SCHWARZ150S-BINO Reform / SCHWARZ150S-BINOの改修とドームで使用しての印象

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シュバルツ150S-BINO(第四世代型)の改修とドームで使用しての印象

シュバルツ150S-BINOも約5年使用したことになります。 この間に松本さんとのmailのやり取りやHPを拝見して、EMS-BINOが 大きく進歩しているのが判りましたので、今回下記4点の改修を実施しました。

(1)XYチルト機構の原点復帰調整と原点シール貼り付け。(写真1)
(2)HF経緯台の耳軸真鍮化
(3)耳軸ブランケットへのスペーサ(15mm)挿入によるバランス改善
(写真2 真鍮耳軸とスペーサ[パイプ状のもの])
(4)カウンターバランスウエイトの追加

尚、今回は見送りましたが
「EMSの銀ミラー化」「接眼部のクレイフォード化」「HFスライド機構の改良」についても時期を見て実施しようと考えています。

 またシュバルツ150SクラスのEMS-BINOをドームで運用している方は少ないと思いますので、今回の改修点と合わせてドームでの運用経験についてもレポートします。

【1.今回の改修結果】

(1)XYチルト機構の修正と原点シール貼り付け
EMSの特徴の一つにユーザーサイドでの調整余地が大きいことが上げられます。 また松本さんとしてもユーザーの調整を推奨しているとの事です。 (調整することでユーザーのEMSへの理解が深まることを期待しているとのこと)
但しXYチルト機構が原点にある状態で調整を始めないと迷宮に入りかねません。
この意味でこの「原点シール」は非常に重要・有効なものです。

 もちろんレーザーコリメータ等を使って原点を出すことも可能ですが、 まずレーザーコリメータ自体の光軸を正確に出すなど入念な事前準備が必要です、 (松本さんによると旋盤にレーザーコリメータを咥えて回転させるとレーザー光が円を描くような製品も多いようです)

 EMSの旧モデルには原点シールがありませんが、
ぜひEMSの調整を兼ねて原点シールの貼り付けを行うことをお勧めします。

(2)耳軸ブランケット延長・バランスウエイト追加・耳軸真鍮化の効果

・改装前は鏡筒を水平にした状態で前後方法のバランスを取っていても 天頂方向に向けると、上向き方向の力が働き(アイピース側が下がる力が働く)上下クランプをきつく締める必要がありました。(写真3,4. before)
・改修後は上下動がフリーストップになり操作性が向上しました。 写真の状態でクランプフリーでバランスしています。(写真5.after)

・更に使用アイピースの重量差 (イーソス17mmは1個725g、Or7mmは変換アダプター込み1個170g)を  キャンセルするためにバランスウエイト(約540g)を追加しました。 これで簡単にアイピース交換に伴うバランス変動に対応できるようになりました。 写真ではウエイトを前下方に出していますが、鏡筒を前寄りに固定してウエイトを 後方に出すこともできます。配置は使いながら考えていきます。
・HF経緯台の耳軸を真鍮に変更したことで高倍率時のスムーズさが向上しました。

【2.ドームでの運用】

(1)自宅屋上に2.5mドーム(ニッシンドーム製)を設置しています。 独立基礎は無く、建物の鉄骨を通常の約2倍使用し、特に梁を強化して防振対策しています。 観測室は防湿庫などの備品を置くため約50cm東西方向に延長してあります。

(2)夏場は観測室内・望遠鏡とも高温になりますが、南北2箇所のドアで 通風を促しています。(写真6) これにより短時間で観測室内の排熱、望遠鏡の冷却ができます。

(3)ドーム設置時に換気扇を付けましたが、排熱・通風効果が殆ど無く、 逆に雨が吹き込むなどのマイナス面が目立ちます。 また屋外フードにアシナガ蜂が巣を作るなど、問題を起こしてくれます。

(4)ドーム内は住居内とは異なり、温度・湿度の変化がかなり激しいです。 アイピース、フィルター類はドーム内に設置した防湿庫に保管していますが、 望遠鏡本体はEMSも含めて、準屋外設置のような状態です。 このため架台の一部に錆が浮いたりしています。これは

・観測室の気密性が低いこと
・海から1.5km程度しか離れていないため潮風が来ること
・観望時の夜露はドームでかなり防げるが、100%完全ではないことが原因のようです。
・現在、横浜のY.K.さんのレポートを参考に連続運転できる除湿機の導入を検討中です。

(5)ドーム内の照明が当初は照度調整できる赤色灯だけで暗かったため、 機材の汚れに気づきにくいことがありました。 現在はメンテナンス用の蛍光灯を追加設置しています。

(6)ピラーはNIKONの10cm屈折用の部品などを使用した特注品で

・天頂観望時はあぐらを組んで床に座る。
・中高度(60度位)は座面の低い椅子に座る。(約20cm)
・低高度(45度以下)は座面の高さを変えられる椅子に座る。
ようにして眼の高さが合うようにしています。 これで観望姿勢を安定させる事ができます。 楽な姿勢で観望できるのもEMS-BONOのメリットです。

(7)望遠鏡はピラーに付けたキャスターで簡単に移動できます。 常用倍率が100倍以下なので振動はほぼ気になりません。

(8)望遠鏡を観測室の端に移動し、アウトドア用のリクライニングシートを置いて 眼視や双眼鏡で、のんびり星を見ることもできます。 これはなかなか気分の良いものです。

(9)ドームの中に座ると、街灯などの直接光をほぼ完全に遮断できるので瞳孔が開き、暗い天体を見やすくなります。 標高で100m程度上昇したのと同程度の効果はあるように感じます。

【5年間使用しての印象・メンテなど】

(1)シュバルツ150S-EMS-BINOはBINOとしては比較的大型機になるでしょうが ドーム設置であれば非常に気軽に使えます。 反射系(μ250等)と比較すると外気順応時間が大幅に短いのも良い点です。

(2)EMSの保護フィルターは光学性能への影響が感じられないので 常時取り付けたままです。 このためミラーの状態は5年経過した今でも問題ありません。 (保護フィルターは若干汚れるので定期的にクリーニングします)

(3)光害カット、UHC、O3、Hβ等のフィルターは EMSの48mm保護フィルターを外して替わりに取り付けるのが松本さん推奨との事です。アイピース側に付けると保護フィルターと干渉する場合があります。

フィルターは同じものを左右で使用するのが原則ですが 「片側にIDAS LPS-P2、反対側にUHC or O3」 「片側にUHC、反対側にO3」 で使う場合もあります。

M42のような明るい対象では左右で星雲の形状が違って見える事がありますが 惑星状星雲などでは割りと良い感じで見ることができます。 微光星を残しながら、星雲をコントラスト良く見ることができるのは BINOならではでしょう。

また両眼にIDAS LPS-P2とUHCを2枚重ねることもあります。 光害カットをあと一押しできる感じで北アメリカ星雲などが見やすく感じられます。

(4)焦点距離やF値などが異なり、直接比較は難しいですが、 全体としてEMS-BINOは2倍の口径の単眼望遠鏡と対抗できる性能を感じます。 Ninja320も使用していますが、どちらが良いかは決められない印象です。 (対象天体によって評価が変わります)

(5)EMS-BINOの操作で注意する点としては XYチルト機構を無理に廻し過ぎないようにすることでしょう。 逆に(第四世代型の場合)
 どうしても左右鏡筒のスケアリング(方向調整)が必要と思われる場合は
「右側鏡筒バンドの固定ネジを緩めて左右方向のスケアリング調整する」
「右側鏡筒バンドの下に紙を挟んで上下方向のスケアリング調整する」こともできます。 この際「絶対にXYチルト機構を触らない」のがポイントです。 (但しこれは通常はユーザが行う必要の無い作業です。)
 どちらにしても作業する前には松本さんと相談して、症状(状態)を確認し、 少し頭を冷やしてから取り掛かる事をお薦めします。 EMS-BINOは一品製作物なので部品・構造が少しずつ異なります。 事前に相談する事で、間違った手順での作業を防ぐ事が出来ます。 手順を間違うと(触ってはいけないネジに触れるなど)復旧が大変になります。

 私は上下調整を左鏡筒でやってしまい苦労しました。 また紙(薄いコート紙)を挟む時は前後どちらかのバンド下だけにします。 両方に同じ厚さを挟んだら鏡筒の上下方向は変わりません。

繰り返しになりますが原点復帰シールは非常に有効ですので、旧製品利用の方は取り付けをぜひ依頼された方が良いと思います。 また私が行っている調整方法については後日レポートしようと思います。

(6)調整方法をいろいろ書きましたが通常使用時には 「原点シールを基準にXYチルトを原点に戻す」 「XYチルトを90度以内で回転させて、像を一致させる」 だけで難しいことは何もありません。

【最後に】

 一昨年、昨年と数回に渡る手術のあと、自力で立ち上がることもできない状態で数ヶ月を病院のベットで過ごしました。気になったのは、家族のことと、もう二度と星を見れないかもしれない、ということでした。

 幸い自力で動き、仕事に就け、短距離なら遠征にも出かけられるところまで回復しました。 この折角のチャンスを活かす相棒としてシュバルツ150S-BINOとプロント-BINO、更に現在製作依頼中のBLANCA130EDT-BINOを活用したいと思っています。

加藤 仁
2010年6月20日

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

はじめに

 加藤さんより、ご体調が必ずしも万全ではないにもかかわらず、BINOの調整にまで踏み込んだ、非常に内容の濃いリポートをいただきました。 当時の製品は現行の物と比べると、未熟な点も多く、さらにマニュアルも今以上に完備していなかったため、光学的知識が豊富だった加藤さん故に、逆に大変苦労されて一つの境地に 達されたものと察します。 

 まず、「シュバルツ150S-BINO(第四世代型)」について、ピンと来ない方も多いと思いますので、簡単にご説明します。 2000年以前に、口径15cmF8の中国製のアクロマート鏡筒が、当時、十万円を切るという破格の値段で発売されました。 それは、アマチュアに手が届く屈折鏡筒の口径の上限を一挙に引き上げるという、特別な事件でした。 2001年に 続けて発売されたF5タイプも十分な低倍性能を示し、その後は途中で供給が中断した期間はあったり、 取り扱い業者が変わったりはしましたが、DEEP-SKY用のリーズナブルなBINOの素材鏡筒として、現在でもその存在意義を失っていません。

 SCHWARZ150S-BINOの初代仕様は、純正鏡筒のフォーカサーやフランジを加工して、なんとかぎりぎりバックフォーカスを 確保したモデルでした。

 目幅調整は第1~4世代仕様を通して、左の鏡筒を、鏡筒バンドの下に前後1対配置したリニアブッシュ(リニアベアリング)による、同じ自由スライド(&クランプ)方式を採用していました。(←この方式は数年前に中止し、 現在のスライド台座は、全てベアリングを使用した微動送り機構に移行しており、目下新型を設計中です。)

 製作者自身、SCHWARZ-BINOは、その後の目まぐるしい仕様変更のために、各世代仕様の逐一までは 記憶してませんが、簡単にご説明しますと、第1~第4世代仕様に至る変遷は、フォーカサーの改善とバックフォーカスの追加確保に尽きる、と言うことが出来ると思います。 第2もしくは第3仕様辺りから、純正のフォーカサーを外して、 少し径の太いフォーカサーと交換するようになり、第4世代仕様では、初めて、独自のフォーカサーを開発し、 フォーカサーのガタに起因するイメージシフトをほぼ完璧に排除できたのでした。また、これが初めて65φバレルを採用した機種でもありました。

 この鏡筒を使用したBINOの流れは、現在の15cmF5-BINOに至っているわけですが、強いて現行機種の「世代」を言いますと、 第6世代仕様で、鏡筒をメガネ型にしたバンドで結束固定して、左右の鏡筒を固定し、EMSの接続管を 伸縮式にして目幅調整をする方式に変更してから2世代目のモデルということになりますが、目下、第7世代仕様を開発中です。

 (SNOWさんのBINOが、同第5世代仕様の1号機でした。)

  それでは、以下より、本論に入ります

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(1)EMSのX-Y調整ノブの原点シール:
  これは、なぜ最初から付けていなかったか、と悔やまれますが、旧仕様のユーザーの方で、原点シール貼り付けを 希望される方は、EMSを左右ともお送りください。 光軸の再調整と原点シールの貼り付けをさせていただきます。 (無料、往復送料だけご負担ください。(送料着払いでご返送します。))

(2)真鍮耳軸:
  VIXEN純正のHF経緯台用CRADLEの耳軸は、アルミ合金の耳軸にナイロン?ブッシュを被せた仕様で、かなりの アンバランスでもフリクションを調整して望遠鏡を静止させられる構造になっていました。 数年前までこの方法を当方も 採用していたのですが、その後、バランスさえちゃんと合わせれば、真鍮耳軸があらゆる点で優ることが分かったため、現在は すべて真鍮耳軸に統一しています。(希望者の方には、1組¥6,300でご提供します。)

(3)耳軸ブラケットのスペーサー:
  第4世代仕様までの同BINOは、三脚使用を前提としていたことと、天頂オーバーまで鏡筒が向くことに こだわり過ぎていたため、耳軸を敢えて低め(鏡筒を水平にした時の低め、という意味;つまり、重心は高めになってしまう)に設定していたので、 天頂に向けた際のアンバランスはTRADE-OFFとして折り込み済みでした。 ただ、その後に、真鍮耳軸の採用と並行して、 フルストロークの完全バランスの重要性に気付いたため、その後はこの鏡筒天地方向のバランスに十分な配慮をしています。(最近は、耳軸を最低でも鏡筒中心、可能な限り、それより少し高い位置にセットするようにしています。)

(4)外付けのカウンターウェイトシステムは、我ながら傑作だと思っています。^^;   15cmF5鏡筒は極端に鏡筒長が短いため、写真ではシャフトが随分長く見えますが、実際には、リンク画像のように、 コンパクトな作りです。(希望者の方には、このウェイトシステムを¥9,800でご提供します。)

【1.今回の改修結果】のところで、”松本さんとしてもユーザーの調整を推奨している・・・”とお書きになった部分に つき、加藤さんの方から、読者の誤解を招かないか?とご心配くださいましたので、少し補足させていただきます。

 私が日頃から申し上げたいのは、EMS-BINOは、現状では市販の天体望遠鏡をそのまま使用しているので、剛体としての精度を保証する物ではありませんし、また実際、それを確保する必要もないのです。その辺のニュアンスは、むしろ初心者の方の方が伝わりやすく、マニアになるほど、なかなか理解してもらえない印象があります。

 観望会等で、初心者の方に望遠鏡を覗かせると、精密な光学器械を壊してはいけないと思うのか、合焦ノブを恐る恐る、極めてスローにしかよう動かさないので、ピントの山が全く掴めませんが、BINOの調整に難航する方のパターンも、それと全く同じに見えます。 まずは、どう見えるようにしたいのか、それに対して現状がどうなっているのかをしっかり把握し、後はどこをどう動かしたら像が移動するかを冷静に考えれば良いのです。

 そして、正解点を確実に決めるには、理想に対してアンダーとオーバーの領域をスムーズに素早く往復出来ることが 必須で、その傾向さえ掴めれば、全てが解決したのも同然なのです。 ですから、「初心者と合焦ノブの関係」から早く卒業 していただき、必要があれば気軽に鏡筒を振ったり、EMSのユニットの接続角を調整して見てください、という意味に於いて、加藤さんのコメントを支持したいと思います。 ただし、くどいようですが、その時にEMSのX-Y調整でそれ(初期調整)をやってはいけない、ということが鉄則なのです。
(X,Yノブの操作限度ですが、リポート本文では±90度以内と 書いておられますが、細かく申しますと、Yノブについては、±45度、Xノブは近距離の観察時を考慮して、+45度~-90度 の範囲で納めて欲しいと思います。 +は時計回り、-は反時計回りです。)

 調整に難航する方は、絶対に触ってはいけない部分をいじりまくり、しっかり調整して欲しい部分については、自分で勝手に タブー視して、よう触らない、という傾向があります。 具体的には、鏡筒を外そうが、EMSの接続を解除して像を数十度も 回転させようが、再現時の解は一つしかありませんので、簡単に復元可能なのです。 逆に一番回しやすい、X-Yノブの方が、 悪用の弊害が一番大きいのです。 例えば、ノブをどんどん緩めて行きますと、ノブは組み込みネジを兼ねているので、いずれは脱落しますし、逆に限度を越えて締め込むと、中心の支点のネジの先端をアルミ製のミラー台座に微妙に食い込ませる ことで、せっかくのノブの矢印が本来の原点位置からずれてしまいます。

 何だか冗長になった割に、かえって混乱を招くのでは?と心配になりますが、要するに、EMS-BINOは剛体としての精度の概念の 外にあり、機構上、理想位置が常に調整域に包含されているため、正しく使いさえすれば、観察者の眼位や観察距離に対して、常に理想的な光軸状態で使用できるということです。
(市販の双眼鏡は、光軸は常に固定されており、眼位の 個性や観察距離には全く対応していません。 フォーカシングに例えれば、まさに固定焦点ということです。 EMS-BINOはユーザーの技量次第で常に完璧な光軸状態がキープできるシステムなのです。)

【5年間使用しての印象・メンテなど】の(5)でコメントいただいた、 鏡筒の方向調整についてですが、これは、加藤さんもご指摘のように、ユーザーさんには通常は不要なメンテです。初期納品時に輸送中のアクシデントや、鏡筒バンドを開いて鏡筒を動かしてしまった場合等、不幸にして 鏡筒の方向が微妙に狂ってしまった場合の原点復帰方法としてご理解ください。このような 作業が日常的に必要だということではありません。

 20年以上に渡ってEMS-BINOを作って来た経験から、調整箇所を最小限にするのがベストであることを痛感しています。 初期のBINO(確か同BINOの第3世代仕様くらいまで)では、右の鏡筒の手前下に、丁度赤道儀の極軸の方向調整のような シンプルな調整機構を設けていたのですが、悪用^^;するユーザーの方が絶えないことと、その後の経験から、 現実の初期調整での鏡筒の横振りの必要範囲が実際には極めて狭く、通常の鏡筒バンドのベース固定用のボルトのバカ穴のガタ(わずか0.2㎜程度)で十分であることが実証され、それ以降は前記水平調整機構を廃止して、成果を収めています。(調整機構は、光軸ずれを生じる原因ともなり得る、調整機構が無ければ、大きく狂う原因も無い。)

 言い換えますと、第4世代仕様のような平置きタイプの鏡筒スライド方式では、左右の鏡筒は上下方向にはほとんど 光軸が狂う要素がありませんし、水平方向も最悪狂ったとしても、先述の固定ネジのガタの範囲を超えることはないのです。

 ですから、万一不幸にして同タイプのBINOの光軸が狂ってしまった場合は、右の鏡筒のバンドの下のボルト(前後の バンドそれぞれ)を緩めて、左右に少し振りながら、正しい位置で固定すれば復元可能なわけです。(正しい位置の見極めにはそれなりの技量は要りますが、一番重要なのは、そのメカが適性位置を挟んでアンダーからオーバーにまたがって調整可能であることなのです。) (製造現場では、このBINOの垂直方向の初期調整は、左鏡筒のバンドの下のスペーサーを、旋盤で薄紙を 剥がすように削って行っていました。
もしユーザーサイドで鏡筒の上下方向の調整が必要に なった場合は、旋盤等が使用できる方を除き、写真8のネジを緩めるのではなく、左鏡筒には触らずに、シムの 挿入も右鏡筒のバンド底に入れる方が作業は楽でしょう。(写真8のネジを緩めると、せっかく右の鏡筒で横調整したのがご破算になります。)

(←上下方向の調整機構が無いのが、上下には狂わない理由:以前に 某代理店さんが分解された際に、前後のスペーサーを取り違えて組み立てられ、重大な光軸ずれが 生じて困られた例がありました。^^;不用意な分解はNGです。)

 メガネ型バンド結束タイプ(鏡筒固定方式)では、さらに簡単です。上記鏡筒スライド方式とは全く逆で、この方式では、 鏡筒は決して左右方向には狂わないので、万一上下方向に狂った場合は、鏡筒バンドのクランプネジを4個とも少しだけ緩め、強めの力でBINO全体を捻れば、鏡筒の平行を簡単に復元出来ます。 この調整は、ただやってみれば簡単に理解でき、 数秒で終わる作業なので、マスターすれば笑いが止まらないはずです。^^

 加藤さん、この度はまた、渾身のリポートをいただき、誠にありがとうございました。 EMS-BINOユーザーの方には、非常に良い参考 になったのではないでしょうか。 リフォーム直後の新鮮なご感想に感謝しますが、またリフレッシュされたBINOをじっくりと観察されてから、また追加の情報等ありましたら、よろしくお願いいたします。

最後に

 このリポートをお読みになって、「ああ、やっぱりEMS-BINOはこんなに面倒臭いものなのか?・・・」と思われた方は、 読まれたことを、ひとまずは全てお忘れください。 その代わりに、当方で完成したBINOをお受け取りになれば、理屈抜きで 何らの障害もなく使いこなされるでしょう。 そして一定期間BINOをご使用になった後で、またこのリポートを お読みになれば、「うん、うん、」とご納得いただけることを請合います。

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