FMS-UL(Flexible Mirror System)

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2台のFMSを使用した感想

岡山の「やまと」と申します。市立の天文台をボランティアで管理・運営をやっ ています。このたび、FMSを2台導入させていただきました。また、この2台 とも、松本さんにこちらの要望を聞いていただき、改良を加えていただいた物です。

写真4が、2台のFMSを望遠鏡に装着した所です。最初の予定は、同架してあ る20cmのマックと10cmの屈折に装着する予定でしたが、今は、40cm と10cm屈折に装着しています。

最初にFMSの導入を考えたのは、主力の40cmにはワンダーアイが取り付け てあるので、見学者に合わせて接眼部を動かすことができるのですが、同架して いる20cmマックと10cm屈折は接眼部を動かす事ができなくて、アイピー スをのぞくのが難しいことが多かったことからです。 同架してある2台を使用する時には階段を使うのですが、ストレートでのぞいて も、天頂ミラーを使っても、なかなか上手く目の位置に接眼部を合わせることが できませんでした。また、大人は天頂ミラーがないとのぞきにくい、子どもは天 頂ミラーがあると背が足りなくてのぞけない、という状態もおこっていました。 天頂ミラーを付けたり外したりすることは、見学者が待っている状態では現実的 ではありません。この問題を解決するためには、接眼部を動かす事ができるよう にするしかない、ということからFMSの導入を決め松本さんに相談にのっていた だきました。

まずは1台ということで、FMSを作成していただき、望遠鏡に装着したところ、 大型のアイピースを使用したときや、接眼部にカメラを接続したときには、可動 部を止めるネジが1本では少し強度不足に感じました。しっかりと締め込めば何 とかなるのですが、少しでも緩いと接眼部が動いてしまいます。そこで、止めネ ジを2本にするように改良していただきました。これで、大きなアイピースも安 心して取り付けることができるようになりました。 実際に使ってみると、接眼部が動かせるのは想像以上に便利です。個人で使うと きには、あれば便利、という程度と思いますが、次々に背の高さの違う人が見る 公開天文台では必需品という気がします。一般観望者のために、FMSが普及す ることを願っています。

1台目でFMSの効果が十分分かりましたので、ボランティアの皆さんと相談し たところ、是非もう1台ということになりました(金額的にも2台が限度でした が)。

2台目は、1台目を使ってみて、可動部がもっと丈夫になれば、少し大きなデジ 眼も安心して取り付けられるし、すり割りで締め付けるようにできればテンショ ンも自由に調整できるのでは、ということからすり割り式にできないか松本さんに 相談したところ、「新規の開発になり開発費もかかるがやってみましょう」とい うありがたいお返事をいただき、作成していただきました。

主力の40cmにはワンダーアイとプリズムを組み合わせて正立像で利用してい ましたので、FMSを使うつもりは無かったのですが、松本さんと話をしていると、 FMSは角度によって像が変わる、正立になるところもあるというような話を聞 かせていただき、それはそうか、まず40cmでも試して見ようということで、 2台目のFMSを40cmに装着してみました。そして、実際に使ってみると、 その便利さから取り外すことができなくなってしまいました。

写真1がFMSを装着した所です。背の高い人が見るときには写真2のようにな ります。同じ接眼部の状態で、背の低い人が見るときには、写真3のようになり、 FMSの回転のみで対応が可能です。身長の差で3~40cmぐらいの差ならば このFMSで対応可能のようです。また、写真3のような使い方ができるように なったので、今までは踏み台を利用する必要があった子ども達が、踏み台なしで も見えるようにもなりました。

このようにFMSは大変便利に使えることがわかり、今では必需品になっていま す。 また、副産物として、デジ眼を接続したときに自重でズームレンズが勝手に伸び たりすることがあったのですが、FMSによって接眼部を自由に動かせることか ら、接眼部を水平にすることにより、これを防止することができるようになりま した。個人で写真を撮られる方は、ズームレンズを接続して写真を撮ることはな いと思いますが、子ども達に、月を自由に拡大して自分の思うような写真を簡単 に撮ってもらうためにはズームレンズはどうしても必要でした。何か工夫をしな いとこのままではダメだな、と思っていた懸案をFMSで解決することができま した。

先にも書きましたが、FMS、公開天文台では積極的に採用して欲しいものです ね。望遠鏡に人間が合わせるのではなく、人間に望遠鏡が合わせるようになれば、 天文ももっと普及するのでは無いでしょうか。天文に多くの人が親しんでもらえ るようFMSの普及を願っています。        やまと

9月14日追記:

FMS、快適に使わせていただいています。しかし、使ってみると、もう少し・ ・・という部分が出てきました。

使用しているアイピースが重すぎて、1点での留めネジでは強度不足とは言わな いまでも、もう少し強力に留めたい、という欲求が出てきました。早速松本さんに

相談したところ、「他のパーツも含めて送ってください」とのありがたいお返事 をいただき、早速改良していただきました。

写真7のAのネジは元の留めネジです。これにBと(写真では裏側で見えませんが) Cの留めネジを追加していただきました。これで、なんの不安もなく使用するこ とができるようになりました。また、光路長の関係で延長筒を使用していますが、 この留めネジも①の1本留めから、②を追加していただき2本留めになり、十分 な強度を持たせることができました。不安無く安心して使えることは、精神衛生 上大変良いですね。

このように、要望に合わせて細かな改良をしていただけることは、何にもまして 助かります。ありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。

Comment by Matsumoto / 管理者のコメント

やまとさんがFMSを2台ご使用になった感想を投稿してくださいました。 単体のEMSの使用 リポートは、なぜか今までにほとんど集まらなかったので、大変嬉しいご投稿でした。

市販の天頂ミラー(1回反射)を屈折望遠鏡の接眼部に対空型にセットして地上風景を上から覗いて 見ますと、左右だけが逆になった直立像が見えます。このままアイピースを天頂ミラーごと反時計回りに90度倒して 横から覗きますと、像は同じ量だけ同方向に回転し、今度は天地だけが逆の裏像となります。

FMSの仰角と像の向きの関係をご説明しましょう。 FMSも天頂ミラー同様側視も可能で、覗き方はほとんど 無限にあるので、ここでは、目標に体が正対して観察する場合に限定します。

まず、仰角0度(直視)では、お察しの通り、望遠鏡の像の向きをそのまま見せてくれます。 つまり、 使用する望遠鏡の像が元々正立像なら正立像、倒立像であれば倒立像がそのまま観察されます。

EMSの構成ユニットが(双眼望遠鏡用で考えた時の)右目勝手の接続の場合、仰角を0度→90度に 移行させて行きますと、倒立像は反時計回りに180度回転します。 ただし、これは単純に2倍角で 回転するのではなく、仰角設定と像の向きの関係は線形ではありません。

EMSの仰角は90度を越えて最大120度までセッティング出来ますが、この間の像の回転量をご説明すれば、先述のことが理解していただけるでしょう。 何と、(右目勝手で)仰角90度→仰角120度(写真1)までのわずか30度の 仰角変化の間に、像は先ほどと同じ方向(反時計回り)に180度回転するのです。
(念のためにご説明しますが、FMSは自由に左右勝手を往復できる機構なので、 最初から右目勝手仕様とか、左目勝手仕様という区別はありません。(9/1追記))

もう一度整理しますと、
* 仰角:  0度 →   90度   →120度 の間に;
 像:  倒立像 →  正立像 → 倒立像  と、同方向に連続して回転するわけです。 左目勝手の接続では、回転方向がこれと鏡 対称になります。(この特徴がEMS-BINOの像回転の調整に功を奏すのです。)

(*注: 上の『仰角』とは、EMSの最終的な折り曲げ角度のことです。観察姿勢のことではありません。 また、上記例は、望遠鏡自体が倒立像の場合です。)

このことが示唆することの重大性は、今まで折に触れてご指摘して来た通りです。 (使用する望遠鏡の正立、倒立に関係なく利用価値があるのもその効果の一つです。)

EMSは元々、単体の対空視手段として開発しました。 しかし、大方のマニアや専門家の長年の固定観念( 2回反射は像劣化をもたらすはず・・^^;)を払拭するのはそう簡単ではないようで、単体のEMSの存在意義や真価が 十分に理解、認知されないまま、先に双眼望遠鏡用の手段として有名になってしまった、というのが、製作者 当人の正直な歴史認識です。^^;
ただ、こうして、”やまと”さんのような方が極めてたまにでも現れてくださると、またEMSを作り続ける勇気を いただいた気がいたします。

9月14日追記:

やまとさんより、追加リポートをいただきました。

FMSの場合は、EMSユニットの回転部の接続の他に、FMSと望遠鏡、FMSとアイピーススリーブ、 さらにスリーブとアイピースと、接続箇所が多いので、それぞれに配慮が必要になります。

通常より重い物を接続する場合には、それなりの対策が必要になるようです。  全ての接続箇所をすり割りクランプ式にすれば理想ですし、接続径を単純に太くするのも、大きな 接続強度のアップが期待できます。

今回いただいたリポートは、マイナーな追加加工の結果報告でしたが、私としましては、 やまとさんが2台のFMSを継続的に、しかも極めて有効に活用してくださっていることの意義を読み取っていただけたら幸いです。 やまとさんは、FMSを臨時的な対空手段ではなく、望遠鏡に常設 してご使用になっていますが、それは製作者の意図とも合致しています。

残念なことに今日に 至るまで、「天体望遠鏡は直視で見るのが基本であり、天頂ミラー等は天頂付近を見る時に 仕方なく使用する臨時手段である。」という固定観念が望遠鏡業界にもマニア界にも非常に 根強く浸透しています。

私が”汎用ミラーシステム”という名称で仰角可変タイプの EMSを初めて世に送り出してから20年が経過しているにもかかわらず、EMS全体に占める 仰角可変タイプの要望が未だに極めて少ないことには、改めて驚きを禁じ得ません。

一度権威を帯びてしまった固定観念を払拭するのは並大抵なことではありませんが、 少数ながらも、やまとさんのような理解者がおられる限り、諦めるわけには行きません。