先月は、最初の8日で抗癌剤点滴が終わり、飲む抗癌剤はありませんでした。 今回は、抗癌剤点滴(ビダーザ)が最初の7日間で、初日から飲むタイプの抗癌剤(ベネクレクスタ)が並行して処方されました。
これが↑ビダーザの分子構造。ビダーザ(一般名アザシチジン)は、骨髄異形成症候群(MDS)や急性骨髄性白血病(AML)の治療薬で、DNAメチル化阻害作用を持つとされています。ビダーザは、細胞内に取り込まれることで、DNAやRNAのメチル化を阻害し、結果として細胞増殖を抑制する作用機序があるとのこと。 今日特にご紹介したいのは、飲み薬(ベネクレクスタ)の方です。実は、この薬はすでに去年も服用したことがあり、飲みやすい薬ではありませんでした。しかし、病状も進行し、他の選択肢もなくなった今となっては、本気で取り組まないといけません。 毛嫌いしていては、効く薬も効かないだろうし、最近、化学への興味が再燃したこともあって、いろいろ調べてみました。
赤い四角で囲んだのが、ベネクレクスタの1日のノルマ。大きな錠剤で、下手をすると喉につかえる。粉砕はだめで、また、手に薬が絶対に触れないようにと、病院側から注意を受けた。殻から出た薬を口に入れてそのまま飲む。(もちろん水で)
さらに、通常は飲んだ薬は、殻をそのまま看護師さんが回収するのですが、この薬だけは、看護師さんが手に触れないように、写真のようにビニール袋に封印して返してくださいとのこと。去年この指示を聞いた時には、「おいおい、人が手で触れない物を飲ますのか?」と大いに反発したものです・・・^^;
これが、ベネクレクスタの分子構造。↑
癌細胞中には、BCL-2という、アポトーシスを抑制するたんぱく質が多量に存在し、正常細胞にはBCL-2はほとんど発現していないことから、ベネクレクスタは、癌細胞のBCL-2を阻害し、癌細胞だけをピンポイントで死滅させることを意図した薬です。 分子構造を見ると、他の薬品同様、複数のベンゼン環やシクロヘキサン環に、いろんな”基”がくっついた構造ですが、どの基がどう具体的にBCL-2に作用するのか、可視化した情報がネット上では見つかりませんでした。 先日、薬剤師さんが薬の説明に病室まで来てくださったのですが、薬剤の分子構造には全く無関心のようで、先ほどの、薬の厳重な取り扱いの理由も含め、知りたかったことは何も聞けませんでした。製薬会社のガイドブックも頂きましたが、薬(ベネクレクスタ)の厳重な取り扱いについての記載はどこにもありませんでした。 薬が効くイメージを具体的に頭に焼き付けておくことは、薬の効果に良い影響があると、私は確信するんですがね。 私は、ん十年ぶりに化学開眼、今回の入院の最初の1週間以内に、周期表 を7周期まで全て、ランタノイド、アクチノイドも含めて暗記しました。(必死に受験勉強をしていた頃も、そこまでは暗記していなかった。^^;) 医療や薬品にかかわる人が、薬品の分子構造や具体的な作用機序に無関心なのは、どんなもんかな???
蛇足ながら、分子構造の略図の解説です。↑
この超シンプルな分子構造は、”ベンズアルデヒド。 先日友人が送ってくれた、”癌の特効薬はすでに発見されていた!”という衝撃的なタイトルの本の中で、著者(京都大学を出て、医師として多くの定評ある履歴を持つ、現役の開業医。)が主張する特効薬がこれ↑、ベンズアルデヒドです。 ベンゼンもアルデヒドも単体では毒なんだけどね。面白いね。
しかし、究極にシンプルな分子構造で、薬価も極端に安い。 実際にはパラの位置にヒドロキシル基がくっついた、水に溶けやすい、パラヒドロキシベンズアルデヒドの形で服用し、体内でベンズアルデヒドが分離するように使用するそうです。 シンプルな物が効くなら、それに越したことはない。しかし、どうして頭ごなしに否定しないで、医学界はちゃんと組織的に検証しないのかな?
↑これが、パラヒドロキシベンズアルデヒドね。 正統派の薬も、より複雑とは言え、所詮、ありふれた元素の組み合わせなんだよね。 これが効いても、何らの不思議もない。 ただ、この薬も長丁場の服用が前提みたいで、1年以上に渡って服用量を厳密に管理しながら漸増して行かないといけないそう。 それだけ待てる患者は多くないだろうね。 こうして唐突に出現する新療法にしても、長年の実績が確立した治療法にしても、効果や副作用は実にファジーで、共通して治療は長丁場。 仮にたまたまの特効薬が出来たとしても、発症のメカニズムが分からないのだから、患者の体質そのものが変わらない限り、何度でも再発するんだろうな。 それにしても、いくら生身の人間を扱う難しさがあると言っても、数学、物理、宇宙工学等の学問と比べると、未だに癌を克服できない医学界と薬学界、恥ずかしくないのだろうか??