松本の光学講座 2024;復習5/Basic theory-4/ 超基礎からの復習-4 反射の法則


 前回の屈折の法則、分かりやすく工夫したつもりでしたが、分かりにくかったでしょうか?
反射の法則の方がずっと明快なので、先にこちらをUPすべきだったかも分かりません。

 今度こそ、すぐに逃げないで最後までお付き合いください。
あなたの居る位置を A(0,1) とし、C に最短路で移動したいとします。
それは簡単で、直線 AC に添って進めば良いですね。

 ここで、条件を付けます。Cに行く前に、X軸で代表される壁を一度タッチしてからCに行かないといけないとします。その最短路を考えてみましょう。
 X軸の壁にタッチする位置 Bn (x, 0) は、0<x<1 の範囲で候補は無数にあるわけですが、その距離を考える前に、C の、X軸に対して対称な点 C’を作図しておきます。
 すると、Bn C = Bn C’ となることが図から明らかです。
 ということは、総経路長=ABn + Bn C = ABn + Bn C’  より、
   
ABn + Bn C’の最短路が 総経路 A-Bn-C の最短路となり、

 直線AC’がX軸と交わる点B2 が最短路となるタッチポイントと言えるわけです。
このように、光線は常に最小所要時間の経路を進むことが分かっています。

 作図に当たって、A,Cに具体的な座標を与える必要はなかったのですが、代数的に検証してみたい方のために、敢えて数値を与えました。

松本の光学講座 2024;復習5/Basic theory-3/ 超基礎からの復習-3 屈折の法則

 光が最小所要時間の経路を通ることから、所要時間の関数を立てて微分することで、純粋に代数的に屈折の法則を導入できますが、数式を敬遠される傾向が分かったので、今回は純粋に幾何学的、視覚的に納得いただけるモデルを作りました。
 光が光学的密度(屈折率)が異なる界面で屈折する事実—-①、また、平面波(無限遠からの平行光線)の波面(光線に垂直な面)は、屈折前後で崩れない—-② ことも前提として受け入れてください。
さらに、光の進行速度が屈折率に反比例する事実。—③ も認めてください。
 つまり、AC間の光の進行速度は、BD間の N 倍になるということです。
 波面ABがCDに至る時、ACを移動する時間とBDを移動する時間が同じでないと、上の前提が崩れます。
  これより、
  sinθ = Nsinθ が確定するわけです。(∵ AC = N・BD)
( x軸より上が空気の例ですが、両サイドともガラス等(/ 液体)であれば、
  Nsinθ = N’sinθ )
*BC=1 と置くと分かりやすいです。

松本の光学講座 2024;復習5/Basic theory-2/ 超基礎からの復習-2

 近軸領域では、光線がレンズで屈折するときの屈折角度は、レンズに入射する光線の高さ h とΦに比例します。入射光線の元の傾斜角度を α とすると、屈折後の傾斜角度(←定義された角度)α’ = α+hΦ となります。
 つまり、レンズを通過する都度、傾斜角度が+hΦずつ加算される、ということです。Φ>0であれば、左から右に進む光線は、下向きの角度 hΦ ずつ曲がる、ということです。
 赤い光線も、青い光線も、同じ角度だけ曲がる、ということになります。
 もともと、近軸という特殊な条件で、” h/距離 ” で定義された傾斜角度 α なので、h/α から距離が逆算できるわけです。
  入射光線②のような傾き α<0 とし、①のように光軸に平行な入射光線の傾き α =0 とします。
 また、屈折光線①’や②’のように下向きに傾いた α >0 とします。
 距離の正負の定義から、自ずと傾斜角の正負も決まります。

今一度、整理しますと・・、
*複数のレンズを密着して重ねた場合、合成度数は、単純に各々のレンズのΦ(度数)を合計したものになります。

 レンズに間隔がある場合は、
 平行光線が最初のレンズに到達する高さ=1として、その光線が各レンズを通過する高さとそのレンズのΦを掛けたものを、繰り返しレンズ枚数だけ加算したものが合成度数になるわけです。
 どちらのケースも、ほぼ単純な足し算に帰結するわけです。2行2列の行列が利用できる所以です。


松本の光学講座 2024;超重要光学常識/ Crucially important Optical Commonsense

レーザーコリメーターを図のようにセットして、スクリーン治具のセンターをビームが貫いています。
 さて、これから何が言えるか?
まず、逆の場合から考えます。
1.図に反して、ビームがスクリーン治具のセンターから外れていた。
   この場合は、「光軸が狂っている。」という判断で正しいです。
2. 図のように、ビームがスクリーン治具の中心を貫いていた。
     →は、残念ながら、光軸が完璧とは限らないのです。ミラー面の高さと角度が、青い線のように都合よく狂っていれば、やはりスクリーンのセンターをビームが貫くことがあるからです。
 つまり、このテストで合格することは、完璧な光軸への必要条件であって、十分条件ではない、ということです。

次に、スクリーン治具をミラー治具に交換してみます。
ビームが完璧にレーザーコリメーターの射出穴に戻って来た!
 さて、これも、光軸が完璧と断言できるのか?
  これも、答はノーです。 なぜなら、青い線で示したようなケースが含まれているからです。
   これも、完璧な光軸への必要条件であって、十分条件ではない、ということです。  
 結論を言いますと、上下2種類のテストの両方で合格して、初めて光軸が完璧だと言えるわけです。

 それから、さらに重要なことは、レーザーコリメーターをチェック、管理できる能力をユーザーが持っているか?ということです。これについては、何度も警鐘を鳴らして来ました。

松本の光学講座 2024;復習4/Basic theory-1/ 超基礎からの復習-1

 上の図は、絵本レベルの光学書や 小、中学校で教わる結像公式を図で示したものです。
負数の概念も、数直線も知らない段階の公式で、物点距離 a も像点距離 b常に>0として扱います。
 下の図は、虚像の時の光路図ですが、a,b>0を前提にした、1/a + 1/b = 1/f が成り立たず、別の公式を立ち上げないといけません。1/a – 1/b = 1/f
 負数や数直線さえ理解できれば、光軸をx軸、レンズ位置を原点として物点、像点の座標を決めると約束すれば、1/b – 1/a =1/f ( 1/s’ – 1/s = 1/f ) という一般式が、全ての結像ケースで成り立つことが分かります。(結像ケースごとに、違う公式を使わなくても良い。)

 それから、一見、a と b という距離同士の関係式に見える結像公式ですが、その裏にある角度関係を見落としてはいけません。
 図の最初に出て来る、α+α’ = γ が始まりだということです。これは三角形の基本定理なので、中学生でも知っていますね。 これも、先ほどの a, b 同様、正負の概念を加えて、上の方の図の α’>0 , α<0 と定義しておけば、一般的に
α’ – α = γ —–① と書けるわけです。
近軸域の極限値では、
γ = h/f となることが分かっていて、1/f = Φ(レンズのパワー)なので、
α’ = α + hΦ と書けるわけです。また、屈折の前後で h は変化しないので、
h’ = h となるわけです。 これらの2つの式を行列で表記したのが、

                        です!

*近軸領域では、α = h/a , α’ = h/b
  これも極めて重要な点ですが、言い換えますと、屈折光線の曲がり角度 γ は、α や α’ とは無関係で、h とレンズのパワーだけで決まる、ということです。現実にはそうならないことが多いですが、それが理想結像であり、それに近付けるために、光学設計者が腐心するわけです。 因みに、近軸追跡で扱う屈折の角度とは、実際の光線の角度のことではなく、tan α として定義された特別な角度です。
 また、α’ = α + hΦ について、h の初期値に何を代入してもかまわない理由は、
α’ = h/a , α = h/b を上式に代入していただけばご納得いただけるはずです。
h/a = h/b +  となり、h が α、α’ の中に隠れているため、h が任意に決められるわけです。(hはもともと両辺に均等に掛けたもの!)

光学講座の当初に提示していました、三角形の角度関係の重要な定理です。
近軸理論では、これが頻出します。



松本の光学講座 2024;復習2/Review/移行マトリックス

移行マトリックスを図示しました。↑

 行列方式の利点は、屈折マトリックスと移行マトリックスを無制限に連結、掛け合わせることが出来ることです。一般的な結像公式は、1/s’ を求めても、次のレンズによる1/s” を求めるには、一旦逆数の s’ を求めた後、さらに面間隔を差し引いてから新たな s を設定しないといけないので、連続して運用するのにかかる手間が著しいのです。

松本の光学講座 2024;復習1/Review

一般的な結像公式(1/s’ – 1/s = 1/f)と行列方式(屈折マトリックス)の表記の関係がよく分かるように、図中でご説明しました。
 一般的な結像公式では、物点と像点を基点としているのに対し、行列方式では、入射点(屈折点)の光軸からの高さhと、その点での光線の方向 α を基準にしています。
 行列方式は、都度、s, s’ がダイレクトには求まりませんが、複数エレメントの光学系では最後に計算すれば良いわけです。

松本の光学講座 2024;応用編-6/ Interesting Drill/ 面白い課題

これは凸レンズ???(課題1)
 前面と後面が全く同じ曲率半径(面パワーの絶対値が同じく、符合が反対)なので、薄レンズだと、度数は0(ゼロ)になるはず!

前面が+10Dで後面が-10Dなので、ほぼ度数はゼロになるはず。問題は、厚みの12mmがどう効くのか?
 実際に近軸追跡をしてみた。↑
 +0.8Dなので、近似的にも 度数 0 とは言えなかった。初めて掛ける弱度の老眼鏡のレンズ度数に近い。

同心球で囲まれた、こんなレンズはどうなる?(課題2)
厚さが均等なので、度数=0 ??

近軸追跡の結果、-5.0Dと出ました。これは、近視用レンズとしては、強度近視の仲間にもうすぐ入りそうな、結構な度数の凹レンズです。物側、像側主点が球心に合致しています。
 高さ10mmの平行光線を実際に光線追跡してみました。かなりの球面収差が出ています。


松本の光学講座 2024;応用編-5/Distortion and the Iris/ 絞りの位置と歪曲

 この問題も結構奥が深いですが、逆に、視覚的、直感的に理解しやすいかも分かりません。
同じレンズ系でも、絞の位置で歪曲の傾向が逆転することがあります。上図のような単レンズですと、絞を物側のレンズ前に置くと樽型歪曲、像側に置くと、糸巻き型歪曲になります。
 グレードの低い虫メガネを見ると③の糸巻き型に歪曲して見えるのは、自分の眼の瞳孔が図の該当位置の絞りになるからです。
 単レンズの場合、図の①の位置に絞りを置くことは出来ないのですが、敢えて置いてシミュレーションすると、歪曲から解放されることが分かります。ほとんどのカメラレンズが、絞を中央にしてシンメトリックなレンズ構成になっている所以の一端について、ご納得いただけたと思います。
 余談ですが、歪曲と像面湾曲が頭の中でごちゃごちゃになっている方が多いように見受けます。
今回取り扱ったのは、“歪曲”であり、像面自体の湾曲とは関係ありません。ですから、作図も敢えて像面が平坦だと相当して描いています。
 絞りの中心を通る光線が、光学系入射前と射出後で平行に出て行けば(つまり角倍率=+1)、歪曲はなくなります。