1.使い勝手編
1-1.光軸調整:
初期組み立て時に、左右のアイピーススリーブが平行になるよう EMSを(結構適当に)装着し、いきなり恒星を200倍で見ました。 それでも左右の像は一致しました(もちろんXY調整機構は使用しましたが)。 結構心配していたのですが何の問題もなし。ただその後昼間に見たら 少々狂っていました。やはり基本に忠実、昼間にあわせたほうがいいですね。
1-2.合焦部分:
第4世代用の合焦装置、使いやすいです。
動きが渋めなので高倍率での調整時にはさすがに像は揺れますが、ガタや バックラッシュが全くないのでピント合わせ自体はしやすいです。
しゅう動抵抗が大きいので、粗動のほうはあまり使わないことが前提に なっているみたいなのですが、アイピース交換時に大きく移動させるときは 微動の調整範囲内でも、微動で送るより粗動の方が使いやすかったです。
ただ大きく動かすのは、ピント位置が他と大きく異なるNagler22mmと他の アイピースと交換するときだけで、その他の場合は一度バックフォーカス を調整したらその後粗動を使うことはないです。
1-3.目幅調整:
スライド式の目幅調整ですが、簡単に目幅が合いました。 ヘリコイド式と、どちらがいいかは一長一短ですが、私はスライド式で十分満足です。
1-4.全体的に
何のストレスもないです。長年の工夫がたくさん反映された結果だと 思います。すばらしいです。
2.見え方編
(空は街中、4.5等が見えるくらいの感じです。)
2-1:低倍率
M35,M41,M42,M44,M45などの大型の星雲星団を見てみました。 アイピースはNagler Type4 22mm(30倍)とPENTAX XL40mm(17倍)です。 手持ちの小型双眼鏡と(当然)全く違う光量で、街中でもこれらの 星雲星団は見て面白い程度に見ました。
90°対空双眼なので本当に楽に長い間のぞけます。ひとたびのぞくと、 気づくと結構長い時間がたっていたりして、びっくりします。
早く夏の天の川を見てみたいところです。
2-2:高倍率
土星、木星を見てみました。
アイピースはMeade UW6.7+TeleVue バロー2.0x (200倍)です。 シーングは何とかこの倍率が使える程度。
像は感動ものでした。 単眼に比べ像劣化が全くなく明るくなっている像です。しかも単眼より 同じ倍率でも大きく見えます。特に木星は200倍なのにとてつもなく大きく見えました。
大きな望遠鏡+双眼装置でも同じような像は見えるのかもしれません。 しかし温度順応時間が短く、シーングにも強く、EMSアポ双眼のほうが断然 お手軽のようが気がします。
リバウンドを考えながら移動させなければいけませんが、HF経緯台でも この倍率なら追尾はそれなりにできます。
スケッチや写真撮影を行わないのなら、惑星用にアポEMS双眼お勧めです。 (でもこれで追尾できるようになると、さらにいいんですけどね。)
2-3:地上の風景
ここもアポ双眼が得意なところです。像は一言でいうと「完璧」です。 ものすごくコントラストが高く、明るいです。100mほど先の木を見ていたの ですが、枝の前後関係や青空との対比がものすごくよく見えました。
3:その他
鏡筒はいろいろ迷ったのですが、自分としてはいいものを選べたと 思います。
集光力は大型アクロに負け、高倍率の像は長焦点アポやフローライトに 負ける鏡筒ですが、この鏡筒はかなり高いレベルでそれらを両立していると 思います。
大きさ的にも小型と大型の間ぐらいです。海外遠征に持っていくのは無理 でしょうが、平日に30分だけ見るために外に出そうと思える大きさです。当初は中途半端になるかと思い、 小型の高倍率用と大型の低倍率用を1組ずつそろえようかとも思ったのですが、 見事にこれ1台でそれぞれの役割を果たしてくれそうです。
究極を求めず、1台であれもこれもとやりたい人にはお勧めです。
4:終わりに
松本さんへ。忙しい中質問や仕様変更にすべてお答えいただき、 これだけのものを作製していただきありがとうございました。
村山 義彰
Yoshiaki Murayama
Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;
村山さんより、詳細、的確なリポートをいただきました。村山さんは去年の望遠鏡サミットでも お会いしましたし、他の会場等でもEMS-BINOを何度も見てくださったようで、素早く使いこなしておられる ことに納得ができます。 最初にED115でのご相談を受けた時には、正直、やや中途半端なご選択のような気もしたのですが、実際に 出来たBINOを覗いてみて、新鮮な感動を覚えました。BINOが完成すると、まず店先から地上の風景を見るのですが、 そのコントラストの高さと視野の明るさは特筆物でした。 口径115と聞きますと、1が二つ続く響きからか10cmクラスであるかのような 錯覚に陥っていたのですが、よく考えてみますと、ほぼ12cmであり、実効の集光力は恐らくアクロマートの12cmを越えて いると思われます。
鏡筒の短さに加えて頭部の軽い鏡筒で、重心をかなり手前に持って来ることが出来、天頂と水平に向けた時の接眼部 の高さの変化が非常に少なく、快適な操作性を約束します。 オリジナルの合焦装置はSCHWARZ-SタイプのBINO用に確保しており、手作りで製作が追い付かないもので、正直使いたくなかったのですが、村山 さんの熱心さに負けました。^^; 標準の繰り出し装置でも11cmくらいの口径は確保したと思いますが、やはりフル口径を確保された村山さんの判断は正解でした。 より完璧を目指すことで、1台ごとの製作時間が延びる一方ではありますが、EMS-BINOの進化のためにはユーザーの方の激励に励まされきながら前に進むしかないと思っています。
(蛇足ですが、ED115は鏡筒径が140mm(SCHWARZ150に匹敵)もありますので、HF経緯台は幅広改造仕様が必要です。)