松本の光学講座 2024;Roundup-5 / 総まとめ-10/ What is “Astigmatism”?-2 / 乱視とは?-2

 何とか、”乱視”というものを可視化してみました。
直乱視では、水平成分と垂直成分が異なる位置に焦点を結びます。
正確には、焦点ではなく、線状に拡散した”焦線”となります。平面図(Top View)と側面図(Side View)と斜視図をじっくりと見比べていただくと、空間的にご認識いただけると思います。
 天文マニアなら、近視(遠視)であってもフォーカサーの操作でピントが合うことはよくご存じだと思いますが、実は、乱視もあると、いくらフォーカサーを調整しても望遠鏡のポテンシャルを100%享受することは出来ません。
 しかし、「自分には乱視があるけど、望遠鏡だとちゃんと見えるよ!」と言われると思います。
それは、射出瞳に関係があります。射出瞳径=2mm以下で見ることが多い方は、たとえば、通常の眼の瞳孔径が5mmとすると、絞り効果を2.5倍ほど利用していることになり、いわば、インチキなんです。
 ご当人にとっては、残念な指摘かと思いますが、試しに最大瞳径(最低倍率)で望遠鏡を見てください。乱視の影響が顕著に出て来ますから。
 乱視の方は、自律的に最小錯乱円(図をご参照ください)で見ているわけですが、望遠鏡のピント補正では補えないわけで、“点”にはならず、常に錯乱円を見ていることなります。 倍率を高めにして見る傾向の方には、そうした乱視未矯正の方が多いと推察します。
(斜視図では見にくいですが、両焦線の間に、光束が一番収束する、最小錯乱円が存在します。)

 とかく天文マニアは、機材の欠点については、重箱の隅をつつくことに長けていますが、自身の眼の欠陥については無頓着なことが多いようです。


松本の光学講座 2024;Roundup-5 / 総まとめ-9/ What is “Astigmatism”? / 乱視とは?

 ”乱視”も、眼について一般に誤解されているものの代表のようです。
まず、文字面(漢字)のイメージが良くないですね。だから、「あなたには乱視がある!」と指摘されると、大抵、ショックを受けられるようです。
 レンズで矯正できる(正規)乱視は、上の図が示すように、眼の経線によって屈折度が異なる眼です。上図では、きっちり垂直断面だけが近視の眼(直乱視)ですが、角度は様々で、検者から見て、右を基点の 0 °~180°まであります。本例は、水平断面が正視の例ですが、水平断面が少し弱い近視だったり、あるいは遠視だったりするわけです。(厳密に測ると、乱視が皆無な人は滅多にいません。)
 本例の矯正には、図のような円柱状のレンズを用います。分かり易く、文字通り円柱面形状で図示していますが、実際には、メニスカス状に湾曲した、見かけは通常のメガネレンズになります。度がない方向(図では水平方向)を軸と言い、必ず直交した方向が度数最強で、それを強主経線と言います。
 本例では、乱視の度数を C-4.00(Cは Cylindrical 円柱の略)としていますが、仮に同じレンズをもう一枚用意して軸を直交させて重ねると、通常のS – 4.00( S はSpherical の略)のレンズと同値になります。
 ここで、メガネレンズ表記の約束をご紹介します。
水平方向の度数が -3.00Dで、垂直方向の度数が-4.00Dの眼は、S-3.00 : C-1.00 AX. 180° と表すのが一般的です。理論的には、もう2つの表現方法があります。(AXはAxis, 軸です。)
S-4.00 : C+1.00 AX.90°  と、 C-3.00 AX 90°:C-4.00 AX180°  です。 どれも理論的には間違いではありません。不慣れな間はピンと来ないかも分かりませんが、少し練習すれば、理解できます。

松本の光学講座 2024;Roundup-5 / 総まとめ-8/ Range of clear vision of the reading glass / 近用メガネの明視域

 近業用メガネ(老眼鏡)の”明視域”というものを理解していただくために、単純なモデルをご用意しました。眼の調節力(水晶体が膨らむ程度)は、年齢や個人差によって異なりますが、一律に調節力=+2.0Dと想定しています。調節力=+2.0Dとは、水晶体が目一杯に膨らんだ時に、+2.0Dのレンズ相当の水晶体の度数アップを行えますよ、という意味です。目一杯ですから、それを長時間キープするのは疲れるということも、お留め置きください。調節力は個人差が著しいので一概には言えませんが、+2.0Dとは、大雑把に言うと、50~60歳の調節力でしょうか。
 調節力が3.0Dくらいになると、33㎝を見る時に全力を使うわけですから、長時間の近業が厳しくなって来ます。これが、大体やせ我慢の限界で、40歳代の後半になってメガネ店に駆け込むタイミングになることが多いようです。
 上の図からご説明します。
 調節力=+2.0Dの人に+1.0Dの凸レンズを装用させると、無調節の時に1m先まで明視することが出来ます。110cmになれば直ちにボケるか?と言われれば、そうでもないので、狭い部屋であれば、この段階では、遠くがぼけて困る、という印象はあまりないでしょう。で、今度は近くですが、調節力を目一杯に発揮すると、レンズの+1.0Dと調節分の+2.0Dを加えて+3.0Dになるので、瞬発力では33㎝まで見えることになりますが、これも長時間の作業は厳しいでしょう。40㎝くらいで作業するように習慣付ければ、このレンズでも実用になることになります。
 2番目の図は、レンズの度数を2倍の+2.0Dにしたものです。近業距離がより余裕で見られるようになります。ただし、明視域が随分狭く(浅く)なりました。これは、固定したレンズで眼の調節力を加勢してやってるわけですから、より遠くが見たければ、都度、レンズを除去するしかありません。
 3番眼の図は、レンズの度をさらに2倍の+4.0Dにしたものです。
この辺になると、明視域はさらに浅くなります。「もっと近くをよりよく見たい!」というお客さんの要望に安易に乗ると、「前のメガネの方が良く見えた!」と言われかねません。
 一般の方は、”明視域”という概念がほぼなく、度数を上げればさらに良く見えるだろいう!という考えなので、注意が必要です。

Nostalgic Letter / 懐かしい手紙

I recently found an old letter from a gap in the bookshelf.
The sender was Dr. Shotaro Yoshida who was the pioneer of the lens design before and in the midst of WW-2.
Though he was 9 years older than my Father, he never lost the purity and curiosity about Optics through his life.
He passed away at the age of 102, in 2015, which was 2 years after my father passed away.

 吉田正太郎先生の手紙が本棚の隙間から出て来たのでご紹介します。
吉田先生は、父より9歳年上でしたが、事、光学関係については、生涯少年の心を失われませんでした。
 好奇心も旺盛で、私のような者の話も、興味深く聞いてくださり、時にプリズム関係では、「・・・理解できない」と言われたことを逆にご説明するという、おこがましいこともさせていただきました。
 年代的な宿命から、レンズ設計では、日本軍に協力する運命にありました。しかし、先生はレンズの研究がしたかったのであり、戦局には全く興味はありませんでした。
 それでも、東条英機名の辞令を大切に保管しておられ、コピーをいただいたことがありました。確か、”特殊カメラ” の研究で、今思えば、”シュミットカメラ”のことでした。
偵察用の航空機カメラでしょうね。

The Bamboo Shoot, the seasonal food of Japan/ 旬の”筍”

“Takenko”(Bamboo Shoot) is one of the seasonal food of Japan.
But I know it was not regarded as food along with the algae by Western People.
The episode of Japanese lieutenant accused by the WW-2 prisoner at Tokyo trial of the abuse of feeding him with the Bamboo-Roots eloquently show how the Bamboo Shoot was regarded by the Western people.
Nowadays, there may be more western people who know the ethnic Japanese foods such as “TAKENOKO”.
 筍を頂いた。引き抜いたままの物ではなく、すでに茹でてあく抜きまでしてくださっていた。
山椒の葉は、家内が庭で栽培していたもの。旬の味と香りを堪能させていただいた。
 欧米では、筍は、海藻と並んで、食べ物とは見なしていなかった食物なんだけど、最近の日本食ブームで事情は少しは変わったのかな? 第二次大戦中に、捕虜に筍を食わせたことで、戦犯告訴された例が有名ですよね。^^;







松本の光学講座 2024;Roundup-5 / 総まとめ-8/ Your real field of the best view/ あなたの眼の本当の視野?

ちゃんと見えているのは視野のごく中心(網膜の黄斑部中心窩付近)のみ!

 今日は、皆さんをがっかりさせるために記事を書いています。^^;
視力が1.0以上あるのは、せいぜい、腕を伸ばして立てた親指の爪の面積!
信じられますか?
 どうしてこうなるか? ですが、網膜で視力に関与している錐状体視細胞は、網膜の黄斑部の中心窩という、非常に狭い範囲だけに集中しているからです。角度にして1度程度でしょう。
 視野周辺は、桿状体視細胞が多く、視力は非常に悪く色盲で、明るさの感度は錐状体視細胞よりもはるかに高く、望遠鏡で暗い星雲や彗星を見るときに、そらし目(Averted Vision)を使う理由です。

 100度の視野の最周辺までの点像に拘った、超高級アイピースを完全に否定するわけではありませんけどね。同時に、こうした私たちの眼の特性も理解しておくと、財布を軽くしてまで、あるいは重すぎるアイピースでバランスの調整に苦慮してまでして、そうしたアイピースに拘る必要性について、また、違った判断も出てくるだろうね。
 とかく天文マニアは重箱の隅をつつくのが好きなんだけどね。メーカーさんもそうしたマニアに媚びた製品開発をして、今の製品の現状に至っているようですね。
 この人間の視野と視力の特性、嘘だと思ったら、腕時計(秒針付き)を2つくっつけてデスクトップに並べ、秒合わせをトライしてみてください。片方の文字盤を見ている時には、もう片方の文字盤は見えていませんから。



XY limiter knobs in the making

 X-Y 調整ノブにリミット制限を掛けるのは、容易ではありませんでした。
ノブに原点復帰用の矢印シールを貼っていても、ユーザーさんが不用意に180°以上ノブを回転させたら、簡単に原点が迷宮入りになっていました。180°以上回すと、矢印の復帰の仕方で、ノブを1回転させてしまうからです。
 ノブを回し過ぎないように、サイトで警告していましたが、違反者は無くならず^^;、リミッターをセットするに至った事情は、以前にもご説明した通りです。^^
 以前に、テレビで、リサイクル事情のドキュメントをやっていて、ペットボトルのリサイクル工場が、キャップを除去する施設に**億円を投じたとが言っていましたが、それに似てるな!と思ったものです。 違反者がいなければ、不要な施設、装備なんですが、人間、仕方のないものですね。

 

松本の光学講座 2024;Roundup-5 / 総まとめ-7/ Correction of the Eye / 眼の矯正原理

 「眼は情報の入り口、ここを誤解すると、全てを誤解することになる。」
と広く一般に主張すると、ちょっと過激に響くと思うけど、では、カメラマニアとか、天文マニアとか、眼と密接にかかわる人に限定するとすれば、決して過激ではなく、真っ当な意見だと思いませんか?
 真ん中の”正視”以外を、”屈折異常”と言うわけですが、前回もご説明したように、屈折異常とは、水晶体が無調節の時に、網膜の中心窩から出た光束が、前方の無限遠以外で結像する眼のことです。そこに、”視力”というものが介入する余地はありません。ピント位置の問題ですから、ピントが合った状態での視力がどうなのかは、全くの別問題です。
 そして、そのピント位置をどうやって修正するかは、前回もご説明しましたが、今回はより分かり易いように、矯正レンズを追加しました。
 上図から容易に推察できるように、近視矯正の凹レンズの場合は、レンズが角膜から遠ざかるほど、より強い凹レンズが必要になります。つまり、メガネのレンズが眼から離れるほど矯正効果が弱まるわけです。一方で、遠視矯正用の凸レンズの場合は、レンズが角膜から遠ざかるほど、より弱い凸レンズで間に合うことになります。つまり、レンズが離れるほど矯正効果が高まるわけです。