メガネの度数

ホームページに眼やメガネのことを書いているせいか、ときどきご質問をいただく。

先日、覚えのない女性名で分厚い封筒が届き、密かな期待を持って開封したら、メガネで苦労して来られた経緯が詳細 に綴られてあった。

比較的最近、関東地方から、大手のメガネチェーン店で何度メガネを作っても満足できなかった男性が鳥取市の当店までメガネを 作りに見え、 「初めて満足がいくメガネが出来た。」と大変喜んでいただいた。 どうも、全国的に相当な割合で自分の メガネ(の度数)に満足しておられない方がおられるようだ。 しかも、よくお聞きしてみると、私が当然だと考えている 検査や検討を、メガネの度数を選定する段階で十分に受けておられないようだ。 これは、メガネ店だけでなく、 医療機関でも同様の傾向だった。

実は、この傾向は、当方がネットで情報を発信する前から、店頭でも体験していたことだ。  半世紀に渡って鳥取市で眼科医療に貢献されたO先生はすでに故人になられて久しいが、生前にO先生の眼の度 を測らせていただいていたのは私だ。現在、千葉県在住の奥さんは、メガネを作る度に私の所まで帰って来られる。 奥さんも「あらゆるメガネ店、医療機関を歩いたが、満足できなかった。」という意味の事を言われた。

現在は、他覚的な検査手段が発達しているので、器械による検査だけで、比較的正確な度数を把握することは、 素人でも出来る。 そこに巨大資本を持つ他業種の起業家が目を付け、医療器具であるはずのメガネを“雑貨品”として 量販展開をする。もともと他業者だから、医療品を扱うというプライドも自覚もない。 有名芸能人を使って集中豪雨的 に、主に価格に訴求したテレビ宣伝を流し、消費者を洗脳する。 芸能人は金になればどんなコマーシャルにも出るが、 門外の業界の価値を判断する能力を彼らに期待するのも酷なのかも知れない。

さきほど説明したように、概ね正確な眼の度数を測定するのは、そう難しくない。 問題は、正確なメガネと快適な メガネが同値ではないこと(大抵は相反する)にある。 正確?で不適切なメガネが氾濫して行く(しかも加速している ようだ)のは、隠れた社会問題だとさえ思える。メガネは両刃の剣。効果と副作用が拮抗する投薬や食物と同じ。いくら栄養があっても、 未調理のままでは腹を壊すので要注意だ。

もちろん、眼の検査の最初の仕事は正確な度数を把握することだ。前言を覆すようだが、実はこれも厳密にはそう 簡単な事ではない。後で被検者の装用感を打診しながら、さじ加減をする時の最初の基準なのだから、正確でないといけ ない。問題は、その後、快適さと求める矯正視力との妥協点を、被検者と同じ目線でじっくりと決定することが大切で、これ には、検者の熟練と根気を要するのである。