今晩は、ID21番のトラです。今日、オーストラリアから帰国いたしまし た。明日からアメリカ出張なので、とりいそぎレポートいたします。
今回は、東京のコプティック星座館が企画したツアーに参加し、2004年5月15日から 23日までの日程で、2つの彗星と南天の観望に行ってきました。観望場所は、ニュー サウスウェールズ州クーナバラブランという、サイディングスプリング天文台のある 村の飛行場と競馬場です。飛行場に設置したシュワルツBino150Sの写真を添付いたしま す。
機材は、シュワルツBino150S、ニンジャ320、ニコン18×70IF、ニコン7×50SPで、これ らを仲間と分担して持ち込みました。写真用の機材は諦めました。
彗星については、地平線にあるユーカリの枝葉の真っ黒なシルエットの間から、リニ ア彗星がその筋模様の尾や青緑色のコマを見え隠れさせながら没していく様子を見る ことができました。立体感のある地上風景と彗星とを、同時に自然な美しさで観望で きたのは、空の透明度と15cm双眼の組み合わせによる幸運でしょう。
天の川は、非常に明るくて星の密集度も高いため、どの部分がカタログ番号を付され ている星雲星団で、どの部分がそうでないのか区別するのが、時折困難でした。濃い 銀河の中に濃淡・大小さまざまな暗黒星雲が浮かんでいる様子を広視野の双眼で見る と、(星空を背景に星雲星団が浮かび上がってくるという通常の見え方とは異な り、)深い凹凸のある影を伴った面のように見えました。
もちろん、個別の星雲星団についても、極薄緑から淡い小豆色のグラデーションと暗 黒の襞のあるエータカリーナ星雲、不気味な泡状の暗黒部分があるタランチュラ星 雲、中心まで完全に分離している(シンチレーションが感じられない)満月サイズの オメガ球状星団、ディスク状の中心を持つNGC104球状星団、圧倒的星数のNGC3532 散開星団、内外に多数の小さな散開星団が散らばる大マゼラン銀河、暗黒帯内部の濃 淡までみえるケンタウルスA電波銀河、フィルターなしで無数の微光星を背景に浮か ぶ網状星雲、UHCフィルターで淡い複雑なフィラメント構造を見せるガム星雲、 等々、写真のイメージをはるかに超える生の姿を擬似立体感をもって楽しむことがで きました(とはいっても、一番楽しめたのは、180度に広がる巨大エッジオン銀河、 つまり天頂にバルジのある天の川の肉眼視でしたが)。
幾晩にもわたって徹夜で観望をするので眼の疲労が心配でしたが、アイリリーフの長 いアイピースを使っての双眼観望、毎日のビタミン剤摂取、昼間の爆睡により、ある 程度まで眼の疲労を軽減することができました。
普段、見慣れない南天では、エンコーダによる導入・対象確認が大変役立ちました。 知らない土地でこそ、カーナビも活躍しますよね。
ところで、海外への運搬方法については、今年のお正月から松本様にご相談にのって 頂きながら検討を開始しました。国内の移動観望で何度も試行錯誤を行った末、今回 実施した主な工夫は以下の通りです。
(1)鏡筒のラッパ部分と合焦装置との間で鏡筒を分解し(ここが最も光軸が狂うリ スクが少ない)、また、フードを巻きつけ式のものに交換して、鏡筒長を短縮する。
(2)合焦微動ハンドルの側面の抜け止めネジを緩め、微動・粗動軸を合焦装置から 分離し、ショックを受けた場合の微動・粗動軸の狂いを防止する。
(3)三脚と三脚架台をぎりぎり使用に耐える程度の小型軽量のものに交換する。
(4)鏡筒を固定するプレートの耳軸を、HF経緯台のフォークの耳軸受けで締め付 けた上で梱包し、耳軸方向へのショックを受けた場合のプレート耳軸とフォークの両 方への損傷リスクを軽減する。
(5)全てのネジの上にテープを貼りつけ、振動によるネジの緩みや紛失を防止する と共に、予備のネジと軽量な工具一式を持って行く。
今回は、松本式双眼望遠鏡をオーストラリアに持ち込めたおかげで、彗星や南天を より美しくリラックスして楽しむことができました。このような機材を製作していた だきましたこと、心からお礼申し上げます。
「トラ」
Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;
「トラ」さんより、オーストラリア遠征のリポートをいただきました。
写真から、現地の広大さを感じますが、実際に体験すれば、こんなものではないのでしょう。
濃い銀河の中の暗黒星雲等の描写を読まれ、居ても立ってもいられなくなった読者の方も多いのでは、と想像します。
私も「180度に広がる巨大エッジオン銀河」と言う体験をしてみたい!
オーストラリアまでの150S-BINOの運搬にも周到な準備をされました。 最初から搬入を諦める方も多いと思いますが、 見事な実例を作ってくださいました。