ZenithStar80ED-BINOMr. Akazawa in Osaka  

 昨今大変お手間をおかけいたしました、ZenithStar80ED BINOですが 自宅屋上にて初飛行する事ができましたのでご報告させていただきます。

 私は大阪市内のかなり明るい空の下に住んでおります。さらに当日は、 本が読めるくらい明るい月夜だったので月と土星くらいしか見るものがあ りませんでしたが、あまりにきれいなので見入ってしまいました。 特に月は、何かが生息しているのではないかと月面を探し回る感覚で、 あっという間に時間が経ってしまいました(当然何もいませんでしたが)。

 私ですが、高倍率側では、LV2.5mm、アッベ・オルソ4mm、LV6mmの3種 のビクセンのアイピースを昨年注文時からこつこつ集めておりました。 これらを見比べた結果ですが、月と土星ではオルソ4mmが断然おもしろ かったです。写真のアイピースがそれですが、フタと見間違える小さいコレ が結構使えます。1つ3000円はお買い得でした。

 しかし、このオルソの4mmを使って感じましたが、【新型目幅調整機構】 がなければ、操作に不慣れな私はこの針の穴のような覗き口のアイピース をうまく合わせられなかったと思います。この目幅調整ですが絶妙なタッチ が最高です。

 それと便利であったのが、ほぼ完成した自作の【両耳ポルタ(仮称)】です。 ポルタの微動装置で、上下左右に月を嘗め回すように見る事ができ、逃げる 土星もダイアル操作で簡単に追尾できました。また、この両耳ポルタは、エレ ベータ付きの大型カメラ三脚(ベルボンMark7)に載せており、月と土星を同 じイスに座ったまま見る事ができ大変ラクチンです。 なお、私の両耳ポルタが活躍できるのは、完璧にBINOのバランスを調整 いただいた松本さんのおかげである点を補足させていただきます。

最後に、松本さんの確立された【正立】【双眼】【光軸調整】【アイピース交換】 【光路長確保】などなど多数のEMSの技術と、最近多少お安くなった【ED望遠鏡】、 そして今回の新ネタの【微動目幅調整】【微動両耳ポルタ】の要素が加わる事で、 このZenithStar80ED BINOですが、私の屋上展望スタイルに最適の機材になった のではないかと思います。

今度は暗い空にて星雲、星団の観測レポートができましたらご報告させていた だきます。その時は、両耳ポルタが完成できなかった場合を想定して購入いた しました、【T型経緯台】の使い勝手も合わせてご報告させていただくつもりです。
では失礼いたします。

大阪市 赤澤

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 実は、今日、赤澤さんより上記BINOのファーストライトの第一報をメールでいただきました。これは中間報告で、後日詳しいレポート をいただけるとのことでしたが、新鮮な情報に価値がありますので、無理を言ってまとめていただきました。

 赤澤さんは、当初12cmF5(アクロマート)BINOをご希望でしたが、遠征よりも大阪市内で観察されることが主になることを 考慮され、月、惑星を主体にして、口径との trade-off の結果、より小口径のEDに変更されました。

 今回は、ちょうどコンパクトなBINOの新型を考えていた時期と一致したため、製作段階で試行錯誤を繰り返しました。 最初は超軽量を目指したものの、市販鏡筒の重量の制約や”BINO”という構造上から来る不可避のモーメント増等があって、現実的な選択 を迫られる部分もありました。
 しかし、最終的には、8~10cmクラスのBINOの汎用マウントの新型に大きく近付くという収穫を得ました。 現在設計が煮詰まりつつある汎用スライドマウントは従来の汎用型スライドマウントの新型となるもので、今回の赤澤さんのモデルとも 大きく異なりますが、このモデルが大きな方向転換のきっかけとなったことは間違いありません。

 2月17日に豪雪の中を、完成したBINOの受け取りにお見えいただきましたが、その時点で赤澤さんが持ち込まれたポルタ改造両フォーク架台は まだ試作段階でした。 今日、仕上がった架台の写真を見せていただき、試作段階とは見違えるほど綺麗に仕上がっていて驚きました。

 写真から、随所に工夫の跡が見えますが、ぜひ次回のリポートではその辺もご説明いただけましたら幸いです。

 急なお願いにもかかわらず、急遽リポートをまとめてくださってありがとうございました。 追加のリポートも楽しみに お待ちしています。


NP127-BINO(自作)(2007年11月25日)

かねてより計画中であった松本式EMSを使用した屈折双眼望遠鏡が完成したのでご報告いたします。

 最初の始まりは松本式NP101双眼望遠鏡でした。この機種で完全に屈折双眼望遠鏡の素晴らしい魅力にとりつかれ、 無謀にも大口径化へと進んでしまいました。
 まずは鏡筒選択です。中・低倍率で広視野を楽しむことを重点に鏡筒を選びました。結果、鏡筒はNP127 (660mm口径比5.2) に決定です。TOA130や現在単眼で使用しているTEC140などと随分悩みましたが、小さく軽いこと(1本7Kg弱)と焦点距離が決め手 でした。31.7mmサイズのアイピース(パンオプティック24mm)でさえ33倍2.3度の視野が取れます。
 鏡筒は固定式として目幅調整は松本式EMSヘリコイド式を使用、また筒外焦点距離の調整のために接眼部をフェザータッチ フォカッサーに変更しています。ヘリコイド式EMSの使用がこれほどよいとは思いませんでした(以前のNP101双眼は鏡筒平行移動 式でした)。ヘリコイドの質感は最高ではありませんが、現在望み得る一番良いシステムではないでしょうか。松本式EMSの発明で 私のようなアマチュアに双眼望遠鏡の道が開けたのだと思います。
 架台はフォーク式経緯台でTG-Lのフォークアームを2本と水平回転軸を流用し手元にあったビクセンのピラー脚使用にしまし た。ノブスターを利用し工具無しで簡単に組み立てができます。架台は鏡筒が小型(通常の10cmより少し大きい程度)であるため にフォークアームの間隔も狭く作製することができて十分な剛性を確保することもできました。とにかく小さいことは重要な性能 の一つだと思います。
 仰角はおよそ85度です。ベースプレートの一部を切り込んで鏡筒との干渉を避けています。フォークアームを寝かせればよい のですが、その工作精度に自信がなかったこととベースプレートとフォークアームの固定ネジの強化をしていないので垂直で妥協し た結果です。もともと経緯台では天頂が特異点になるのでそれほど気にはなりません。
 バランスシステムはハンドルを利用してロスマンディーのバランスシステムを流用しています。これは垂直方向のバランスも 取れるのでなかなかよいシステムです。本当はハンドルをもっと長くして鏡筒の保護にも利用したかったのですが、工作機械の大き さの制限があり予定より短くなっています。架台の塗装はマークエックスブルーにするつもりでしたが、実際に見せてもらったペン タックスMS-3Nのグリーンに心を奪われ、外注でペンタックスグリーンに塗っていただきました。鏡筒と組み上がった姿はかなりフ ォトジェニックです。
 ファインダーはテレビューのスタービームと宮内の5cm正立ファインダーを使用しています。たまたま持っていただけで特に 選択の理由はありません。  自動導入は必要ありませんが惑星をじっくり観る場合に自動追尾が欲しくなります。完全なるフリーストップと自動追尾の両立 を可能とするシステムが理想・・・ですが、これについてはまだ具体的にアイディアがまとまりません。実現はまだまだ先になり そうです。私自身は30分も追尾してもらえば十分なのですが・・・。
 アイピースについてはまだ決定していません。
通常は1.25インチサイズアイピースのテレビュー パンオプティック/24mm(27.5倍2.3度@瞳径4.6mm)、ナグラータイプ5/16mm( 41.3倍1.9度@瞳径3.1mm)の使用頻度が高いようですが、最近はテレビュー イーソス13mm(50.8倍1.9度@瞳径2.5mm)がデフォ ルトになっています。さらに広視野を望む場合はパンオプティック27mm(22.4倍2.6度@瞳径5.2mm)を使うことが多いようです。 アイピースとの組み合わせでは4度弱も視野も可能ですが、星像の美しさや視野のコントラストを考慮すると上記のようになりまし た。中・高倍率は経緯台なので必然的に広視野が得られるアイピースになります。高倍率は双眼効果?で132倍程度でかなり満足し ています。
 星空の下での報告です。アイピースの選択はイーソス13mm(50.8倍1.9度@瞳径2.5mm)です。この組み合わせでは視野のほと んど端まで星が「点」です。歪曲収差は非常に少なく、フリーストップで視野を動かしても違和感がありません。中心部のコントラ ストも十分高いようです。超広視野と双眼効果でそのまま肉眼で見ているような錯覚に捉えられます。アイレリーフは15mmでアイポ イントがややシビアですが、双眼なので目の位置はほぼ固定されるためか(しかも星空の背景は黒い)ブラックアウトもそれほど気 にならず、何ら問題はありません。ただ、どうしてもアイレンズと眼球の距離が短くなるのでアイレンズが曇りやすくなります (興奮しているためでもあります)。架台の強度も十分でしかも非常にスムース、おかげで余計なことに気を回さず星空に浸るこ とが出来ます。
 M31では伴星雲が浮遊している感じがします。この浮遊感は初めての経験でした。M42ではトラペジウムがあれだけはっきり 離れて見えるのに視野内に小三つ星が入っています。プレアデスも星がゴチャッとではなく離れた感じで全部視野内に入ります。 二重星団も十分離れているのに同一視野です。しかも中心部では擬似立体感を味わうことが出来ます。M13は背景?の星野に周辺が 星に十分に分離した状態で浮かんでいます。M57も然り。これらは初めての経験でした。
 なにぶん高価な機材であり、またほとんど工作経験のない状態での制作でした。架台のアイディアを頂いた井上さんをはじめ として鏡筒の入手に尽力していただいた吉田さん、奈良部さんや三野輪さん、服部さん、野木さんらのアドバイスやご協力が無けれ ば完成まではいたらなかったと思います。 もちろん松本さんのEMSが存在したからこそ実現できたシステムであります。この場をか りまして厚く御礼申し上げます。
 最期に素晴らしい星空双眼視の世界を我々アマチュアにもたらしてくださった松本さんに再度感謝したいと思います。
by Mr. Kuroki Yoshifumi

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 この度、黒木さんよりNP127-BINOご自作のリポートをいただき、まずはこのBINOの美しい外観にしばし見入りました。  鏡筒からfocuser、EMS、バランサーシステム、架台、ポールと、見事にコーディネイトされています。  『機能的に優れたメカは見た目も美しい。』というのが私の信念ですが、このBINOはまさにそれを主張 しているようです。
 バックフォーカスを稼ぐためのフェザータッチフォーカサーの使用は、Tsujiさんのsky90-BINOと同じ方法 ですが、これは、鏡筒のorijinalの状態をキープできる良い方法だと思います。 純粋に特定のブランドで統一 することに拘る方もあるでしょうが、各部で優れたパーツを集結させれば、結果として新たな統一感が出て来るものだと 思います。
 イーソス13mmの使用で、このBINOシステムの完成度の高さをさらに駄目押ししています。 さらりと実視界を書いておられますが、 これが今話題の見かけ視界100度のアイピースですね。先日のサミットでも、数名の方が単体の同アイピースをチェックしながら 驚嘆の声を上げていました。「100度は無駄に広い視野じゃない!」と異口同音に言っておられたのが印象に残っています。(残念ながら 私は隣の方で150LD-BINOでのDEEP-SKYに酔っていましたので、このアイピースを覗くチャンスを逃しました。)
 一昔前とは、自作の方法も変わって来たと思います。ゼロから製作することに拘る方も未だにおられるかも 分かりませんが、優れたパーツが以前よりも買いやすくなって来たことを考えると、パーツは極力市販の優秀な物から選ぶのが 賢い方法だと思います。 自作の楽しみが無くなったのではなく、優れた完成パーツの選択肢が増えたわけで、わざわざ そられのパーツ自体を自作するメリットがなくなったということです。市販パーツをうまく利用しながら、ここぞという 部分で自前加工をすれば良いのです。
 タカハシの片持ちフォークを2個使用したフォークは、その発想はもとより、機能的にも素晴らしい物であることが 分かります。 現在の所、当方では架台の製作までは手が回らず、VIXENのHF経緯台をほぼそのまま使用していますが、黒木 さん製作の架台を見ると、それが恥ずかしくなります。
 また、わずかに天頂を諦められたのも賢い trade-off だったと思います。  先日のサミットでもそうでしたが、EMSユーザーの方々の工夫に、私自身も大いに刺激を受け、新たな開発のエネルギーを いただいています。その意味で、私こそこの度の黒木さんのリポートにお礼申し上げます。  

「スノー」さんの ホームズ彗星観測記 (2007年11月6日)

 10月下旬になり、彗星急増光の情報が飛び込んできました。そうですホームズ彗星です。自宅では、台風一過の日の 夜半過ぎに初めて確認できました。15cmBINOで見ると、2重の丸い光芒に包まれた見たことのない光景が広がって いました。双眼による立体感も手伝って、何かの原生生物を見ているような姿でした。

 その後、晴れれば、自宅にて毎夜観望を継続しておりましたが、少しずつ大きく薄くなっていく彗星の姿に、早く遠征観望したい と言う気持ちが強くなって行きました。そして、昨晩、やっと月の影響を逃れられる週末と言うことで、奥日光まで、BINO を連れて遠征に行きました。体調が不良のため、現地滞在時間は2時間未満でしたが、彗星を堪能するには十分でした。

 BINOを設置して、早速、EWV32mmを装着して彗星を覗くと・・・驚きました。明るく丸い広がりの外に更に薄く、 寒色系の大きな広がりが見られます。自宅では、明るい中心部を濃淡のある2重の光芒が包んでいるように見えましたが、実際は 第3の光芒と言うか薄いガスのような広がりがあります。濃い光芒が白色から薄い黄色イメージに対して、 外郭の薄い光芒は淡い 青緑の色が印象的です。

 更に倍率を上げてナグラー16mmを装着すると、薄い光芒が視野一杯に広がりますので、1.5度程度の広がりはありそうです。 自宅では、BINOや20cm反射等で観望してきましたが、このような広がりは確認できませんでした。ちなみに、奥日光でも 小型の双眼鏡では確認できませんでした。実際、この外の広がりは相当薄く、BINOの片側だけで見ると(単眼では)、見落とし そうな淡さです。また、16mm装着時は更に淡くなり、色は感じなくなりました。

 さて、濃い光芒の部分は、もっと倍率を上げられそうですので、ミードUW8.8mm、4.7mmと使用し、倍率を約85~16 0倍まで使って観察して見ました。核周辺の光芒で、核の後ろの濃淡や、第2の光芒の上部の噴出す雰囲気が微かに認められます。 この詳細な感じは、数日前に大口径ドブで見せて頂いた光景と良く似ています。恐らく、一度明瞭に観察させて頂いたおかげで、 昨晩は微かに見えたのだと思います。もちろん、暗く透明度の高い空に恵まれ、BINOの高コントラストに助けられたことは間 違いないでしょう。そして全体的な球状の姿は、双眼による立体感で、まるで彗星帝国が地球に向かってくるような光景です (歳がバレル・・・)。

 昨晩は、短時間でしたので、ホームズ彗星を中心に、合間にメジャーな星雲星団を流す形の観望となりました。この時期は、 透明度の高い空の下で、網状等の夏の対象から、オリオン大星雲と言った冬の天体まで楽しめます。特に空が澄んでいるだけに、 BINOによる天の川流しには最高のシーズンです。そこに、これまでの彗星と様相が異なるホームズ彗星が輝いています。日々、 その姿も変化している上に、暗い空で初めて見えてくるものがあります。これからも可能な限り暗い空にBINOを持ち出し、 ホームズ彗星観望を継続したいですね。もちろん、明るい自宅でも。。。(スノー)

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;
 久しぶりにスノーさんより観測リポートをいただきました。 初期の12cmF5-BINO以来、ずっとmotivationを失われる ことなくEMS-BINOを活用してくださって、大変嬉しく思います。 私の方はまだ同彗星を見ていませんが、BINOの納期を 待ってくださっている方々のことを思いますと、それどころではございません。^^; 

「スノー」さんが ”新型15cmF5-BINO第1号機” のリポートをくださいました。(2006年11月23日)

新型15cmF5BINOの1号機が届きました。 12cmF5BINOからのステップアップとなります。 打ち止めと思って購入した12cmBINOでしたが、これが素晴らし過ぎて、半年で、遠征すること十数回、晴れれば自宅観望と 嵌ってしまい、むしろ加速して15cmに辿り着いてしまいました。

 届いた日に自宅にて軽くファーストライトを行い、先週末に観望会に参加しディープスカイによるファーストライトとなりま した。写真は左が 15cmBINO、右がお世話になっているショップの方(私の12cmBINOで感染されたようです・・・)の Megrez90BINOです(これもスーパーBINOで素晴らしい絵を見せてくれます)。

 さて、新型15cmBINOの特徴は①鏡筒プレートが無く鏡筒バンドを繋げて支持していること、②ハンドルが鏡筒に直付けになって いること、③クレイフォード接眼部がオリジナルになっていることです。①と②は写真の2台のBINOを比較するとよくわかります。

 まず、①ですが、当初は鏡筒バンドの締め付け具合がわからず、いつの間にか光軸がずれていることがありましたが、 適切な締め具合が見つかってから光軸の変化が無くなりました。むしろ、鏡筒バンドを緩めて鏡筒を捻って行う光軸調整は実際に 行うと非常にやりやすく、従来20~30分かかっていた光軸調整がものの数分で終ります。また、従来の鏡筒移動式の目幅調整 ですと、不意に左鏡筒を触って、平行に動いてしまうことがありましたが、新型では鏡筒が固定されており、EMS部のヘリコイ ドで目幅調整しますので非常に快適です。
 低倍率では眼の補正力でカバーできますので、他の方に少し見てもらう分には、 目幅とピントの再調整を繰り返すことも無く、各自のピントのみ合わせて頂くだけで問題ありませんでした。総じて軽量化も 進み、バランスが良く想像以上に軽く持ち上がります。非常に進化した印象を持ちました。

 次に②ですが、顔下に空間に余裕が出来たこと、ピント位置とハンドルが近く手の移動量が減ったことなど、実際に使用してみ ると、非常に快適になっております。また、持つ幅が広くなり、望遠鏡を振り回す軽快感が一層高まっています。私見ですが、 見た目にもシンプルになって格好良くなっています。ひとり悦に入っております(笑)。

 ③に関しては、口径確保等の光学的な問題の解決にも繋がっていそうですが、実際の操作感も素晴らしいものがあります。 従前の12cmに付いていた純正のラックピニオン式繰り出し装置と異なり、非常に滑らかな操作感となっています。バローを挟んで重量が増して もその滑らかさは変わりません。おかげでピント合わせが非常にスムーズになりました。またまた私見になりますが・・・(笑)、 オフブラックに塗装されており、非常にカッコえ~です。ここの高級感が一番高かったり。。。。

 以上、新型で進化した部分の感想です。次に、実際に覗いた時の印象ですが、既に多くのレポートがありますので、12cmとの 比較の上で簡単に報告いたします。まず、印象的なのは強烈な明るさです。そのおかげで、散開星団などでは、奥行きが非常に深 くなった印象を持ちました。また、網状星雲では細かい襞までよく分かります。バラ、北アメリカ等の散光星雲も強烈に迫ってき ます。12cmと15cmでは一段ポテンシャルが異なります。

 その中で、強い印象を受けたのが銀河です。12cmでもM81、82、その お伴星雲を同一視野に見ながら、M82の爆発銀河の様子がよくわかったのですが、15cmになるとM82の不規則形状が一層強烈に浮か び上がります。きれいなM81と不規則なM82が同一視野で対照的にポッカリ空間に浮かんでいる様子は、宇宙の奥深さが感じら れます。同口径の単眼では想像できない、大口径ドブとは異なる世界がそこには広がっています。更に感動だったのが、 かみの毛からおとめ座にかけての銀河群でした。BINOを流すだけで次から次へと無数の銀河が飛び込んできます。視野の中は 銀河、銀河、銀河、銀河・・・と数え切れません。超広角で低倍率でありながら、無数の銀河を容易に視認することができます。 まさしくハイコントラストな屈折BINOの本領発揮です。無数に漂う銀河を眺めていますと悠久の時の流れを実感します。

 このよう に銀河を相手にしても15cmBINOであれば潜在的なポテンシャルは相当に高いと期待できる結果となりました。 12cmよりターゲット が一層広がることは間違いありません。他にオリオン星雲やアンドロメダ、すばると他の方々にも覗いて頂きました、総じて良く 見える、すご~い、きれい~、欲しい~と、高評価を頂きました(自画自賛!笑)。

 こうして15cmBINOのファーストライトが無事終了しました。12cm時代からの経験も踏まえると、低倍率の時は、大抵の場合、 目幅調整無しに多くの方に簡単に覗いて頂けます。また、一般の方々でも星雲星団を容易に視認でき、無数の星々に圧倒され 感動してもらえます(単眼時代には「がっかり」されることが多かったのですが・・・)。つまり多くの方々と一緒に楽しむこ ともできる望遠鏡だと言えます。正立超広角ハイコントラストのおかげで、等倍ファインダーだけで次から次へと簡単に対象が 導入できます。覗く姿勢も楽です。

 また新型になって、鏡筒による光軸調整が容易になり、接眼部のピント合わせも楽にな りました。つまり、15cmF5BINO新型の操作性は従来の12cmより一層ビギナーに優しくなったと感じます。もちろん、大きく重 くなっているのですが、座布団に包んで折りたたみ2輪カートに対物側から載せて運んでいますが、移動による振動で光軸がずれ ることもありませんでした。架台に載せる力があれば、15cmF5の使用は問題ありません。天文ファンに限らず、アウトドアライフ やスローライフの延長で宇宙の無限の時間を感じたい方にもお勧めできる望遠鏡です。朝に見た雪を頂く浅間山を覗いた時も 最高の迫力でした。恐ろしいほどの視野の抜けの良さ、対象の立体感は双眼鏡の及ぶ所ではありません。ますますBINOライフ にどっぷり浸かって行きそうな予感です(既に浸かっている?笑)。                      スノー

追記:11/28 先週に引き続きディープスカイ観望を目的に遠征して参りました。いつもの遠征場所はそろそろ凍りつく季節になります ので、冬眠前にと・・・(笑)
 今回は、時間に限りがあり、メジャーなものを一通り流した後に、オリオン座周辺を対象に散光星雲のテストを行いました。 レンズに夜露が付くことはありませんでしたが、鏡筒が凍りつくほど厳しい冷え込みで、非常に濃い天の川が見られるコ ンディションの夜空でした。アイピースはEWV32mm、左に UHCフィルターを、右にOⅢフィルターです(1枚しかありません ので・・・泣)。
 観望したものは、バラ星雲、オリオン星雲、ワシ星雲、もみの木星雲、エンゼルフィッシュ星雲、モンキー星雲です。 低空は若干の光害にかぶっている中で、観望できたのは驚きです。もみの木星雲は恒星との間の暗黒帯が、モンキー星雲はお 饅頭形状にくびれが明瞭に認識できました。ワシ星雲は長細い襞にしか見えませんでした。馬頭星雲は認識できませんでした ・・・残念!!更に暗い空が必要かもしれません。いつか再度チャレンジしたいと思います。
 上記以外にメジャーなものでも収穫がありました。網状星雲やオリオン星雲の強拡大です。沈みかけの網状星雲を50倍近く で見ると、もうそれは複雑な襞の形状が見られました。非常に繊細な印象の星雲です。90倍近くのオリオン星雲は、ガス雲の 中に放り込まれたような気分になります。ガス層が何層にも重なって複雑にうねっており、絹のようにガスのベールを感じで見 ることができました。また、プレアデス星団の恒星を取り巻くガス雲も印象的です。下部の方に広がりがあって写真のイメージ に近い絵です。このように見えたのは初めてで、しばらく見惚れておりました。
 以上の通り今回のテストは短時間ながら先週を上回る成果を得ました。対象の中には、この観測地ではドブを持ってしても 困難な対象が含まれています。それが、存在だけなら容易に、中には形状の認識までできる星雲があったことには驚きました。 両目で見るため、特段の集中力も不要で、気楽に探索が出来ます。15cmBINOのポテンシャルには驚かされます。 これからの活躍がまたまた楽しみになった夜となりました。(スノー)

 私信(★松本との交信):12/2 
 上記の追加リポートをいただいた時の私信部分の掲載につきまして、スノーさんのご了解を得ました。

11月28日:
> > たいしたレポートではありませんが、よろしければ追加下さい。

★ 掲載の件、承諾くださって、ありがとうございます。

>> > > 自分の感じたホットな気分(体は極寒でしたが・・・笑)をもう少し上手く 伝えられればと思うのですが・・・・

★ それは文章という手段が持つ宿命的なもので、読み手のキャパも大きく関係 するので、感動が100%伝わらないのは、やむを得ないと思います。少なくと も、私が読むと、BINOの醍醐味、凄さがビシビシと伝わりますよ。

>> > > それにしても15cmBINOには驚かされます。12cmBINOとも大きな差が あり、以前愛機だった15cmF6.5屈折や15cmF10マクカセの単眼から は想像できないほど別次元の世界を見せてくれます。星を見るのは機材単体の性 能が半分、人間の認識力が半分と感じます。機材の単体性能を追求するのも良い ですが、最近の機材は安くても一定の水準に達しているだけに、人間側の潜在力 を引き出す方が効率的なのでしょうか。

>> > > そういう意味でBINOは人間側の認識力を大きく引き出す為、結果的に非常に 効率的に観望の幅を広げる望遠鏡だと最近は思っております。

★ ここまで理解されましたか。感覚的には体感しても、上にご指摘の点をきち んと文章にしてくれた方はまだいなかったような気がします。
 世の中は、まだ机上の光学性能を、収差曲線等だけを持ち出し、重箱の隅をつ つくような議論ばかりが横行しているような気がしますが、比較する光学系が一 定の水準を保っているという前提の下では、上にご指摘の要素の方が圧倒的な効 果を発揮するわけです。

  たとえば、単眼の視力がそれぞれ0.7程度の人が、両眼では1.0くらいの視力 が出る場合が多いことは、私は本業のメガネ業から日々経験していますが、これ は、言い換えますと、単眼で100倍で見ているのと、双眼で70倍で見ているのと がほぼ同じ大きさに見えるということです。
 双眼視否定論者が机上論から「望遠鏡自体の分解能が単眼、双眼で変わるはず がない。」と言います。 確かにそれはその通りですが、それは議論のすり替え であり、それは「望遠鏡はゆらぐ大気の底で生身の人間が覗くものだ」というこ とを忘れた議論だと思います。
 現実には、より低倍で同じ効果が得られる双眼視の方が、はるかにシーイング の悪影響を排除できるのであり、双眼視の生理的なコンポジット効果とそのこと (倍率の実効値)が相乗するのです。

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;
 スノーさんが、新型の15cmF5-BINOのリポートをくださいました。 何台ものEMS-BINOを使いこなして来られただけ あって、製作者の意図を雄弁に代弁してくださいました。

 鏡筒バンドで2本の鏡筒を連結する方式は、今回が初めてではございませんが、「BINO製作状況速報」でも触れました通り、 今回は、今までの経験を活かし、運搬用のハンドルを基本構造の一部に取り込む事で、剛性のアップと軽量化を同時に実現い たしました。構造は至って単純ですが、製作にはいくつかの秘訣がございます。

 スノーさんは、1組のEMSと1つの眼幅調整台座を共用されて、12cmF5鏡筒とFS102鏡筒を随時換装されながら2種類のBINOとして活用して おられましたので、換装の度に、製作者の初期調整の作業をされていたことになり、その熱意と到達された技量には感服いたします。

 しかし、ここでスノーさんが引用されました、”20~30分かかっていた光軸調整”という意味は、その作業の事であり、通常のEMS-BINOの 使用では不要な作業ですので、誤解のないようにお願いいたします。
 私が今まで製作して来ましたEMS-BINOは基本的にユーザー調整は不要ですので、 よろしくお願いいたします。(アイピース交換時のアイピース起因のずれをEMSのXY調整でわずか補償するのみ)

 新型の15cmF5-BINOのねじれ調整の方法も、普通はユーザーの方が使用されることはなく、バランス調整のためや、 鏡筒の分解等の必要が生じた際に、バンドを締め直す際のみに必要になるものです。これはBINO製作時のメーカーサイドの 初期調整とお考えください。 今回の新型の15cmF5-BINOの光軸の安定性は、鏡筒を固定したことも貢献していますが、 クレイフォード式のフォーカサーが操作の円滑さとガタの無い剛性を同時に満足していることもその大きな理由です。 特に、クレイフォードの原理構造上、ドローチューブの回転ガタが皆無であることのメリットはBINOにとって計り知れないものがあります。

 15cm-BINOの見え味について、スノーさんならではの、実体験を元に説得力ある解説をしてくださいました。 15cmというのは、口径の一つの節目のようで、ずっと以前ですが、 某天文アマチュアの重鎮の方が、「15cmクラスのEMS-BINOは、日頃30cmクラスの単眼の望遠鏡の見え味に慣れている者をも唸らせる。」 という意味の事をおっしゃいましたが、スノーさんの今回のリポートでそのことを思い出しました。

 この15cmF5鏡筒は、中国製のアクロマートですが、その明るいF値や口径の大きさから、古典的な常識からしますと、大味な見え味(たとえば集光力のみ目立って、 像の精度が甘いというような)を 予想し勝ちですが、どっこいそれは多くのユーザーの方々が証言しているように、少なくとも低倍での眼視性能は、市販の大型双眼鏡などは 比較の土俵にも上らせないほどのものがございます。私が初めてこの15cmF5鏡筒を手にした時、同社のF8鏡筒と並べて 昼間の景色を同じ30mmクラスのアイピースで見比べた時、むしろ前者の方が明るくシャープな印象を持ったくらいでした。(倍率 が低いからですが、低倍性能に於いて、F値が小さいメリットが発揮できているということです。)

 今、冬に向かった季節ですが、季節がめぐりましたら、またぜひ夏の天体についてのリポートも楽しみしていていますので、 スノーさん、よろしくお願いします。

 スノーさんがさっそく追記をくださいました。 スノーさんは12cmBINO以来、極めて 高い稼働率でBINOを活用してくださっていて、興味深い私信もたくさんいただいています。ご本人の了解をいただいた上で、 近日中に一部をご紹介できたら、と思っています。(11/28)

125ED-BINO on Equatorial / 赤道儀仕様

松本さんから12.5BINOをうけとってから、約10年経過した今レポートを記すこととなりました。 そのきっかけは今年の3月に自宅を新築した際、思い切って観測室を設置したことです。 今までは自宅から歩いて3分の所の畑にスライデイングルーフ式の観測所があり、ここに設置していたのですが これで愛機と同居ということになりました。

場所は三重県の最南端で昨年世界遺産に指定された熊野地方です。この地区は日本の中で指折りの交通不便なところで、 それゆえ観光地でありながら乱開発されることなく自然が残り、星空の美しさも自慢の一つであります。特に天の川は クッキリと見え星々の集まりであることが肉眼でもよく分かります。 立地している場所は小高い山の頂上に位置し360度パノラマで東側に海があり、1年中日の出が見えます。

BINOは鏡筒がボーグ12.5 f8 アイピースはPENTAX LX7 14 28 40 赤道儀がミタカGN-170です。 性能の割には非常にコンパクトにまとまっており、楽に振りまわすことができ、 天頂を見る時は床にあぐらをかいた状態で接眼部が目の高さに来ます。 鏡筒は対物レンズ部と接眼部と回転装置部の3体に分解でき、それらを外して雲台プレートを乗せ替えること で写真赤道儀になります

肝心の見え味はシャープの一言です。ゆっくりと天の川の中を散策していると、二重星が多いことに驚かされます。 両目で見るということは微妙な部分がはっきり分かるものです。この部分の説明は他のリポーターの方達が充分されていま すので割愛させていただきます。

自宅に観測室があることのメリットは計り知れません。2階にある自分の部屋から階段を上って入ります。夜中でも明け方で も見たい時に最高の機材で見ることができることは幸せなことです。

写真で分かると思いますが10年経った今もバランスのよさ、美しさは変わりません 今となっては松本さんの作品の中で初期に分類されるものですが、ここに原点があるように思えます。

2005年8月8日   仲 賢

Comment by Matsumoto / 管理者のコメント

本日、三重県の仲さんより、お手紙と写真集入りのCDを郵便にて受け取りました。  ご連絡先が分からず、掲載の詳細を決められませんが、 あまりに写真集が素晴らしいので、先に写真だけを掲載させていただくことにいたしました。

ご投稿いただいたBORG125ED-BINO(赤道儀仕様)は、十年ほど前にお作りしたものですが、この度、お住まいの 新築と同時に観測所もご自宅に引っ越されたとのことで、改めてご投稿いただきました。 動画を含む多数の画像を お送りいただき、これだけに絞るのに大変苦労しました。似た写真もありますが、これ以上はどうしても割愛できませんでした。

このBINOは、私が今の工作手段の半分くらいしか持たない頃に、全身全霊を込めて製作したもので、久しぶりに対面させていただき、 感無量になりました。率直に言わせていただいて、今見ても、付け加える物は何もないほどの完成度です。 回転装置は、外リングだけを外注し、他は全て私が発案、加工したものですが、ガタは皆無で、ジャイロスコープのように 円滑に回転し、クランプ機構も備わっています。 最初は無垢の板材から大型旋盤でくり抜いてもらっていたリングでしたが、仲さんのモデル の頃からは木型を外注し、一皮大きなリングを鋳造してもらい、それを旋盤で加工するようにしていました。

(8月8日追記) 本日、仲さんよりリポートをいただきました。 改めて、十年の月日の早さにおののきます。   前のみかん畑の中の観測所も、BINOが美しく収まっていたのが印象に残っています。 本来なら、サイト開設時に真っ先 にリポートをお願いすべきだったのですが、日々の仕事に追われるまま、月日が経ってしまいました。

仲さんは富士山写真家としても有名で、最も遠い距離から撮影された記録保持者としてテレビ出演されたこともありました。 謙虚な方で、今回は具体的な観望の感想を割愛されましたが、機会がありましたら、またぜひ投稿をお願いしたいものです。   仲さん、懐かしいリポートを本当にありがとうございました。

MEADE178ED-BINO

百武彗星がきっかけで久しぶりに天文に復活し、偶然入手した2本の鏡筒を天頂ミラーにより双眼化して 1997年から使っていました。当時は架台を赤道儀にしておりました関係でBATTやPCまで含めると総重量は 200kgくらいあったと思います。 鏡筒回転機構のせいで極軸から距離があり、結果ウエイト軸にありったけのオモリをぶら下げている ことも災いしていました。それでも若かったせいか、ハァハァ言いながらもあまり気にせず使い続け ていました。(写真に写っている車にピラー脚以外は積みっぱなし)

 このところ体力の衰えというか、慢性的な運動不足とモチベーションの低下で稼働率が 下降線をたどり、昨年はとうとう2回となりました。「このままではイカン」と重い腰を上げた次第です。 自動導入はとりあえず諦め、軽量化のために経緯台とし、経緯台にはやっぱ専用のEMSだよなぁと、 4月末に松本さんにコンタクトをとりました。

 比較的軽くて丈夫な架台ということで構想当初からLB150用の経緯台と決めていました。CAD上で確認すると、 重心位置の関係で架台と鏡筒バンドの干渉が発生し、鏡筒ピッチが272mmとなってしまうことが分かり焦りま した。松本さんにまた怒られるかなぁ。。。と心配しながらも発注してしまいました。 (実は仮に架台側の制約を廃してもレンズセル径が10インチありますので、大して鏡筒ピッチを縮める ことは出来ないのですが) 今回の改造はほとんど市販品を用いており、とても簡単な工作で済みましたのでEMS到着の週末には 組み上げてテストすることができました。総重量も計算値で約100kgとなり、気合いを入れなくても稼働 できそうです。

EMS制作依頼時の仕様表

鏡筒側仕様
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・鏡筒ピッチ 272mm(固定)
・接続部 M89P1メス(ボーグHV1)、回転機構有り
・バックフォーカス 243-274mm
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EMS仕様
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・仕様 EMS-XL 大型第1ミラー仕様
・目巾調整 Pentax67接写ヘリコイド
・接眼フォーカス 接眼部ラック&ピニオン(短め)
・EMS(鋳造部) 白色塗装
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EMSは鏡筒と同じ白色、目幅調整は実物を比較して決めた67用ヘリコイドと少しわがままです。 (汗

良かった点
・接眼部フォーカーサー
 最も気に入ったのがこの機構です。フォーカスを手元(目元)で操作できることがこんなに便利だとは思い ませんでした。それから、あとで気付いたのですが、フォーカス調整による重心移動がほぼ皆無となります ので、アイピースの重量だけ統一してやれば観望時にバラストで調整を行う必要がありません。指一本でスル スルと鏡筒が向きを変えますので、操作ハンドルも廃しました。とにかく非常に快適です。

・鏡筒接続部の大口径化
 EMSでは鏡筒からのシフト量と2インチアイピースの重量によって常時かなり大きな回転モーメントが発生していますので、これを支えるには径で対応するのが一番だと思います。大口径化したことで観望中にEMSが回ってしまうこともなくなりました。 加えて脱着部を既製品(BORG)としたことで、脱着によってEMS自体に傷が付く心配がないので力いっぱい ネジを締めて固定することも出来ます。

・第一ミラーの大型化
 見た目のバランスもそうですが、2インチ長焦点アイピースを用いた場合でも周辺減光がほとんど感じ られない快適な視野を提供してくれます。

気になった点
・バヨネット脱着部のガタ
 実は大したことではなく、EMS上部を持って鏡筒を振り回すようなことをしなければいいだけのことです。

今後の課題
 改造後3回ほど観望に持ち出しました。架台により不動点が高くなってしまいましたので、ピラー脚を少し 短縮することを考えています。それから恒星追尾が手動なのでやはり高倍率での長時間観望はストレスが たまります。当初の軽量化の目的とは違ってきますが、将来的に電動化しようと妄想中です。水平軸はハーモ ニックギヤを使うことで機構全体を架台に内蔵できるのですが、垂直軸はクラッチを搭載するスペースが 無く面倒そうです。

最後に
 いろいろ注文をつけて松本さんには大変ご迷惑をおかけしてしまいました。 それでも、結果とてもいいものが出来上がって満足しています。 また機会がありましたらよろしくお願いします。 どうもありがとうございました。ございました。

神奈川のDamyanさん

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

DamyanさんのEMS-XL(6X7ヘリコイド仕様)は2004年の8月に紹介させていただいて いましたが、ついに完成したBINOの姿を見せてくださいました。Damyanさん、お見事です!   極めてシンプルで美しいスタイルです。 Fujinonの大型双眼鏡の架台を利用されたのでしょうか。  鏡筒間隔を広めに設定された理由も納得しました。

 ピラーを短縮されるご予定とのこと、私も賛成です。 一般に、ピラーや脚を必要以上に高めに設定される方が 多いように見受けます。 なるべく水平近くまで、踏み継ぎなしで覗ける高さに設定されることをお勧めします。   天頂付近は、座布団(それに近い低い椅子)を敷いてあぐらをかいて見るスタイルでも良いのです。

  規格外品の製作には結構時間と集中力を消耗するもので、標準規格品の順番待ちの方のことを思うと どうしても気持ちが焦ってしまい、Damyanさんには無意識に結構小言を申し上げていたのかも分かりません。  私こそ気を付けないといけませんね。^^;

  今度は観望リポートをお願いします。 (6X7ヘリコイドのバヨネット(雌)はラチェットの位置が調整できますので、ガタも治ります。ただ精密な 作業なので、注意して行ってください。ただ、発送時の状態がキープされていれば、問題ないレベルだと思いますよ。)      


AstroPhysics Starfire 7inch – BINO

Mr.Wengler set to me some new photos.

ドイツのWenglerさんが新しい写真を送ってくださいました。

WenglerさんがAstroPhysics Starfire 7inch – BINO(18cm3枚玉アポ)の 新しい写真を送ってくださいました。 見事の一言です。

125ED-BINO and others / 125ED-BINO他(群馬県、須田さん)

bino-view + EMS-1 on FC50 photo 1

BORG125ED-MTT photo 2

 

BORG125ED-BINO on alti-azi. photo 3

 

100ED-MTT photo 4

 

ronchi photo on FC50 direct photo 5

 

with a diagonal prism photo 6

 

with the EMS-1 photo 7

BORG125MTT(F8)赤道儀仕様レポート

私と松本式正立ミラーシステム(EMS)との出会いは1989年の天文雑誌にそ の 紹介記事が掲載されたのがきっかけでした。初代の「EMS-1」は今でも愛用して います。
当時はシュミカセに「EMS-1」と双眼装置を取り付けて観望を楽しんでいまし たが、 いつかはEMSを使用した松本式双眼望遠鏡(MTT)を持ちたいと思っていまし た。
幸運にも1995年の福島県石川町スターライトフェスティバルに参加したとき に、 東京の遊馬氏が持参されたMTTを実際に覗かせていただく事ができました。
昼間の景色、惑星、星雲星団など、いろいろと観望させて頂きましたが、初めてM TTを 体感した時の感動は今でも忘れることができません。その数日後には松本さん宛てに 「双眼望遠鏡を製作して頂きたい。」というような内容の手紙を出しました。

翌年のスターライトフェスティバルには自分自身がMTTを持参し参加していまし た。
何よりも、当日は松本さんご本人と会場でお会いできまして、直にMTTの調整のコ ツを ご伝授いただき感動しました。完成まで松本さんとの連絡はFAXでやり取りするこ とが ほとんどでしたが、何かと的をそれた私の質問に対して、松本さんはいつも詳しく、 分かり やすく説明して下さいました。何度もやり取りしましたので、それらのFAX紙は分 厚い ファイルとなりました。当時はほんとにお手数をおかけしました。スミマセン。

MTTは私の天文ライフの中での価値観と言いますか、こだわりを完璧に現実化し て くれました。これは私にとって基本的なスタイルで、一生変わらないと思います。

写真①

タカハシFC50にEMS-1と双眼装置の組み合わせ。1993年に撮影したも のですが、 今でも時々これで見ています。
2001年土星食はこれで移動して高速道路のPAで 観望。 何とユーザーレポートを書かれている林氏と遭遇。私がEMSを持っていたことで、 お互い MTTユーザーと判明!こんな場所でお会いするなんて、土星食よりめずらしいこと でしょう。
林氏は土星食を撮像されていました。「今度はお互いMTTを持ち寄って観望しま しょう。」 空が明るくなるまで話がはずんでしまいました。MTTユーザーと話すのはすごく楽 しいです。
ちなみに、2001年の石川町スターライトフェスティバルではやはりユーザーレ ポートを 書かれている井上氏ともお会いできました。井上氏は太陽望遠鏡にEMSと双眼装置 で参加 されていました。素晴らしい太陽像を見せていただきました。

写真②

私の主力機。鏡筒はBORG125ED(F8)です。鏡筒の選定にはかなり迷い ました。 最終的には松本さんのアドバイスもあり、口径、性能、重量などを総合してこれにし ました。 レンズはロンキーテストにかけてみましたが良くできています。
何よりコントラスト が良い ので、淡い星雲が良く見えます。惑星はシーイングの良い日ですと何時間も見てしま います。 MTTの素晴らしさはユーザーの皆さんが既に詳しくレポートされている通りです。  低倍率から高倍率まで、ぞくぞくするほどの宇宙を体感できます。
赤道儀は以前から使用していた三鷹のGN-22を利用しています。常に快適な視 点が 得られるように、鏡筒は回転装置に付けられています。
この回転装置も松本さんが凝 りに凝って 設計されたもので操作感は抜群です。各部には「ここまでやるか!」と言うほどの微 調整機構 が与えられていて、左右鏡筒の平行や回転の中心及びテンションを完璧に追い込むこ とが可能です。
回転リングとEMSボディーの塗装は三鷹の赤道儀の色に合わせて特別に塗装して いただきました。 こんなわがままにも快く応じていただき恐縮致しました。

写真③

GN赤道儀ですと、いささか重量がありまして移動が面倒な場合が多々あることは 否めません。
松本さんにお願いして鏡筒のみを経緯台に搭載する為のアタッチメントを製作して頂 きました。 これにより、稼働率が大幅にアップしました。最近ではこの経緯台仕様で移動するこ とが ほとんどです。惑星の観望だけなら鏡筒回転装置を使わずに、このまま赤道儀に載せ てしまう こともあります。
その場合、右側鏡筒で観望しつつ、左側は直視用に変えてデジカメ 撮影 という贅沢な使い方も可能です。もちろん経緯台でも高倍率でスイスイ追尾すること ができます。

写真④

これは遊馬氏のMTT。1995年の石川町スターライトフェスティバルで撮影さ せて いただきました。レンズはBORGの10cmですがボディーは松本さんの手により 完全に 作り変えられていました。
いたるところに工夫が凝らされ、細部の細部まで美しい仕 上がり。 驚きました。実際に覗いてみると想像以上の圧倒されるほどの臨場感があり、感動し ました。  これでMTTの製作依頼を決心しました。

写真⑤~⑦

参考までに、タカハシのFC-50をロンキーテストにかけてみました。 左は直視、真ん中は純正の大型プリズムを装着、右はEMS-1を装着したものです。FC-50は所謂「お宝」 と言われています。写真では分かり難いかも知れませんが、プリズムを使用しますと 明らかに色収差が発生し、コントラストも低下しました。  松本さんによりますと、プリズムは球面収差をも惹起させるそうです。

須田 信明
Nobuaki Suda

Comment by Matsumoto / 管理者のコメント

須田さんは、この度のSCHWARZ150(F8)の双眼望遠鏡(初期経緯台仕様) のユーザーでもあるのですが、この度は、1996年にお作りしたBORG125ED(F8) 鏡筒を使用した赤道儀仕様の双眼望遠鏡のリポートを先に頂きました。
須田さんは、EMSをその黎明期より支持し、見守ってくださって来た中の一人です。
当時はネットが今ほど普及しておらず、HPも開設していなかったものですから、 ミタカの赤道儀に載った須田さんや遊馬さんのMTTや、初期のEMSであるEMS-1(光学的capacity,光路長は現行の EMS-Mに相当(ただし、EMS-Mは2インチアイピースの一部使用可))をご覧になった方は少ないと思います。
“MTT”というのは、Multi Purpose Twin Telescopes の略で、(「汎用二連鏡筒」 とでも申しましょうか)、双眼視から、二連カメラ、カメラとガイドスコープ、EMSの左右 を交換して、ティーチング用二連鏡筒、等、広い応用を意図して命名したものでした。
そのまま絵ハガキになりそうな美しい写真の数々と、客観的なデータであるロンキーテスト の写真は、まだEMSやMTTを知らない方々にとって貴重な資料となることでしょう。

(2007年12月25日追記) 悲しいご報告ですが、須田さんは 2007年の3月にお亡くなりになりました。心よりご冥福をお祈りします。このリポートは 今でも異彩を放っている価値ある資料です。今後も大切に管理させていただきたいと 思います。

15cmF8-BINO: Mr.Ogawa

EMSの発明者である松本龍郎氏とのお付き合いが始まってから早いもので、まもなく2年になります。  インターネットで松本氏のホーム・ページにアクセスしたのがきっかけでした。 直ちに一番小型 のEMS-Sを注文し、送られて来た実物を使用してみてその優れた点を認識致しました。

申し遅れましたが、私はニューヨーク州に在住している小川と申します。 近郊の人達がザ・シティ と呼ぶ大都会のマンハッタン(ニューヨーク・シティ)から50マイル(80キロメートル)程北西にある小 さな町に住んでおります。

大都市の近郊にしては空の状態はまずまずで、夏は晴れていれば肉眼で天の川が見える状態です。  しかし現在までの経験ではシーイングは年間を通じてかなり悪い方かもしれません。 また緯度が 北緯41度半と高緯度ですので、今年いて座で接近を迎えた火星などは南中高度が低く、悪シーイング にがっかりしたりイライラしたりの状況です。

さてEMSの話に戻りますが、それまで天頂プリズム或いはミラーの使用には何の疑いも持っていなか った私でしたが、EMSを使用する様になってがらりと認識が変わりました。

「天頂プリズムの裏像を 何とかしたい、従来から方法が無かった訳では無い、90度正立プリズム方式があったが、天体望遠鏡 のように様々な接眼鏡を自由に入れ替えたり、時には数百倍を使用するようなシステムの中では像の 劣化を防ぐことは非常に困難、或いは殆ど不可能だった、だから正立は諦め、改善としてはせいぜい 高精度ミラーを使用する程度で、依然として裏像の天頂ミラーを使用せざるを得なかった」 これが EMSが世に出るまでの天頂観測手段に対する実情であったと思いますが、EMSは高精度ミラーを独自の 方法で巧みに組み合わせてこの永年袋小路に入っていた論議に決別を付けたと言っても過言ではありません。 (EMSが存在する今も尚、何故か上記の状況が業界の主流なのは残念です)

事実EMSを使用する様になって私はもう全く天頂ミラーを使用する気がなくなってしまいました。  眼視に限れば裏像には真実はありません。 EMSは言わば肉眼で物を見るその延長で天体を見る、 この当たり前のことを空のどの部分においても明快に実現してくれたのです。

そのEMSを使った15cmの双眼望遠鏡を松本氏が計画しているニュースを知ったのは昨年の8月でした。 15cmの双眼望遠鏡を、手の届かないような価格ではなく、我々にも購入可能な価格でしかも今までに 例のない簡便なマウントに乗せてというのがコンセプトでした。

ご承知のように15cmクラスの双眼望遠鏡は従来から優秀なものが市販されております。 しかしそれは 固定倍率または狭い選択範囲の交換アイピースを持ったプリズム双眼鏡です。 ですから天体望遠鏡の 双眼式のものが欲しいと思っていた者にとってはこの発表は突然の朗報でありました。  早速申し込みの手続きを致しました。 私の製作番号はNo.7、とても好きな番号でありました。  この15cm双眼望遠鏡はカサイ・トレーディングのシュワルツ15cmf8鏡筒にEMSを組み合わせ90度対空に した2本の鏡筒を松本氏が新設計した経緯台に装着したものです。

あらゆる部分に氏のアイデアが生かされていますが、目的として15cmという口径の双眼望遠鏡 にも関わらず手軽に分解組立が可能で、かつ簡便な取り扱いが出来る稼動率最高の望遠鏡を目指したものです。 実際に使用した実感としても納得のゆくものでした。

私の観望場所は自宅から5m( 5kmではありません ) 程離れたコンクリートの遊歩道です。 ここは私の住むコンドミニアムの敷地内で外部からの来訪者はありません。  夜中には全く歩く人もおらず各家の灯りも消えて格好の観望場所を私に提供してくれています。 またここは夜 が更けると時にはスカンクや野生の鹿がやってくるような自然の溢れた所でもあります。 また冬場の極寒の観望 でも何時でも自宅の温かい部屋に秒速で飛び込めるので助かります。

正面が南で、背後の北の空が建物によって 高度40度から下が見えませんが、南は高度4度以上は観望可能です。さてこの望遠鏡は脚部にキャスターが付いており 住宅内から手軽に転がして行ける特徴があります。 実は現在使用している28年前の古い20cm反射赤道儀(木辺鏡・西村製) にもキャスターを付け同様に転がして設置場所に移動出来るよう、自分でベースを作りましたが、こちらは120キロ程の 総重量がありますし、キャスターの直径も小さくてガラス戸のレール部分を越える事が出来ず板材でランプ(傾斜路)を 作って何とかクリアさせています。 しかも上部が重くてバランスを崩し易く、一度転倒させてしまった苦い経験があります。

その点この15cm双眼望遠鏡は重量が60キロ程度でキャスターの直径も大きいため、レール部分もそのまま一脚ずつ直接乗り 越えさせ、後は転がして行くだけですので設置も撤収もあっと言う間に済んでしまいます。 所期の稼動率最高の狙いは見事 当たっていると言えます。

更にこの望遠鏡の美点の一つは意外にコンパクトで、格納場所に困らないことでしょう。  格納する時は格納場所まで転がして行き、鏡筒を垂直に立てると望遠鏡はスリムなフォークの幅に主要部が収まってし まいます。 さて観望の為、設置場所に着いたらキャスターのストッパーを念のため掛けて設置完了、後はすぐ観望が始め られ15cm双眼望遠鏡の素晴らしい世界が始まります。 この経緯台はフリーストップタイプですが、高度変化は水平から天頂 まで完全バランスが実現され、適当なフリクションがあって殆どバックラッシュがありません。

狙った目標にファインダーの十字線がピタリと止まると言う事は誠に気持ちの良いものです。  水平回転はガタが全くない上に、所謂シルキー・タッチで初期トルクも軽く、動き出せばまるで低速のモーターでも付いて いるような錯覚を覚える程スムースです。 しかも軽過ぎて困ったという経験はありません。 実際に起ったエピソードを 紹介しますと、日中視野に飛行する航空機を捉え、水平回転で追っていた所、目標のスピードが落ちて停止したかのように 思ったのです。 実際に飛んでいる航空機が空中で止まる事はありません。 他に比べる対象のない空の中、あまりに スムースな回転の為、自分が望遠鏡を動かしていることを忘れてしまったことに拠る錯覚でした。

高度・水平の各回転軸にはクランプが付いていますが、通常はまず使うことはあ りません。 むしろこれは左右鏡筒の光軸を合わせるなどの調整用に使用すると考える べきでしょう。

松本さんのHPを見て頂ければ分かりますが、双眼視というのは相当複雑な要素が 絡み合っているらしいのです。 鏡筒の左右の光軸の一致の他に、視野の相対的な回転 や傾きもありますし、人間側にも眼に極端な癖のあるケースもあるとのことです。
私個人もどうも潜在的な斜位があるらしいのです。 斜位(しゃい)というのは左右の 眼の軸が平行でないことで、斜視とは違い外観には現れず普段の生活では問題ありませんが、 例えば双眼鏡を覗くなどのケースにおいて、時として視野が一致せずダブって見えること があります。 つまり日常では問題は顕在化していませんが、特殊なケースでその欠点が 現れることがあるらしいのです。 そこで私のようなケースを潜在的な斜位と呼ぶとの事 です。 ( 私はこれまで自分では顕在的なシャイ〈 a shy person 〉と思っていましたが…?)

さてそんな具合ですから視野が美しく一致して見えるのかと心配していましたが、 それは杞憂でした。 右側鏡筒のEMSに装備されたイメージ・シフターの存在がその心配を 吹き飛ばしてくれました。 様々な原因で起る左右視野の相対的な誤差をイメージ・シフ ターがキャンセルしてくれるからです。 イメージ・シフターはニ方向に独立してミラー を微小に傾ける事で、右視野の中の映像をX,Y方向に別々に移動させ、左鏡筒の視野との 相対的なズレをキャンセル出来る便利な言わば、最終兵器です。

それは右側EMS側面の二本のローレット付きネジを回すと言う簡便な操作で実現出来 ます。 しかしその前に左右鏡筒の平行度など基本的な誤差を最小に追い込む必要があ るのは勿論です。

シュワルツ15cm屈折鏡筒は焦点距離は1200mm、f 8のアクロマート鏡筒です。  f8のアクロマートですから確かに月のリム等に着色が認められますが、 イメージ自体は大変シャープです。 アイピースに例えばTele VueのPanoptic クラスを使えば最周辺までピンポイントの星像が得られます。

15cmの屈折といえば以前はアマチュアにとっては文字通り高嶺の花で公共天文台 にあった屈折赤道儀の主力でした。 以前良く通った明石天文科学館(震災前の)の塔頂 上の観測室の望遠鏡も15cm屈折赤道儀、そう言えば国立天文台・岡山天体物理観測所の 188cm反射望遠鏡の2本のファインダーも15cm屈折でした。 そんな憧れの15cm屈折鏡筒 を2本も使った双眼天体望遠鏡を自分が所有することなど以前は考えてもいませんでした。  良い時代になったものです。( 現在の若い方からすると、実感の伴わない話かも知れ ませんが、これは現在の水準から見ればとても粗悪な6cm屈折経緯台からアマチュアと してのスタートをせざるを得なかった私の世代の感慨なのです)

接眼部はシュワルツ鏡筒のラック・ピニオン式合焦装置を取り外し、独自のスライド式 合焦装置に変更されています。 私の場合は2インチ・アイピース専用にこの接眼部を 使用し、1.25インチ・アイピース用にはオプションの直進ヘリコイド式を求め使用して います。

ファインダーは標準で8X50と等倍ファインダーであるRigelクイック・ファインダ ーの二つが付いて来ます。 Rigelクイック・ファインダーは仏壇の位牌のような変わっ た形の透視型ファインダーですが、おおよその狙いをつけるのに大変便利です。 投影 されたレチクルが点滅する機能も組み込まれています。

8X50の方はシュワルツ鏡筒に元々附属しているものですが、思ったより見えが良 いので気に入っています。 さて、この15cm双眼望遠鏡のファーストライトでの印象は 視野が明るく、光に満ちているということでした。 雲間に見え隠れする恒星ですら輝 きは強く、視野に入って来る恒星の等級の見当が最初は付きませんでした。

ケーニッヒ40mm・30倍・2度の視野は全く新しい体験を私にもたらしてくれました。  正立で明るい2度の視野は星図やイメージする星座の配列と一致し、ファインダーなし で目的の星雲・星団への道筋が辿れる位です。

こと座βとγとその中間にあるM57環状星雲を全て同視野に見る事が出来ます。  また当てもなく星野を流していて気付いたのは二重星の数と通り過ぎる人工天体 の多い事です。

しかしここまでは15cmの市販の双眼鏡と同じかもしれません。 この双眼望遠鏡 の優れた所は、市販のあらゆるアイピースを使用して自由に、場合によっては100倍を 越して倍率を自由に変更出来ることです。 球状星団や惑星状星雲など、低倍率で捉え てから、中、高倍率で詳細を見たいと思う天体は数多くあります。 惑星や二重星もそ うでしょう。 惑星は残念な事に木星・土星は現在太陽に近いので、今のところ火星し か捉えていませんが、視直径20.6秒・中央経度230度の火星を240倍で見ているとシーイン グの良い時に表面模様の濃淡にも気付いてなかなか良く見えることに感心しました。

双眼・正立像の良さは接近した惑星を宇宙船の窓から見ているようなもので、 火星がどの方向に自転して行くのか等、方位を一瞬で認識出来ることです。  倒立像、ましてや裏像ではこうは行かないでしょう。 無理を承知で400倍でも見て みましたが、輪郭のシャープさは保っていましたから、まず立派なものです。

この望遠鏡の到着以来、あいにくあまり良い天候に恵まれませんが、 先日稀なシーイングの良い時に二重星のテストを行いました。 こと座のダブルε をまず見てみました。 40倍では勿論低倍率過ぎるので分離はしませんが、良く見ると それぞれの方向に星像が長くなっているのに気付きました。 80倍で確実に分離しま すが、150倍では分離した四つのそれぞれの星の周りに一本の干渉リングが取り巻いて くりくりとしたイメージとなります。 これはシーイングの良い時のみですが、 この鏡筒の優秀さも同時に物語っているのではないでしょうか。

次に南のさそり座にあるダブル・ダブルであるν星に向けてみました。  さそり座νは低倍率では大きく離れたニ星に分かれるだけですが、高倍率で それぞれ1.2秒離れた4.3等星と6.8等星の対と2.3秒に離れた6.4等星と7.8等星の 対に分かれます。 観測地の緯度が高いので赤緯マイナス20度付近での1.2秒の対 の分離は時に困難ですが、この日は良シーイングに恵まれ問題なく240倍で分離し ました。 ついでに近くのアンタレスも見ましたが240倍で2.6秒離れた青い6等星 の伴星を確認できました。

アンタレスとその伴星は角距離自体は分離に困難ではありませんが主星の 輝きの為に見にくい二重星の代表格です。 同様なものとしてはくちょう座δ があり、こちらの方は2.9等星の主星に6.3等星の伴星が2.2秒の角距離に位置し ます。 この日のテストではδは240倍であっけなく分離しました。

等光の対は分解能ぎりぎりまでのテストが行えますがそれには大変良好な シーイングが要求されます。 この日のテストではちょっと西に周ったうしかい 座ζと天頂近い、はくちょう座λを選びました。 うしかい座ζは青い4.5等星の 等光の対で角距離は0.9秒です。(この星は1999年版の天文年鑑の連星のリストに 15cmのテスト星として記載があるものの角距離が間違って記載されており1.81秒と なっております。 もし等光の対で1.81秒なら7cmでも分離出来る筈で非常に矛盾 しています。〈天文年鑑の最新版は入手していませんが、既に訂正されているかも 知れません〉0.9秒という値は私の信頼し、かつ知り合いである米国の天文家 James Mullaney氏の著書 Celestial Harvestに従っています)

結果は240倍できりっとした長めの卵形に見え、やはり一本の干渉リングに取 り囲まれたイメージでした。 卵形に見えるのでは分離した事にはならないかも知 れませんが、実際には分離に通常400倍位必要なので、きりっとしたイメージの卵形 で大いに満足しなければならないと思いました。

はくちょう座λの方は更に青い対で角距離0.89秒、4.8等と6.1等の対です。  天頂近いのにシーイングが局所的に悪いのか(この場所では良く経験します、 恐らくすぐ背後にある建物の影響かもしれません)、あまりきりっとしたイメージ でなく、この日は卵形にも見えませんでした。 再度挑戦する積りですが、マウンテ ィングがフリーストップの経緯台ですので400倍を越えるような高倍率は若干無理があ って、実用的には250倍位が限度かも知れません。

ちなみに松本氏の友人の方がこのシュワルツ15cm鏡筒を赤道儀に乗せたものを お持ちで、先日このはくちょう座λを3日連続で分離に成功したとの情報を聞きました。  恒星に関しては色収差の影響は殆ど感じませんがべガのような輝度の高い青い星の 場合に限って紫色がバックに多少出るようです。 でもそれは決して感じの悪いもの でなく、先のMullaney氏によると、クラーク等の往年の大屈折鏡でも同じで、紫が ほんのりさす純粋な青い輝きは返って忘れられない一種美しいイメージに感じるとの ことです。

また理由は定かではありませんが、しっかり両眼を開けて見る大型の 双眼式では今まで見落としていた天体にあらためて気付くようです。 そのホンの 一例を挙げると、こと座βの連星系:明るいβの傍に青い4等星の伴星があり更に小さ な9等星のピンポイントの伴星が3個取り囲んでいます。

こと座δの星団:δのオレンジ色とそれを取り囲む星団の星ぼしとのコントラスト が美しい。 こと座M57環状星雲の北に暗めですが、アルビレオそっくりの二重星が あります。 これはOΣ525という重星で6等のオレンジ色の主星と7.5等の青い伴星で ミニ・アルビレオとでも呼びたいような風情です。 へびつかい座の散開星団NGC6633 の中にまるで別の星団が重なっているような部分があり、暗く小さなピンポイントの 星ぼしが明るめの二つの星の周りに集まっているのが珍しい眺めです。

これらは、今回実際の観望で気付いたホンの一例ですが、この双眼望遠鏡で 見る天体は既にこれまで何十回と見ているものであっても全く新たな感動を与 えてくれます。

これから季節の移り変わりと共に見えてくる新たな天体を見ることがとて も楽しみです。 もちろん木星や土星や金星も含めて…。 私は先の20cm反射赤 道儀以外にも複数の望遠鏡を所有していますが、恐らく今後もこの15cm双眼望遠鏡 が一番出番の多い望遠鏡となるのは確実だと思います。

それから当地も観望中の結露には悩まされますが、去年からカナダの Kendrick Dew Remover Systemという結露除去のヒーターを使用する様になって から、全く悩み知らずになりました。 ベルクロテープ付きで、装着・取り外し が秒速の手軽さ、各鏡筒サイズ別に細かくモデルが設定されており、大変便利 です。 この双眼望遠鏡にも対物レンズ用の6インチモデル2本、9X50ファインダ ー用の2インチモデル1本、それとRigelクイック・ファインダー用1本を使用して います。結露防止の効果は抜群で、一晩中でも安心して観望を続けることが出来ます。

天体と共に私は昼間の空を眺めるのが好きです。 この望遠鏡で昼間見る時は夜と違って南に面した自宅のパティオの硝子窓 を通して見る限られた空ですが…。 南にはJFK、ラガーディア、ニューアークの所謂ニューヨーク三大空港が数十マイル 彼方にあり、発着する飛行機がとても多いのと、悠々と大空を舞う鷲や渡りの為、 V字の編隊で行き過ぎるカナディアン・グースの群れなど見る物には事欠きません。

以前からTele Vue のProntoという7cmの小型望遠鏡にEMSを付けて見ていま したが、15cm双眼で見る迫力には驚かされます。 この昼間の空の観望は全く 何が見えるか、予期せぬ楽しみがあります。

8倍のファインダーでホンのごま粒のような黒点を見つけ、15cm双眼で見 て見ると糸の切れた風船で、倍率を高めてその表面にバットマンのマークを発見 した事もありました。 渡り鳥のカナディアン・グースの群れを見るのは楽しく、 けなげな羽ばたきに思わず頑張れ!と声を掛けたくなる思いです。 雲の形や 夕焼けの色も美しいし、私のような大空を友として生きる(このコピーは元名 古屋科学館の山田卓氏のオリジナルですが、本当にこの言葉に共感を覚えます) 者にとってこの松本式15cm双眼望遠鏡は生涯の友です。 このような既存のメー カーが手掛けないユニークな製品を次々と世に送り出す、松本氏の今後の活躍に ますます期待したいと思います。

15cmF8-BINO follow up report / その後

昨日の夜は、貴重な晴れ間で12時まではお月さんも居ないので、 のっぽ君を庭に出して、火星とM13を見ました。 XL14を購入してから、86倍で観望する機会がなかったので、どうし ても見たかったのです。

火星は、いつのまにか視直径が随分大きくなっていますね。86倍で も表面の模様が結構見えるもんです。おそらく、大シュルティスとお もわれる黒い半島状の模様がはっきり見えました。
どの模様か、確認するには「火星くるくる」ソフトをダウンロードしな いとね。

そして、どうしても見たかったM13ですが、ちょうど天頂に位置して、 なかなか導入できません。
のっぽ君の架台の回りをぐるぐる回りながら、このへんだろうと向け るのですが、86倍・視野0.75°ではむずかしいですね。
仕方ないと、Sナビゲーターを接続して垂直を出してからアルタイル とアークトゥルスでアライメントしました。 そして、M13を導入すると、一発で視野のすみに引っかかりました。

いやぁ、素晴らしいながめです。中心までびっちりと星が詰まって、 明滅するようにゆらいでいます。光害のせいでバックグラウンドが 明るいですが、自宅の庭でこんなにすばらしいM13を見ることができ るなんて、5cmを覗いて8cmに憧れていた中学生の頃とくらべると まるで夢のようです。(ノーフィルター)

30分以上も、じべた(地面のこと)に座って眺めていました。 経緯台で天頂を見ていると、日周運動を追尾する動きが面白いで すね。最初は北東側から見ていたのが、だんだん、北へ西へと回っ ていきました。きっと、マウナケアのすばるもそうなんだろうナ。 おもしろいですね。(2001年6月13日)

Yuzo Yamamoto

Comment by Matsumoto / 管理者のコメント

Yamamotoさんは、この15cm双眼望遠鏡を入手されて以来、”のっぽ君通信” (”のっぽ君”は15cm双眼の愛称)として頻繁にレポートを下さっています。
Yamamotoさんは、機械設計者としてのセンスと、持ち前のcraftsmanship で、のっぽ君を美しくカスタマイズしておられます。
右の写真はその一例です。
また、観望会では、見に来られる方のために”のっぽ君紹介カード”(中央の写真) を作成してくださいました。