55FL-BINO (自作-その2)

 EMS本体部分をのみを作っていただき、binoを組み立ててから1年弱が経ちました。普段観望している自宅のベランダからは天頂から東側しか見えませんので、1年前のリポートではヒアデスやオリオンの中心部、プレセぺの眺めに感嘆したことまでしかお伝えしていませんでした。その後空が1周して、や座、いるか座、こうま座などの小さな星座や、ファインダーでは狭すぎる大きな星団(かみのけ座そのもの(きれい!)、Melotte20(ペルセウス座αのアソシエーション、動きが感じられてヒアデスより凄い!)だけでなく、流星(数時間で数個は見られます)や人工衛星(小学5年生の息子がなぜか人工衛星が気に入ったようで、偶然視野に入ってきた人工衛星を追尾しては喜んでいます。SkySafariでは人工衛生の動きも名前もリアルタイムでわかって、すごい世の中ですね)までもが観望対象になっています。光害地でのdeepskyといえば明るいメシエ天体がせいぜい、という思い込みがありましたが、そうではありませんでした。

 ところで、はじめに組み立てたものはとりあえず見られるようにはなったというだけで、重心がかなり高く、天頂付近に向けるとビデオ雲台のカウンターバランスでは足りずに、垂直回転軸のクランプを思い切り締めても筒先がゆっくりと天頂を向くというような状態で、パン棒を常に握っていなければなりませんでした。そこでこの間は主に架台の改善に取り組んできて、最近ある程度満足できるものになりました。以下はその変遷です。

0. フォーク式 未遂
 まず思いつくのはフォーク式架台です。しかし運搬時のコンパクトさ(小さなカメラバッグと三脚ケースにすべてが入る)が台無しになってしまうため、この方法は試さずに通り過ぎました。

1. カウンターウエイト/バランス方式 失敗
 そうなると次に思いつくのは、鏡筒を載せている台座から筒先側に,垂直回転軸を取り囲むようにコの字状のアームを出し、先端に(ペットボトルを利用した)カウンターウェイトをつけるということでした。これによってバランスはましになりましたが、EMSの精悍なイメージには全く似合わない残念な外観になってしまうのと、重さを打ち消す目的で反対側に重いものをぶら下げるという過剰な感じが気に入りませんでしたので、1~2回ですぐにやめてしまいました。次にバネやゴムなどで筒先側に力をかけようといろいろ試してみましたが、かなり強い力が必要だったのと、やはりスマートさに欠けますので、早々にあきらめました。

2.中軸式架台もどき 失敗
 その後、接眼側の重さを筒先側に負荷を掛けることで打ち消すという「しつこい」やり方ではなく、垂直回転軸近くに鏡筒の重心をもってくるという、まっとうな方法はないものかと思案していたところ、K-ASTECさんの「レボルビング装置」というものが目に止まりました(写真1)。本来はカメラの画角を回転させるための装置だそうですが、どうも中軸式架台に見えて仕方がありません。写真のように台座を固定すれば、鏡筒移動式の中軸式架台もどきができそうです(台座がある時点で本質的に違うような気も・・・)。また簡単な水平回転部にレボルビング装置を固定すれば、ビデオ雲台部分は不要になり、全体のコンパクト化と軽量化にもつながりそうです。かなり期待しながらこのパーツを手に入れて少し試してみましたが、重心が高くてうまくバランスがとれません。また、55FLは焦点距離が短く、重心を下げると今度はレボルビング装置のリング部分とEMSが干渉してしまいます。これには未練が残りながらも、既存の三脚と雲台ももったいないし、いったん置いておいて、また別の方法を考えることにしました。

3. “Aspended”式 成功
 今ある三脚と雲台を前提として、長い台座の上に二本の鏡筒を配置する以上、どうしても重心が垂直回転軸から遠ざかります。しかし台座の下に鏡筒を配置すれば重心が垂直回転軸に近づくし、手のひらの上に傘を立てているような上載せ式とは違って、安定感もありそうです。しかし目幅を確保しつつ上載せ式と同じように左右対象に配置することは、鏡筒やEMSと雲台が干渉するためにできません。
 そこで台座(上にあるので鴨居?)の片側に鏡筒を寄せてしまい、もう片側をクイックリリースクランプで固定するという配置にしてみました。そのために鴨居の部分は以前のものより長いもの(SUNWAYFOTO, DPG-3016)に交換しました。ただこれでは当然左右のバランスが相当崩れてしまいます。そこでささやかながらウェイトの役割を兼ねて、鏡筒の反対側に小型の自由雲台を経由してSkySafari閲覧用のiPadを取り付けました(写真2~。これも「しつこい」やり方なのでは?いや、ウェイトのためのウェイトでなくiPadがたまたまウェイトになっていると考えることにしてセーフと判定)。
 これでもまだまだアンバランスなので、雲台とクランプには負担をかけてしまっていますが、いまのところなんとか持ちこたえてくれています。何より水平回転軸はもちろんのこと、垂直回転軸のクランプをほとんど締めなくても天頂までスムーズなフリーストップが実現できており、快適に眺めることができるようになりました。鴨居部分には傾斜センサなどのアクセサリを取り付ける余地も十分にあり、発展性もありそうです(水平軸回転のエンコードはどうしたものか・・・)。
 このような方法は既にどなたかが考案なさっているのだろうと思いますが、使い勝手もよく気に入りましたので、”アスペンディッド式”(aspended=asymmetrically suspended)、つまり”非対称懸垂式”架台などと名付けて一人で悦に入っています。これに慣れてしまうと以前のマウント方法が異様なほど腰高で、不格好に見えてきました。一定レベルより大きな口径のbinoでは左右の重量バランスの崩れが許容範囲を超えますが、小型binoの前後の重量バランスを解決する手段として、aspended式はひとつの選択肢になりそうです。

 これも松本さんのHPの内容がヒントになっているような気がしますが、どこに書かれていたどんな内容なのは思い出せません。。。

 
Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 今年の1月19日にレポートをいただいていた55FL-BINOの続報をいただきました。トップヘビー(今回は鏡筒と直角(天地/高さ)方向のトップヘビー)はBINOを自作する際の一つの大きな課題なわけですが、試行錯誤された上、合理的な解を見つけられましたね。 自作派の方々には良い参考になるのではないでしょうか。 これからさらに到達されるであろうところを、楽しみに見守らせていただきたいと思います。

EMS/EMS-BINOユーザーさん訪問記(2015年11月21~22日)/ Visiting EMS users

今回の旅行の当初の目的は、数ヶ月前に嫁入りしたFS102-BINO(EM200赤道儀仕様)が兵庫県のマニアの方の共同観測所(峰山観測所)に設置された姿を見せてもらうことでした。代表者のOOSUGIさんが招待してくださったわけですが、私の希望から、そこから車で1時間半ほどの星尋荘天文台(OGAWAさん邸)もコースに含めていただき、姫路からはもっぱらOOSUGI さんの車で案内していただくという、気軽で贅沢な旅を楽しませていただきました。
I have made a two day trip in Hhogo prefecuture to visit four private observatory sites of my clients.

さらに、やはり兵庫県内在住で”のっぽ君1号(15cmF8-BINO)、同2号(15cmF5-BINO)のユーザーのYAMAMOTOさんにも合流いただき、帰路の朝にはYAMAMOTO邸も見学させていただき、大変濃い旅をさせていただいたわけです。

時系列に今回の楽しい旅の内容を記録に留めておきたいと思います。
まずは、11月21日の午前10時半頃、OOSUGIさんとYAMAMOTOさんに姫路駅で拾っていただき、車で1時間ほどの山間部にあるOOSUGIさんたちの峰山観測所に向かいました。FS102-BINOは、通常は赤道義から回転装置ごと外して、密閉保管箱に丁寧に保管してくださっていて、当店の片隅で埃を被っていた頃よりもずっと綺麗に管理されていて感激しました。

The group’s ovservatory headed by Mr. Osugi. The main scope is the FS102-BINO on EM-200(Takahashi) equatorial mount which was taken over from me several months ago.

ここは短時間で切り上げ、次に向かったのは星尋荘天文台(OGAWA邸)です。実は、そこでは、OGAWAさんとの久しぶりの再会の他にも、一つの大きな目的がありました。それは、以前にそこに里子に出していた猫のクーと再会することでした。クーとは6年ぶりの再会でした。普段、自由気ままに広いOGAWA邸の敷地や近隣地域を走り回っているクーでしたが、名前を呼ぶと、ニャーと言いながら擦り寄ってくれました。犬と比べれば淡白な反応ではありましたが、OGAWAさんによると、まだ私を覚えてくれていたようで、感激しました。

Another important purpose of this trip is to see Coo, I parted with six years ago. Yes, Mr. Ogawa is the step-keeper of him. I was very happy to see Coo who seemed to remember me in spite of the long term of no see.

星尋荘と3キロほどしか離れていないところに、EMSユーザーの方(OKAMURAさん)の観測所(龍星庵)があり、訪問させていただけるとのことで、私を含めて4名でOKAMURAさんの観測所を先に見学させていただきました。 それはそれは、立派なスライドルーフの観測所で、2つの大型赤道義が巧妙に設置されており、機材も優秀かつ華麗な物ばかりで圧倒されました。OKAMURAさんはお医者さまで、開業しておられる岡村医院の屋上の一角に観測室を備えておられ、お人柄から、自然に星仲間が出入りされるようになり、環が広がっているそうです。

Dr. Okamura’s sliding roof was full of fabulous telescopes as you see. He is a user of my EMS-UL for the single use.

その後、また星尋荘に戻り、あいにくうす曇りの天候ながら、ドームの主砲の40㎝ニュートン赤道義や、別に併設されたスライドルーフ観測室をじっくりと見学させていただき、20時過ぎまで下の談話室で歓談させていただきました。

Mr. Ogawa keeps a 4-meter dome,40cm Newtonian on equatorial, and a slinding roof respectively.

15cmF8-BINO; from New York to Ono-City, Japan

普段は観測棟には入らないクーですが、帰り際には、真っ暗の中を見送りに出てくれ、横腹をすりすりしてくれました。
OGAWAさんは、何度も当サイトにリポートを投稿してくださっていますが、実は、行き場を失いかけていたクー(猫)を引き取ってくださったのが、このOGAWAさんなのです。

玉の輿に乗ったクー

OGAWAさんの過去のご投稿:
ISS観望記
ニューヨークより

翌朝(22日)は、またOOSUGIさんに姫路のホテルで拾っていただき、YAMAMOTOさん邸に寄り、のっぽ君1、2号機と再会しました。出来立ての15cmF5-BINO(version-10)はYAMAMOTOさんの手によって、真鍮ウェイトやハンドル部品が鏡のようにピカピカに研磨され、先日お引渡しした時点よりもさらに洗練されていましたが、初期の15cmF8-BINO(のっぽ君1号)も大変よく管理され、現役をしっかり果たしていて感動しました。

Mr. Yamamoto is the owner of the old 15cm-F8-BINO and the new 15cmF5-BINO.

2006,1/23;22:22, by Mr. Yamamoto (North Sky above his House)

そこでしばらく歓談、写真撮影をさせていただいてから、また3人で鳥取のメガネのマツモト(当店)に向かいました。(車で送っていただいた。^^;)

実は、この旅はそれで終わりではなく、もう一つの大きな目的がありました。それは、私からしますと、CAPRI102ED-BINOの納品であり、OOSUGIさんからしますと、その引取りでした。
当方には正午過ぎに付き、最終的な追加工やご説明、また歓談をしている内に時間は瞬く間に過ぎ、OOSUGI さんと YAMAMOTO さんは16時少し前に CAPRI102-ED-BINO と共に帰路に付かれました。

Mr.Osugi and Mr. Yamamoto kindly drove me home and Mr. Osugi took his finished CAPRI-102ED-BINO home in his car. (I went there by train and I could not bring it with me.)
最後に、この楽しい旅をずっとご案内くださたOOSUGIさんとYAMAMOTOさん、そして快く迎えてくださったOGAWAさんとOKAMURAさんに、改めて心よりお礼申し上げます。