親思う心にまさる親心

毎日地方紙の「おくやみ欄」を見るのは母の仕事だ。 小さな個人商店であっても、数千名の顧客リストの中には、数日おきに 該当者(もしくは家族)が見つかってしまうのだ。

「大変、Kさんの息子さんが亡くなってる!」

Kさん(男性78歳)は30年以上前、累進焦点レンズが市場に出始めて間もない頃の当店で第一号の累進レンズ のお客さんであり、以後ずっとひいきにしていただき、1週間前にもレンズの更新をさせていただいたばかりだった。

温厚で紳士的な人格も印象深く、また役所を定年後に始められた仏像等の木刻の出来映えは、アマの域をはるかに超えて心を動かされるものがあり、 その方より機会あるごとに頂いた作品は我が家の家宝になっている。

ただ、全てのお客さんの慶弔にお付き合いするのは、現実的に不可能であり、弔問はその時の微妙な判断に従うことになり、 お世話になっていながら失礼してしまうこともあるので、その点、この場でお断りをしておかないといけない。

ただ、今回のKさんの場合は、逆縁であることを含めて、何としても弔問に伺わないと気が済まないケースだった。

付き合いの長さから言って、両親が行くのが良いと思い、また道路地図によると、そう分かりにくい場所でもなさそうだったので、 敢えて両親に行かせることにした。

1時間弱で帰って来た母の顔が赤く、泣いた跡が伺えた。逆縁なので、とても涙無しには帰れないだろう。当然目的を果たして 帰って来たと思い、「どうだった?」と私が尋ねると、「行かれんかっただが。もうお父さんはダメだわ。」と母は泣きそうな顔をしている。   車を置いてから少し遅れて店に帰って来た父も、「わしゃあ、もうダメだ。」としょげている。

父母は「お前が行ってくれ。」と言ったが、私は敢えて父を助手席に乗せて行くことにした。役に立たなかった音声ナビゲーターの母は留守番だ。
道中、目印をなるべく父に確認させるようにして走った。父はほぼ理解しているようだが、建物や道路が新しくなっていて 混乱しているようだった。15分ほどで先方宅の近所まで来た。地図を見た段階で車の横付けは無理のようだったので、大きな道路の 脇に駐車し、徒歩で迷路っぽい住宅地の中を探したが、ほどなくKさん宅は見つかった。

万が一間違いだったら大変だと心配したが、玄関先に葬儀用の花が飾ってあったので良く分かった。    玄関の戸を開けると、大勢の親族の方が焼香の間で食事をしておられる様子が伺え、対応に出た女性に 「おじいちゃん」を呼んでいただいた。

Kさんは大変喜んでくださり、大勢の親族の方で満杯であるにもかかわらず、そこで焼香をさせていただくと、ぜひ 作品を見て欲しいとのことで、父と私はKさんに従って奥の部屋に案内された。   その部屋の床の間にはいずれ劣らぬ木刻の作品がびっしりと並んでいた。大体50cm程度以下の大きさの像だが、 恵比寿さん、弥勒菩薩、仁王像、観音像等、どれも緻密な彫りで、全体のバランスもすこぶる良かった。特に観音像の 衣のひだが、とても木という堅さを持った素材から成るとは信じ難い柔らかさと優美さを見せていて、舌を巻いた。

Kさんは、作品の解説をするばかりで、いつまで経っても亡くなられた息子さんの話をされなかった。 敢えてお尋ねすると、やはり癌だった。 20分ほどお話をして、私たちは失礼した。

Kさんは外に出て見送ってくださった。細い路地の曲がり角まで来た時、 振り返ったら、まるで戦場に息子を送り出す老母のように、まだ家の前に立って見送っておられ、私たちの帰り道の方向を腕で示してくださっていた。 立派な体躯のKさんだが、遠かったので、 木彫りの仏像くらいに小さく見えた。
小さくなるKさんの姿に反比して、最後まで涙を見せなかったKさんの哀しみのオーラが、この時一挙に吹き出した のを背中に感じた。

子供さんが目指す高校に合格し、喜んでいた矢先に様態が急変、老親と妻子を残して逝か れた息子さんの無念もその波に混ざっていた。

突然、「親思う心にまさる親心 今日のおとずれ何と聞くらむ」 という、吉田松陰が処刑される前に詠んだ句が 聞こえて来て、目が霞んだ。

日本人「十万分の一の肖像」

今日、知らない方から大きな封筒が届いた。確かに宛名、住所は私に間違いない。
表に、「写真在中」と「折り曲げ厳禁」 のスタンプが押してある。首をかしげながら開封してみた。
写真と添付文書を見て、直ちに事情を理解した。

添付文書

日本人「十万分の一の肖像」

1999年5月から始まった私の自分探しの旅も2001年2月に最後の1200人目の人を東京で無事に撮影して 終了となりました。 その後、膨大な量の現像、プリント作業を2002年の夏までかかって写真を仕上げました。 撮影を快く受けていただいたみなさんに出来上がったプリントをお送りすると言っていましたが、やっと 準備が整い発送する事になりました。

多分写真を写された事さえ覚えていない人もいるかと思いますが、私が感謝の気持ちを込めて焼いたプリントです、 どうぞご笑納ください。

この写真が写真集というまとまった形になるのか今の私には判りませんが、みなさんの お陰でとても素晴らしい経験ができました。

本当にありがとうございました。

河野公俊

東京都***********

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写真家の河野さんは、上記の通り、全国を単身で行脚して1200人のポートレートを撮影されました。 原画は階調が豊かで非常に美しい写真ですが、デジタルに忠実に再現できませんでした。

数年前の写真に感慨がこみ上げました。

現像、プリントにも相当の歳月を費やされましたね。1200人それぞれの人生、想い、また、その編集に携わった 河野さんの情熱に思いを馳せると、胸が苦しくさえなります。

河野さん、ご苦労様でした。 写真集が一日も早く発行できますように、お祈りしています。

斜位テスト

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斜位については、去年の1月2日(斜位矯正)にもコメントしておりますが、  今回はそのチェック法につきましてご説明します。

原理は極めて簡単で、上のチャート(拡大表示する)を赤、緑のフィルターメガネで見れば良いのです。  フィルターメガネは、お近くの文具店でカラーセロファンを購入して、ボール紙等で作ったメガネ枠に貼り付けて ください。右眼に赤、左眼に緑を貼りますが、それぞれの補色がほぼ消えて見えるまで枚数を重ねます。   これを装用して数メートル(部屋の都合で適当で良し)離れて見て、赤いクロスが緑のリングの中心に見えていたら合格です。 赤いクロスが左にずれていたら外斜位、右にずれていたら内斜位です。一般的傾向として、強度の近視の方は外斜位が多く、遠視の方は内 斜位が多いようです。   両眼をつむって開けた瞬間にずれていれば、斜位の傾向がありますが、直ぐに中心に戻り、日常も疲労感がないのであれば、悲観することは ありません。

手作りフィルターでは完璧な検査にならないかも分かりませんが、テストの原理は理解していただけると思います。   単純に言いますと、赤いクロスが中心からずれていたら、プリズムを使用してセンターに戻してあげれば良いのですが、水平方向、特に外向きの 斜位の場合は自己補正が介入しやすいので、簡単には行きません。

他人を調べるもっと簡単で大雑把なテストは、被検者に検者の右手の人差し指の爪を見させ、検者は左手で被検者の右眼を覆い、その 手を外します。
顕著な外斜位があると検者の手で覆われた眼は勝手に楽な眼位を取るので、検者が手を外した瞬間に眼球が外からくるっと回って目標に向くのが 観察できます。
斜位には、上下、内、外の他に、回転斜位もあり、それ用のチャートがありますが、回転斜位だけはプリズムでは補正できません。

双眼望遠鏡の光軸や眼位との兼ね合いについての議論が掲示板等で時々見られますが、解答は私のHPで繰り返し ご説明している通りです。機械的な誤差よりも眼の癖の方がはるかに大きく、機械的精度剛性だけを追求するのは無意味です。   大切なのは、眼の癖を介入させないテクニックを覚え、合理的な調整装置の使用法を理解することです。その方法につきましても、 私やBINO自作経験者のHPで詳しく説明していますが、そう難しいものではありません。

また、やや完璧な光軸を逸脱した双眼望遠鏡を覗くことの影響につきましても、心配無用であることは、眼の生理を含めた総合的な 理解から断言できます。眼への影響は、常時装用する掛けメガネの方がはるかに大きいですが、視線は常にメガネレンズの光軸を外れて動き回り、 特に左右で度数差がある場合(特に遠近両用)は、常に左右の眼が異なるプリズム量を通して物を見ることになりますが、それでもメガネと して成り立っている事は周知の通りです。仮に眼に悪影響をきたすほどの光軸ずれが双眼望遠鏡にあれば、とても長時間覗き続けられるものでは ありません。

EMSの種明かし

それでは、お約束通り、EMSの種明かしをさせていただきます。

まず、EMSの光路は、立方体を3つ直列に繋いで出来る正四角柱の1側面の一つの頂角 から同じ側面の対角に至る最短路です。 ただし、経路は他の3面を通るものとします。(1図: 赤い線が光路、青い線がそれぞれの反射点での反射面の法線)

EMSを手前から見た時、視線に垂直な平面に投影した第1反射光線(2つの反射点を結ぶ直線)の傾斜角を α とすると、tanα =1/√2(白銀比)ですので、規格 紙の対角線の傾きと同じです。このαは、x-y調整ノブの配置の位置角にも重要な意味を持ちます。

さらに、β=2α こそ、EMSのユニット間のねじれ角で、cosβ=1/3 というシンプルな数字で表されます。

α、β の2つの角度がEMSを決定する重要な要素ですが、これらの角度は、B5,A4等の規格紙から完璧に再現できます。

Folding Wheel Chair / 折り畳み式車椅子

(In English; 6/16, 2014)

Folding Wheel Chair

I would like to share with you an unforgettable experience in my work.

It was seven or eight years ago when I received a phone call from the first customer asking “Do you have an “EMS-L” in stock? I would like to buy it at your shop and take it home.” And he asked in the end, “Is your shop on the ground floor? And can I get into your shop in the wheel chair?”
I simply thought at that time he had a wound on his leg or something.

A few days later, a car stopped in front of my shop. I immediately thought it must be he, and went up to the side of the car to find I was right. Alas!! he drove all the way from Kobe in the specialized car with his hands only!

Then I guided his car to my parking space, and I will see what I am really amazed by. The guy stopped his car at the right place and then fully reclined his back rest by 180 degrees and leaned back to seize a folded wheel chair on the rear seat and lifted it to put on the ground just by the opened car door and quickly unfolded the wheel chair just like an umbrella. Then he bundled his legs by a towel and he took his legs just as if they were a luggage and into the wheel chair, and he finally got into the wheel chair all by himself.
What I did was only to take his FS102 Telescope in the case and accompanied him in the wheel chair to my shop.

In my shop, he set up the telescope on the tripod at the lower position with my assistance, and he attached the EMS-L to his telescope and watched the upright and vivid image of the nearby landscape for a while, and saying ” It is nice!!.”, he finally decided to buy it.
Having a pleasant conversations after that, and I can never forget his last word he murmured with a sigh ,”I was right to come!”

It was just after the Hanshin-Awaji Earthquake, and I thought he was the victim of it, but he wasn’t. He told me he had a car accident before the catastrophe and he was on the hard rehabilitation in the hospital when he met the earthquake. He was paralyzed from the chest down and I knew he had gone through unimaginable despair and painful rehabilitations.

Since then I take this story to my heart to keep up my motivation ever to proceed.

ずっと前からお話したいと思いながら、きっかけを逃して来た話をご紹介します。

もう7,8年前になりましょうか。 私の店に次のような電話が入りました。
「EMS-Lを店頭で確認して求めたいのですが、現物はありますか。」という問い合わせでした。
最後に、「店は1階にありますか。車椅子で入れますか。」と聞かれましたので、問題ない旨をお伝えしました。   その時は、脚に怪我でもされたのかな、と思っていました。

数日後、店の前に1台の車が止まりました。 直ぐにあの電話の方であると直感し、店を出て車の前に立つと、 やはりその方でした。 何と、その方は、神戸から特別仕様車をたった一人で、手だけで運転して見えたのでした。

そのまま私はその方を裏の駐車場に導きましたが、私が本当に驚いたのは、その後のことなのです。  その方は、車を止めると、自分のシートを180度倒し、反り返って後部座席に置いていた折り畳み式の車椅子を腕の力だけで持ち上げると、 運転席の直ぐ外にそれを組立て、あれよあれよと言う間に自分の両脚をタオルで縛り、まず両脚を荷物のごとく先に車椅子に納め、 完全に自力で車椅子に乗り込まれたのです。 私がした事と言えば、この方の自作のケースに納まったFS102鏡筒を持って店までお供をした だけでした。

店では、私も手伝って低いポジションにFS102鏡筒をセットし(確かカメラ三脚を使用した)、EMS-Lを装着され、ウィンドウ越しの景色で合焦や 見え味を確認され、大きくうなづいて購入を決断されました。 それからしばらく歓談して、帰り際に、「来てみて良かった。」と しみじみとため息のように言われた言葉が忘れられません。

阪神淡路大震災の直後でしたので、被災によるお怪我かと思い、お聞きしてみたら、その前に交通事故に遭われたのだそうで、 震災は、病院の中で闘病中だったとのことでした。胸から下が全て麻痺されたこと、想像を絶する体と心のリハビリがあったっことを知りました。

以来、何かと理由を付けて行動を保留し勝ちな、私自身への戒めとして、私はこの方の事を心に深く刻んでいるのです。

悪役俳優、Bolo

昨晩、久しぶりに”燃えよドラゴン(Bruce Lee 主演)”がテレビで放映されました。
悪役で登場したBoloの若い姿が懐かしく、彼との希有な出会いを思い出しました。

写真は、1989年に鳥取市で開催されたボディビルアジア選手権のお別れレセプションで撮影されたものです。   鳥取市への同選手権の誘致は、実質上の主催者兼、選手であった小山裕史(やすし)氏(アジアチャンピオン)の世界的な 知名度と並外れた努力と、ボランティアの協力で実現したものです。(同年開催の世界おもちゃ博覧会との関連で市の後援が得られたのも幸運でした)   当時氏のジムのメンバーであった私も通信文の英訳(当時はFAX)や通訳で協力しましたが、大阪空港で各国の選手団を出迎えた ことが、今でも鮮明に思い出されます。

数台のチャーターバスに各国の選手団を乗せるのですが、予算の関係で1国1台というわけには行かず、到着時間が大きく異なる 二国のチームを1台のバスで送るのに、大変な苦労をしました。 (韓国選手団の遅れでイラクの選手団を3時間待たせないといけないはめになった 話は別の機会にします。)

イラクと韓国のチームをやっとの思いでバスに乗せ、これに乗ってやっと一緒に鳥取に帰れると思いきや、 本部からの指令で、私はその後に到着する台湾とパキスタンの選手を乗せて帰ることになったのです。

台湾とパキスタンの選手団をバスに乗せると、緊張がやっとほぐれ、最後部で隣に座っていたパキスタンのヘビー級の選手とずっと歓談 して帰りました。 その時、台湾チームの中に私たちの会話の魚になった人が一人いたのです。

私    : 「Bruce Leeの”燃えよドラゴン”(Enter the Dragon)を見たことがあるかい?」
パキスタンの選手:「あるけど・・・?」
私    : 「あの人、あの悪役に似ていない?」
パキスタンの選手: 「本当だ、そっくりだ!」

といった具合で、互いの膝を叩き合って大いに笑ったのです。

その話題の主は、台湾のチームリーダーの一人でしたが、喋らず、笑わず、闘争的な体型に乗った牛のごとき首には太い金のネックレスが 巻いていました。 ただならぬ殺気を感じ、まさに”歩く凶器”の印象でした。^^;

それが本物だったことが分かったのは後日のことでした。 本物と分かってからも、しゃべらないし、名刺もくれないし、写真も撮られたくなさそうな雰囲気で、全く取り付く島もない 感じで、結局、香港の俳優だと思っていた彼がどうして台湾のチームリーダーだったのか等も聞けず終いでした。   上は、「絶対に笑わせて見せるから、見てなよ。」と同僚のボランティアスタッフに言って、撮らせた写真です。彼が最初にして最後に見せた笑顔です。    ともかく、地で行く華麗な悪役俳優でした。名刺はくれなかったけど、ボランティアスタッフ用の私の赤い法被の背中に、 大きな字で”BOLO”と書いてくれました。

ともかく、地で行く華麗な悪役俳優でした。

(写真を勝手に掲載したので、殺しに来るかな?)

Red- Green Test

RG rays in the eye
Red-Green chart

私たちの眼は、生体として、光学器械が真似の出来ない 生理的な機能を備えていることは事実ですが、純粋に光学的に評価しますと、 高級品ではないことを認めざるを得ません。

眼科での眼底写真の撮影等のために、散瞳剤(瞳を広げる薬)を点眼されて、しばらく苦労された経験がおありの 方も多いと思いますが、私たちの眼は、絞り開放では、まったく使い物にならないほどの甚大な 球面収差を持っています。

また、色収差も甚だしく、この性質を利用すると、眼の微妙なピントのずれを比較的客観的に 検知することが出来るのです。

上のレッドグリーン指標でご自身の眼を試してみてください。(まずは単眼で検査した方が分かりやすいでしょう。)黒い二重線が赤のバックと緑のバックで比べて、 どちらがはっきりと見えるでしょう。輝度やコントラストの差に幻惑されないように、線(隙間)のシャープネスだけに着目します。 両方とも大きくぼかしてしまうと、区別が出来なくなります。

また、特に初めての方は、ピントの前後をセットにして、レッドとグリーンのシャープネスが逆転する様子を見ないと分かりにくいかも知れません。 近視のメガネを掛けている方は、メガネを外し、遠点(はっきり見える一番遠い距離)付近でチャートに微妙に近付いたり離れたりして見ると レッドとグリーンの見え方(シャープネス)が逆転するのが分かるでしょう。

読書距離で見て、明らかにグリーンの方がはっきり見えたら、老視の赤信号^^;です。 (近視の方は、メガネを掛けて見てください。)
指標を拡大して3m以上離れて見た時に 赤い方がはっきり見えたら近視です。 また、読書距離で両方ともはっきり見える方でも、距離を近付けて行きますと、調節限界付近 からグリーンの方がレッドよりもはっきり見えるようになります。
また、3m以上離れて見てグリーンの方が極端にはっきり見える方は、近視のメガネの度が強すぎるか、遠視である可能性があります。
横線(縦線)だけがはっきり見えたら、乱視の疑いがあります。

波長の長いレッドは波長の短いグリーンよりも焦点距離が長いので、それぞれの結像位置が微妙に異なることが、この検査を 成り立たせている理由です。(上の図は、弱度近視の状態です。)

眼の屈折に関与する角膜、房水、水晶体、硝子体の組み合わせは、残念ながら色収差の軽減に対する(神様の^^;)配慮は全く見られません。 もっとも、明るい所では縮瞳(瞳が小さくなること)して極めて小口径であり、散瞳するのは暗い時で、眼の視力も落ち、色盲になっている(低照度下で活躍する旱状体視細胞は色盲) ので、アポは必要なしとのことなのでしょう。

マリオット氏盲点

双眼視の効果は議論する余地がないほどのものと思っていましたので、あまり具体的にコメントした 記憶がありません。 しかし、双眼視の効果が大分認識されるようになった昨今でも、やはり認識に温度差が あるようなので、今日は敢えてコメントしてみることにしました。

今回はその中でも、意外に知られていない単眼の視野についてご説明します。  上の写真は右眼で、見掛け視界60度のアイピースで見た地上風景です。視野中心から右に約 15度の所に浮かぶ黒い楕円は何でしょう? 黒い風船ではありません。あなたが右眼単眼でアイピースを覗いている時、 ほぼこの黒楕円の範囲は何も見えていないのです。

この盲点のことを”マリオット氏盲点”と言うのです。横幅で5度、縦幅で6度以上あるでしょう。これは、眼底の視神経乳頭 に当たる部分で、網膜の視細胞の一つを、眼底のお椀の表面に配置した光ファイバー1本の端面に例えると、全てのファイバーを束ねて お椀(眼球)の外に取り出す穴だと考えることが出来ます。

上の画像は、60度の視野を想定していますので、実際の角度をシミュレートするには ずっと大きな画像が必要で、例えば55cmくらい離れたモニター上では、盲点の領域(画像の黒楕円)は2インチのバレル径くらいの面積に相当することになります。   この盲点は、かなりの面積で、20mも離れれば、自動車が1台すっぽり入りそうな大きさです。

描画ソフトを使うと、自分の盲点を正確に描画することが出来ます。モニターの中央より少し左寄りに固視点になるような目印を 描き、左目を遮蔽し、右眼でその固視点から眼を離さないようにしながら、カーソルを少し揺らしながら固視点から右の方に 移動させて行きます。カーソルが消えた時点で直線を引き始め、カーソルが出始めたら引き終えます。その作業を異なる高さで 繰り返すと、自分の眼の盲点の領域が作図出来るわけです。(50cmも離れますと、盲点はモニターの右端に近い方に来るでしょう。)  説明のために黒い楕円で示しましたが、盲点というのはそこに視細胞そのものが無い所ですから、黒い点とも、白い点とも 認識されるわけではありません。上の画像では、アンテナの背景の空に溶け込んでいて、盲点は本人にはほとんど認識できません。  また、認識できないが故に”盲点”であるとも言えるのです。
潜在的に見る能力がある部分を遮蔽されて初めて黒点として認識 できる訳です。この事は、単なる理科的な興味だけではなく、私たちの認識の仕方の原点を鋭くえぐる、深い示唆に富んだ現象だと 思われませんか。 老人が、「わしゃ大分ボケてしまったわい。」と嘆いている間は惚けていず、「わしゃボケとらんわい!」と怒りだしたら ボケているのと似ていますね。^^;

左眼だと、ちょうど対称的な位置に盲点が来ます。両眼視で初めて盲点が無くなる訳ですね。うまく出来ているものです。

双眼視によるコンポジット効果で眼の解像度や視野の明るさが飛躍的に増すことを議論する以前の決定的な問題として、 この盲点があるのです。

T先生

小学校の3年生まで、担任は女の先生が1年ごとに交代した。
当時の私は、生意気だったのか、女の先生のお遊技的スタンスが嫌でならず、先生の指導と うまく噛み合わなかった。もっとも、私は授業を妨害するような生徒ではなかったが、正直に言って、幸せな低学年を送った記憶がない。

?年生の時に、リズムに合わせた足踏みがうまく出来ず、皆の前で悪い見本でやらされ、先生に、
「まるで芝居の馬の足だ。」
と言われ、級友の喝采?を浴びた。

先日、その女先生が数年ぶりに見えたら、数年前に肺癌で肺の大半を切除しておられ た。早期発見で転移が無かったとのことで、外観は非常にお元気そうだった。
帰られる時に、 私のテレビ番組(夢をつむぐ人々)のビデオを渡した。

それから10日ほど経った今日、先生が見終えたビデオテープにお祝いの祝儀袋を添えて返しに来てくださった。   両親にも、同じ小学校に世話になった、一昨年に他界した姉へのお供えにお悔やみの手紙を添付してくださった。
ビデオの件は、先生は大変喜び、心から賞賛してくれた。 以前から”たっちゃん”と呼んでくださり、お客さんになっていただいていたので、小学校時代のわだかまりは すでに消えていたが、(お祝いをいただいて言うのではないが^^;)、この度改めて先生のありがたさを知った。

先生についての想い出に、二つの強烈なシーンが浮かぶ。

一つは、先生の豊満な”オッパイ”だ。山に遠足に行った日、気の合った友達同士で昼食を取りながら、 先生の姿が見えないのに気付いた。 2,3人の級友と一緒に先生を捜していたら、山道から外れた人目につかない所で、 先生がしゃがんでオッパイを出していた。吸引器のような物で白いお乳を吸い出しておられ、皆、目が点になった。   先生は慌てることもなく、
「オッパイが張るけえ、こうして吸いださんといけんだが。恥ずかしいけえ、誰にも言ったらいけんで。」
と言いながら、その作業?を続け、私たちは最後までそれを見届けた。   先生は、その年、幼い子供さんを交通事故で亡くされていた。 その時は聞いたはずだと思うのだが、印象に残っていなかった。

もう一つ、鮮烈に浮かぶシーンは、ガキ大将の生徒が先生に突き飛ばされているところだ。背丈は小柄な先生に匹敵する悪ガキが、 「かかって来い!」と言う先生に泣き震いで突進するが、何度突進しても先生にはかなわない。

まさに体当たりの先生だった。 多くの親が自分の子供を育てるだけで顎を出している昨今だが、多くの人の子を育てて来た先生の偉大さを今さらながら 知らされた。

斜位矯正

新年、明けましておめでとうございます。 今年の年賀は年内に書くことが出来ず、いただいた分から返信させていただいています。  失礼の段、お許しください。(店頭のお客様用の2000枚は年内に発送したのですが・・・)

さて、今日は昨年末に斜位矯正をして非常に喜ばれた例をご紹介します。

斜位矯正

一般には、メガネは視力を補正する道具だと思われていますが、それだけではありません。
年末に相談に見えた中年男性は、数十年来複視(二重像)に悩まされ、これまでにあらゆる医療機関やメガネ店にかかったが 問題は解決せず、諦めており、運転免許はもとより、職業さえ制限を余儀なくされていました。

私が検眼してみますと、かなり深刻な斜位、というより斜視と言った方が良いほどの眼位の異常がありました。 しかも、ずれは上下方向と水平方向にまたがり、それらをベクトル的に合成して矯正に要したプリズムは片方で5pd(プリズムディオプトリー(1mにつき、 5cmのずれ))に達していました。
プリズム矯正の実用的限界に近い度数でしたが、この方の二重像は直ちに解消し、感激していただいた次第です。

この方の例は極端ですが、明確な自覚につながらない場合でも、斜位を持つ方は多く、未熟な検査の網をくぐっているはずです。 遠視も誤解されているものの代表で、これも「メガネは視力を補正するもの」という短絡的な認識からは到底理解が及ばないようです。 とくに若年者ほど遠視は自覚されにくく、本人が納得しない場合は、症状が顕在化するまで放っておくしかありません。  ただ、正視眼の人が3時間集中できる近業が2時間、あるいは1時間でダウンすることも起こりうる訳で、ある意味では人の一生をも左右しかねない 問題なのですが。
視機能の発達途上の幼児の強度の遠視を放置すると、調節と輻輳のアンバランスから斜視になり、複視を回避するために 脳が効き目でない方の眼の情報を遮断するので、その眼は廃用性の弱視になり、成長後にレンズでの矯正を試みても視力が補正できなくなるのです。
年末に見えた方は、矯正視力が左右共0.3くらいあり、完全に弱視化していなかったので、成長期後に発症したものと思われますが、  逆に片方の眼(効き目でない方)が弱視化していなかっただけに、そのつらさも相当なものだったと思われます。