしいですね。
 しかし、レンズの焦点位置を明記していますので、正解は B と E に限られるわけです。
ここで、(近軸の)光路図についての考え方ですが、以前にも問題にしましたように、レンズ前に障害物があっても、無い物として描いて、全く差支えありません。あるいは、物の高さがレンズより高くても、レンズ面を延長して作図イメージすれば良いのです。近軸理論ではあっても、作図まで敢えて細く描く必要はないのです。

 次に数式で考えてみます。
物側、像側の焦点を基準にすると、上の図では、
物点距離=-f、像点距離= f ですから、その積=-f`^2となって、ニュートンの公式を満たします。

 下の図では、
物点距離=-2f、像点距離= (1/2)f ですから、その積=-f`^2 となって、これもニュートンの公式を満たすわけです。

Optical Common sense Quiz-2-1-answer / 光学常識クイズ 第二段-1-解説

A(正解)と答えた方が多かったと思いますが、意外に天文マニアで C と答えた方も少なくなかったはずです。なぜなら、ニュートン反射の斜鏡のイメージがあるからです。多分、密かに C と答えてしまった方は、図の右のようなイメージがあったのだと思います。
 自然界ではほぼないのですが、右のように凸レンズ(や凹面鏡)でBに収斂される光束がミラー面に投入されれば、に実像を結びます。は虚物点で、はその実像になります。
 平面鏡単体では、光束を収斂させるパワーがないので、像は常に虚像になり、その存在位置は常にミラー面より向こう側になります。これは、日々、姿見の鏡で体験されているはずです。像は、鏡面に対して、常に反対の対称位置に出来ます。観察者の眼の位置は無関係です。像点が決まれば、前の鏡は無い物として考えれば良いわけです。
 また、”物”と”像”の相互、互換性も極めて重要なポイントです。
 O から発する無数の光線は全て A から発したように反射する。そして、A をめがけて収斂する全ての光線は、O に実像を作ります。

  どうでしょう? このモデルで、物と像の関係がより明瞭にご理解いただけたら非常に幸いです。

Optical Common sense Quiz-2 / 光学常識クイズ 第二段-1

根深い部分で誤解が蔓延しているようなので、さらに掘り下げて、仕切り直しです。

問1:Oは実物点とします。O→P→Q は、Oから発した光線を代表する1本を描いたもので、Qを経過するものとします。(Pは反射点)
 Oの像点として、正しい物を A, B, C から選んでください。

The EYE, the cause of misunderstandings ! / ”眼”こそ誤解の元凶!

 仕事柄、日々眼に関する質問を受けるが、「乱視って、どんな目ですか?」という質問は来ても、近視や正視のことを質問する方はいなかった。酷いのは、「視力0.9以下が近視でしょう?」とか、「遠くが見えないのが近視で、遠くが見えすぎるのが遠視でしょう?」というのもある。
  視力にからめて理解しようとするのが間違いで、上記の屈折異常と視力は無関係なのです。
 ちょっと詳しい人は、平行光線が眼底の手前や向こうで結像する屈折異常のモデル図を覚えておられるかも知れませんが、その手の光路図を100年眺めても、屈折異常の定量的な理解には至りません。
 網膜の中心窩(視線の中心)から発して眼外に射出する光束がどこで焦点を結ぶか?を考えることで、矯正するためのレンズ度数が特定できるわけです。若い水晶体は容易に膨らむ(調節する)ので、屈折異常も正視も、全て、水晶体が調節を完全に解除した状態であることが前提です。
 近視は、中心窩から発した光束が眼前の有限距離に結像する眼です。その点のことを遠点と言います。(以下、省略)
 その遠点を焦点とする凹レンズを眼前に装着させれば、その近視は完全矯正できるわけです。

眼底(中心窩)から発した光束は、眼球内の光学エレメント(硝子体、水晶体、房水、角膜)で収斂されて眼外に出るわけですが、近視は屈折力が過剰なために、平行を通り越して余計に収斂して、有限距離に結像してしまうわけです。

眼の屈折異常を視力にからめて理解(誤解)している方にとっては、遠視は難解のようです。しかし、眼底(中心窩)から逆進する光路をイメージすると、明瞭に理解することが出来ます。
 遠視は、さきほどの近視とは逆で、眼の屈折系による収斂力が足りないため、眼の外に出る光束が平行光線になり切らずに、やや発散した光束で出て行くものです。ピントが合わない点では近視と同じなのですが、若い眼は容易に調節して、上の正視に偽装できる(もちろん無意識、自律的に)ため、当人はほぼ自覚せず、周囲にも分からないことが多いわけです。
 近視の場合は、偽装する手立てがない(水晶体は膨れるのが専門)ので、矯正を放置していても疲れることは少ないのですが、割とよく見える遠視の方が、常に偽装しているので疲れることが多いわけです。特に、幼時の遠視を放置するといけないのは、過度の偽装(調節)をする際に、脳が輻輳(より眼にする)の信号を出し、複視を避けるために、効き目でない方の情報を遮断し、いずれその遮断された眼は弱視になって、成長後には復帰しなくなるからです。そうした事例にずっとかかわって来ましたが、それを正確に理解しているご家族はほぼ皆無でした。「何年眼科に通っても、遠視が治らない!」と言われる保護者の方が多くいました。
 遠視のメガネは遠視を治すためではなく、それを放置することによる弱視化を防ぐものなのです。

 まとめますと、屈折異常というのは、遠点が前方(もしくは後方)の無限遠以外にある眼のことです。近視は、眼前の有限距離。 遠視は頭の後ろの有限距離です。頭の後ろに遠点、というのは、初心者には理解し難いかも分かりませんね。眼の眼底より後ろに向かう収斂光線でないと網膜に結像しない眼です。そういう収斂光線は自然界には存在しませんから、無調節では、遠視は遠くも見えず、近くはさらに見にくい眼だと言えます。(若いと偽装(調節)するので、自覚はないのが普通)
 レンズによる矯正は、その遠点の虚像を、眼前のレンズで前方無限遠に作ってやることです。

 ”老眼” を屈折異常と混同してはいけませんね。身長と体重を混同するくらいに的が外れています。大人が、体重が2kg増えたから、身長も2cm増えただろう!”と思うくらいの誤解です。

 老眼は、水晶体が十分に膨らまなくなることなので、水晶体が一番薄い状態(無調節状態)での屈折状態を議論する屈折異常とは次元が異なるわけです。

 つまり、正視も、近視も、遠視も老眼になります。近視の方が、「俺はメガネなしで近くがばっちり見える!」と自慢するのは、単なるトリックで、遠方用のメガネを掛けたら、たちまち化けの皮が剥げます。凹レンズである近視メガネを外す行為は、それを打ち消す凸レンズをメガネの上に装用するのと同値だからです。
 遠視の方は、一番悲惨で、遠方矯正用の基本度数の凸レンズに、老眼分の凸を加算しないといけないため、近用メガネは凸+凸の分厚い凸となるわけです。
 (適当な度数の)近視の方は、基本の凹レンズの上に凸レンズを加算する考え方なので、見かけ上打ち消されて0(ゼロ)度数で近くが快適に見えることが多いわけです。